店主敬白
店主敬白
私は半世紀に渡って出版業界を生きてきました。出版という仕事の素晴らしい喜びを知りつつ、出版業界の旧態依然たるシステムや、そのシステムを「出版する側の意識」で改良することもなく、POSデータ主体の非人間的な物流ソリューションに進撃してしまった。
私が学生の時代、本屋さんは、子どもの世界では知り得ない多様な社会の姿や、見たこともない生き方をしている人の話が聞けるワンダーランドでした。出会いと発見の喜びがそこにはありました。しかし、80年代バブルが契機だと思うのですが、巨大な本屋さんは増えましたが、どこも同じ品揃えが大量に陳列されていて、まるでコンビニのような定番商品が並ぶだけの空間になりました。
それまで街で時間さえあれば書棚で、「見たこともないこと」を探そうと懸命になっていた意識が萎えてしまい、むしろ神保町の古書会館とか古本屋に、かつての「本との出会い」の情熱を向けるようになりました。
私にとって、どういう本を読むかは、どういう人と付き合うのかという選択であり、自分というのは、出会った人との関係性の中で育っていくものだと思っています。誰もが読んでる本を読んでいては、自分らしい自分は育てらません。
そういう意識の中でコロナ状況に突入し、コロナが開けるのと示しあわせたように、全国各地で「シェア図書館」「シェア書店」のムーブメントが開始されました。
日販・東販がデータマイニングで選書して一律に配本した本ではなく、多くの棚主さんが選眼した本が並んでいます。学生時代に感じた「えっ、こんなタイトルの本があるのか」「こんな変なことを考えている人がいるのか」という、書名だけで想像力が膨らむ体験を思い出しました。
こりゃあ、新しい時代になりそうだ、と直感的に思った私は、神保町の二十世紀書店に棚を借りました。しかし、この可能性は、自然発生的な動きだけでは、先行きが不安なので、いろいろ模索しながら、出版業界のこれからについて行動し、報告をしていきたいと思います。
私の不安と展開案。
個別の棚主が自分の在庫の本だけを並べても、やがて品切れになる
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持続的な供給を考えなければならない。
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新刊を買うか、ブックオフで瀬取りするかになる。
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私のように、出版業界が長い著者は、自著もあるし、編集した本も多数ある。出版社から絶版本などを引き取れば、著者たちが棚主になることが増えるだろう。
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出版社、特に専門書などの小出版社は、自前の棚を確保すればよい。絶版で断裁するよりも、ゾッキ本やバーゲン本を自前の棚で販売可能。
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著者ではない人が棚主になったら、ぜひ、この機会に、自分の本を作ることをおすすめする。製販一体で、自分で本を作って自分で売るというスタイルが生まれるはず。
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この流れが出来ると、いやあ、構想はどんどん膨らむね(笑)
関連サイト
深呼吸書店
*橘川の管理する棚と関連施設です。
橘川幸夫23年新刊「メディアが何をしたか? part2」対話
*まずは自分の最新刊を「シェア書店」で売ります。その本について、多くの人と対話をしていきます。
自分出版社共同組合
*橘川が主宰する深呼吸学部の塾生たちと始めた自分の本を出す人のネットワークです。共同して文学フリマに出店したりします。
第二次深呼吸学部の教室
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