雑誌の可能性について・情報小料理屋 2016/06/05

雑誌売り上げ 32年ぶりに書籍下回る

出版物の大手取り次ぎ会社の日販=日本出版販売は1日、昨年度の決算を発表し、雑誌の売り上げがおよそ32年ぶりに書籍を下回ったことが分かりました。(NHKニュース)

 書籍が全盛時代なのではなくて、出版業界そのものは縮小していて、雑誌の衰退が急速度だということだ。

 大手出版社には、雑誌部と書籍部があって、だいたい仲が悪い。雑誌部は最新の情報をいち早く世の中に伝えていくことが役割で、スクープというのは「これから大きな話題になる情報を、まだ世の中で知られていないうちに出す」ということだ。

 それに対して書籍というのは、今を生きる人が、次の時代へ伝え残すべきことを整理して、磨き上げて本の中に閉じ込めることである。雑誌が「今」という空間に広がっていくメディアなのに対して、書籍は「時」を越えて残されていくものである。フランツ・カフカは、生前は、ほとんど売れない作家だったが、死後、世界的な大ブームになり、今も読まれ続けている。

 書籍は一度、購入した本が、管理されないルートで再流通していく。僕らは雑誌は捨てることが出来るが、書籍はゴミ箱には入れにくい。そういう意識があるうちは、電子書籍の利便性とは別に、本は、時を超えていくタイムカプセルとして、残るべきものは残っていくだろう。

 雑誌はどちらかというと新聞に近く、書籍は映画に近い。雑誌と書籍は方法論が違うのだから、仲が悪いのも当たり前だ。しかし、最近は、雑誌のような書籍がはびこっているのは、どうしたものか。

 さて、雑誌にも実は二つの構造がある。一つは読者に必要な情報を素早く伝えていくという役割である。70年代に創刊された「ぴあ」という情報誌は、中央大学の映研の学生たちが、「映画の情報」が不足していると感じ、映画情報の専門雑誌を作って、一代を築いた。それは、来るべきインターネット時代を予感していて、網羅的情報を読者が自分で選択して使うというものであった。インターネット時代を先取りしていたからこそ流行り、本物のインターネットが登場したら、廃れた。

 多くの「情報を伝える雑誌」はインターネットにとって代わられた。これらの雑誌は、数十万部の発行部数で支えられていた。その部数が激減して、合わせて、雑誌広告の魅力や価値がなくなって、雑誌はビジネス的に成り立たなくなっている。

 ところが雑誌には、情報を伝える以外のもうひとつの構造がある。それが「3万部雑誌」と呼ばれている専門雑誌群である。こちらも最新情報が商品なのだが、それ以上に、同好の志であるコミュニティ形成力が大きな魅力である。1万部を割る部数でもしぶとく発行し続けている雑誌も少なくない。

 雑誌にコミュニティ形成力があることを見抜いた出版社は、生き延びることが出来る。ランニング愛好家の雑誌である「ランナーズ」は、「走る仲間のランニングポータル RUNNET」を作り、ネットを活用した、ランニング大会を主催する側へのサポートビジネスを展開している。

 また「ロッキングオン」は、インターネットの登場で部数と広告の減少の中で、「ロックフェス」を開催して、大きなビジネスに育てあげた。これも、ロック雑誌を発行して、多くのロックファンのコミュニティが自然と出来あがっていたからこそ、フェスへの大量動員が可能だったのだと思う。

 同好の志のコミュニティを成立させた専門雑誌は、ネットの力を借りてリアル・イベントという新しいビジネスモデルを作ることが出来るだろう。

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橘川幸夫

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