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ニュース0201●Amazon書籍買い取りへ

書籍買い切りへ 出版社と直接取引試行 売れ残り値下げも検討

 日本の出版業界は、委託・返本可の再販制度で流通が築かれ、定価販売が維持されていた。出版社が取次の口座を開設する時には、再販制度を守るという契約書を交わすことになる。

 この制度により、本の仕入れのメキキが出来ない人でも書店が開設出来た。昔は、どこの町にも小さな書店があり、おじちゃんおばちゃんが座っていた。取次が指定した本を並べ、売れ残ったら返品すれば、手数料が低くても損のない商いが出来た。だいたいは、家賃負担のない自宅の一角が店舗だった。この20年間で大きく減少した「小さな書店」の大半は、こういう書店だったのだろう。書店は、商店だったのである。

 やがて近代ビジネスで武装した大型書店が戦国時代さながら全国で覇権争いを行い、小さな書店は淘汰されていった。町の酒屋や乾物屋がコンビニに吸収されていったのと同じである。そして、インターネットが本格的に始まった。

 インターネット店舗は、店舗運営のための人件費と家賃などの固定費を不要にする。商品と決済機能と配送費だけで、あらゆる商品を流通させられる。通常の取次経由での書店販売の場合は、いろいろと取引条件は異なるが、だいたいの割合でいって、1冊の書籍に対して、書店が25%で取次が10%で出版社が65%ぐらいだろう。

 出版社の人間と話していると、取次は評判は悪いが、取次が何を担ってきたかというと、単なるマージン・ピンハネのシステムなどではなく、巨大な物流管理会社なのである。大きな倉庫と、無数のトラック部隊で多品種大量に発行させる書籍の流通を担ってきた。取次のマージンは10%程度であり、これは書籍が売れた場合にもらえる費用であり、売れないで返本されれば、取次の利益がないだけではなく、物流にかかる費用も自分で負担しなければならなくなる。そのため、運賃協力金や返品のペナルティの仕組みを続々と追加してきた。これが本が売れなくなってきた出版業界の人間が取次に対する不満としてあるのだと思う。

 そして、Amazonが「書店」としての威力を本格的に発揮している現在、「買い取り制度」を出版社に提案をし、取次外しをしようとしている。Amazonは、ここ数年、出版社との直取引を誘い続けているが、その意味は、単に取次の利益10%を吸収するということだけではないだろう。出版社の65%の利益分を、どこまで吸収出来るかが、Amazonの交渉の中身になるだろう。通常の商取引であれば、仕入れ値は30%ぐらいだろう。100円ショップのように仕入れ値が10%ぐらいの商品がないとやっていけない業界もある。

 出版社にしても、65%という数字は、返本リスクを含んでいる数字であり、買い取りということであれば、もっと圧縮出来る。返品のリスクはAmazonが引き受けるということだから、強気には出られないだろう。

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