見出し画像

追悼・加藤秀俊先生

社会学者 加藤秀俊さん死去 93歳

 加藤秀俊先生が亡くなられた。60年代後半に、梅棹忠夫、小松左京、林雄二郎、川添登で「貝食う会」の集まりを行い、未来学研究会を作った。その後、林さんと加藤さんがヨーロッパでの未来学会のシンポジウムに参加し、「日本に未来学会はないのか」と問われて、なんの準備もなく「作る」と宣言して帰国。二人で日本の財界をかけまわって支援を取り、1967年に「日本未来学会」が誕生した。70年には、世界の未来学者を集めて「国際未来会議」を実現した。
 未来学会を作った最後の一人がお亡くなりになった。

 未来学会が主催した林雄二郎のお別れシンポジウムで加藤先生に講演をしていただいた。80代半ばだったと思うが、原発などのエネルギー問題を熱弁してくれた。加藤先生は「中間文化論」で有名だが、その時の講演で覚えているのは「昔は、南極のことは誰それに聞けばすべて分かる、火山のことは誰それに聞けばすべて分かる、という本物の研究者がいたが、いまは、平均化して薄っぺらな学者ばかりだ」と嘆いていたことだ。確かに、未来学会の創設メンバーの顔ぶれを見れば、誰もが、その道を懸命に追求したということが想像出来る。

 梅棹先生には、林さんの傘寿(80歳)の祝の場だったか、六本木で行われた会に、京都からお祝いに駆けつけてくれた。車椅子で、話すこともままならなかったが、未来学会創設のメンバーたちの関係の深さを感じた。

 加藤先生の本で我が家に残っているのは『「東京」の社会学』という本で、東京という町、都市という町の誕生から発展までの息遣いがよく分かる社会学の本だった。

 会ってお話出来る機会はなかったが、戦後社会を作り上げた一人が、亡くなっていく。彼らの思いを引き取って、次の社会を目指したい。

 謹んでご冥福をお祈りいたします。

ここから先は

0字

橘川幸夫の深呼吸学部の定期購読者の皆様へ こちらの購読者は、いつでも『イコール』の活動に参加出来ます。 参加したい方は、以下、イコール編集部までご連絡ください。 イコール編集部 <info@equal-mag.jp>

橘川幸夫の深呼吸学部

¥1,000 / 月 初月無料

橘川幸夫の活動報告、思考報告などを行います。 ★since 2016/04 2024年度から、こちらが『イコール』拡大編集部になります。…

参加型メディア開発一筋の橘川幸夫と未来について語り合いましょう。

『イコール』大人倶楽部 『イコール』を使って、新しい社会の仕組みやビジネスモデルを考えたい人の集まりです。『イコール』の刊行をご支援して…

橘川幸夫の無料・毎日配信メルマガやってます。https://note.com/metakit/n/n2678a57161c4