「Kindle Unlimited」Amazonで書籍の読み放題がはじまるよ。●橘川幸夫の情報小料理屋 2016/07/03

「Amazon読み放題」8月開始は確実か

(1)書籍の読み放題の開始。

 Amazonの読み放題サービス「Kindle Unlimited」が、8月から日本でもサービス開始のようだ。インターネットの流れからすれば当然のことである。

 そもそもインターネットというのは、近代以後の生産性を高めることを目的とした産業社会の終焉と、その次の時代の模索をはじめるということである。近代のビジネスモデルや生産方式に固執している限り、大河の流れを無視して、中州で宴会をしていて取り残されたキャンパーのようなものになるだろう。

 近代とは、空白のマーケットに近代技術をもって大量の商品を流し込むことであった。そのようにしてあらゆる産業が発展した。大量生産・大量消費の時代である。しかし、それは、やがて「豊かな時代」を迎え、大量生産・大量宣伝・大量消費・大量破棄という、近代の矛盾に直面した。そこで、エコロジーやサスティナブルという考え方が発生し、リサイクルビジネスなどの新しい社会的仕組みが生まれた。

 近代が「奪う」(市場を奪う、顧客を奪う)時代だとしたら、近代以後のインターネット的な時代は、そうした権力装置を「はずす」運動になるだろう。

 大手タクシー会社は、顧客を獲得するために、大量の車両を顧客を乗せないままで都市を流していく。人材とエネルギーの膨大な無駄である。しかし、そのことによってでしか、突然タクシーが必要とする顧客を獲得することが出来ない。uberは、そうした社会的矛盾を、インターネットで解決しようとした、一つの回答である。uberが普及したら、「はずされる」のはタクシー会社であって、タクシー運転手は、自分でuberに登録すればよいわけで、困ることはない。これは時代の流れなのだから、政府は、uberの時代に即した、運転手の認定制度なり保険保証制度などを整備すべきである。

 出版社や書店も、タクシー会社と変わらない。返本率が膨大になっても、書店に大量を本を配本しつづけなければ、採算の取れる販売部数を確保できない。紙パルプや、配送エネルギーの膨大な無駄が生じている。

 これからは、ただ自分の業界の勝ち負けではなく、地球全体のコストを考えなければならない時代に入っているのである。

(2)電子書籍のライフスタイル

 90年代に電子書籍のトライアルが行われた時代に、僕は松下電器との付き合いがあって、松下の電子書籍「シグマブック」の開発の現場とも、よく話し合っていた。僕は、もともと出版の人間であり、電子書籍リーダーの操作性や可読性に、げんなりしていたので、「これは、やめた方がいいですよ」と飲み屋の雑談の中で言った。その時、松下のある人が、こんなことを言ったのだ。「電子書籍の本命は、教科書です。特に中国がこのまま高度成長を続けて、日本と同じレベルの義務教育が普及した時に、紙の教科書でやったら、地球の森林の1/3が失われる」と。なるほどと思った。そして、僕らが電子書籍の可読性に慣れないのは、僕らが小学校以来、紙の教科書で文字を読んできたからで、もし、電子教科書で勉強してきた子どもらが社会にあふれてきたら、おそらく紙の本は、とても読みにくいものに思えるだろう。

 すでに、こういう話がある。スマホやタブレットだけで、マンガを読んできた子が、紙のコミックスを読んだら「紙の本は、真ん中がゆがんじゃって、絵がちゃんと見れないよ」と言ったということだ。人間の習慣というのは、恐ろしい。

(3)これからの出版と、図書館の役割

 本というものは、本来、個人が生きていく中で発見した知見や技術を、時の流れを超えて後世に伝えていくものである。宗教家とか家元たちの作ってきた本が、本来の本だと思う。江戸時代にも木版印刷による大衆向けに販売された本もあったが、明治の近代化の中で、印刷技術が急速に発達して、大量複製が可能になり、大衆出版文化が生まれた。著作権というのも、そうした大量複製文化の中での利益配分として定着したものだろう。

 本というのは、歴史を超えていくタイムカプゼルとしての役割と、その時代に即した大衆コンテンツとしての役割があるのだろう。この二つの役割が、同じビジネス構造の中で成立してきたのが間違いだと思う。

 大衆的なコンテンツは、電子化によって大幅に製造費が削減されるわけだから、販売価格を下げるべきだし、公平な著作権システムを確立すべきだ。そのビジネスモデルの中には、uberと同じように、既存の出版社・取次・書店は、これまでの姿のままでは参加出来ないだろう。著者と編集者とデザイナーがいれば、タクシー会社のような出版社は不要になるだろう。

 また、本来の本は、大衆コンテンツとは全く別の考え方でコスト設計をしなければならないだろう。大量印刷・大量販売のビジネスモデルは不向きなので、図書館の新しい役割が登場してくると考えている。僕は、今、コンセプト・バンクの仲間である仁上幸治氏(図書館サービス計画研究所)と共同して、図書館サポートの体制を準備中であるが、僕のアイデアは、こうである。全国の図書館有志で、自分たちの図書館だけに置かれる本を、共同で作る。これは、図書館によるクラウドファンディングで実施する。Amazonには流通していないけど、社会的に必要であり、後世に届ける必要がある本は、図書館が共同して制作すればよい。そうすれば「図書館にしかない本」が増え、目的的な来館者が増える。

 すでに、一部の絵本などは、全国の図書館が一定部数を購入してくれているので、出版社の経営が安定しているという例もあるのだ。

 しかし、出版業界の不況はすさまじいものがあるが、特に学術出版は大変である。大学の先生も、それまでは定期的に専門領域の出版社が本を出してくれていたが、断られることが多くなっている。昔、東大の先生が、東大出版会に研究成果を出したいので本にしてくれ、と言ったところ、先生の本は売れないからダメですと断られて、なんのための大学出版会だ、と怒って、僕のところに相談に来たことがある。その先生は、別に印税が欲しくて本を出すのではない。自分の研究成果を後世に伝えるために出したいのだ。そういう本の企画の受け皿を作りたい。

 「Kindle Unlimited」も、いってみれば、大衆コンテンツとしての出版文化の「図書館」のようなものだ。毎月1000円ぐらい払えば入場出来る電子図書館だ。個別の出版企画ではない、出版業界そのものを見渡した構造企画が必要なのだ。

(4)思いついた。

 今回、書いたことは、昔から、何度も繰り返していることもある。そうか、ちょっと思いついたぞ。

 自分の本だけど、生涯1冊だけ出す。それを電子書籍にして、毎年、それに改稿を加えて、バージョンアップしていく。これいいな。早速、やろう(笑)

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