ちょいと、眼底出血してしまい、右目に墨汁たらしたような霞がかかった。病院に通い、レーザー治療。眼底の裏側にたまっている血の塊を焼くのだそうだ。最初はレーザーというので、ピーと一回やるのかと思ったら、連続攻撃で、ビンビンと光線が発射され、数百回。これがまた痛え。中には、途中で怒って帰ってしまう人もいるらしい。先生は、「とにかく耐えてもらうしかない」と言う。終わって、待合室でイテテテテとやってると看護婦さんが、「男性の人は痛いのに弱いみたいですね」と言う。女性は痛くないのか。痛いだけろうけど、耐えられる身体しているのか。

　これを3回やった。もう泣きそう。そして、昨日は、眼圧を抑えるために、眼球注射。麻酔がかかっているとはいえ、眼球に針が刺さる。やる前から、気持ちが萎えて、弱虫男の子になっちまう。

　とりあえず、一回目の治療は終了。様子をみながら、またレーザーやるみたいだ。眼底出血してから、なぜか、不思議と、いつもは連絡が来ないで、たまあに会うくらいの旧友3人から電話やメール。そしたら、そいつら3人とも、同じ病気の体験者。彼らはSNSとかやらないので、そんなこと知らなかった。一人は回復したが、一人はダメだった模様。一人は分からない。

　そいつらの話しの中で、夢の遊民社の野田秀樹さんや、写真家の荒木経惟さんも、同じ病気で片目失明していると知った。多い病気なんだな。

　ちょうど、「老後の教科書」という本を書いているので（笑）まあ、ネタにはなりそうだが、失明はやだなあ。いずれにしても、年をとるということは、余分な物質が体内に蓄積されていくことと、身体の部品が一個一個壊れていくことなのだな、と実感。

　それで、寝てばかりの生活をしばらくしていた。片目以外は健康体なのだが、まず片目で生活すると、やたらと夕方くらいになると疲れる。バランスがとれないので、身体に無理がかかっているのだろう。ベッドで、ゲームやったりやAmazonプライムで映画ばかり見ていると疲れてしまうので、YouTubeで、落語選んで音声だけで聞いていた。人情噺で検索。つくづく、「貧しいって、豊かなことだなあ」と思い知る落語文化。ただ、この感覚を利用しようとする、ふらちな連中が近代には続出しているので、呑気にもなれないが。

　でも、あの「貧しいけど豊か」というコンセプトを、近代を超えたところで、作り直したい。それが未来フェスの目指す方向なのだが。

　それと、「眼球注射」で気持ちが萎えた時に、やけに思い出したのが、自分が19歳の頃。1969年。その頃に見た、ルイス・ブニュエルの「アンダルシアの犬」。いきなり眼球をナイフで切るところから始まる。トラウマになった人もいるので、知らない人は見なくてもよいが、YouTubeで見ることも出来る。あの頃は、シュールレアリズムの実験映画をよく観た。大林宣彦さんが、トヨタのコマシャール映像やりながら、プライベートで実験映画を作っていて、新宿の蠍座で観た。松本俊夫の「映像の発見」という書籍があって、難しすぎて意味分からなかったが、そういうのをとりあえず読む。というのが僕らの仲間の共通認識だった（笑）。映像という言葉は、ここからはじまったのだが、後年、子ども調査研究所の高山英男さんとおしゃべりしていて、「映像の発見」の編集者は、高山さんで、書名も高山さんがつけたと聞いた時の衝撃はすごかった。高山さんは、カバゴンを発掘してベストセラーにした戦後の編集者でもあった。「現代っ子」という言葉も、高山さんの造語だ。あの頃の編集者は、決して表には出なかった。

　「眼球」という言葉で思い出すのは、もう一冊、10代の時に読んだジョルジュ・バタイユの「眼球譚」だな。これは世紀の変態小説で、三島由紀夫も澁澤龍彦もヤフーも、みんな影響を受けているはず。やはり、眼球を切るような描写があったな。この本で、僕が何より驚いたのは、バタイユという人間は、日常生活は、パリの図書館に勤務していた生真面目な公務員だったということだ。人の内面と外面は違うものであり、その差が極端なほど、内面も深い世界に到達するのだと思った。今は、内面と外面が一体化しているようなキャラが大事にされている感じがする。少なくても、10代のときは、このアンビバレントに引き裂かれたほうがよいと思う。

　アンビバレントというと、欅坂の二期生が続々と紹介されてきたね。21人の写真集が出て、あれが卒業アルバムだから、もう21人の欅坂46は終わり、次のステージがはじまっている。ついてこれないメンバーやファンは、離れるなら、ここしかないよ。僕の方は「どろかつ」の動きだけが気になるので、新しい欅坂46に期待します。どうなるか分からないのが欅坂46の魅力だったはずだからね。

　さて、眼をつぶっても、世界は、変わらない。やりたいこと、やるべきことが、続々と湧いてくるな。