電通の広告不正問題から見る、これからの広告(1)+(2)

 電通のネット広告の不正問題が露呈した。これまでもテレビのスポット広告で、広告料を取りながら流していなかったことなどがあったが、それは、まあ、しろくま広告社の出来事だったが、ネットの広告は、単なる「どんぶり勘定の体質」とは違う問題をはらんでいる。

 ネットの世界では業界関係者たちが、さっそく問題点の指摘をしている。

■3分でわかる電通の不正(不適切業務)とネット広告の闇について

■電通の不正請求は広告業界全体の問題

■ネット広告の幻想の終わり。

 広告は、これまで広告を出すことに意味があって、効果は結果であり、おまけであった。企業が数億かけて広告宣伝をしたとして、その商品が大ヒットすれば広告のおかげであり、売れなかったら商品の力がない、で済ませてきた。ちんどん屋からラジオ・テレビに至るまで、話題になることと商品の売上とは、必ずしも一致しなかった。にも関わらず企業が大量宣伝を続けてきてのは、ライバル企業が宣伝をするし、なによりも経済が成長している時期は、利益を出して税金にもっていかれるより、広告宣伝費を使って企業のブランド力をあげた方が得だと思ったからである。幸福な時代が長く続いた。

 そうした牧歌的な業界に、最初に風穴をあけたのは、通販業界である。通販ビジネスにおいて、広告は、具体的な営業行為である。広告を出して、どれだけレスポンスが返ってくるかということが重要なのであって、どれだけ広告を露出したかはまるで意味がない。

「CPA」(Cost Per Acquisition)と「ROAS」(Return On Advertising Spend)が重要な指標となった。発行部数が100万部であろうと、レスポンスが少なければ意味がないのであり、勝ち抜いてきた通販業界は、それまでのイメージ広告のクリエイティブを楽しんできた、業界を揺さぶった。

 そして、インターネットである。この数学的な構造で作られている世界は、情報の一本一本の流通と反応を、かなり的確に把握出来る。旧来型の露出面積を競う広告ではなく、費用対効果を正確に計算出来る環境になってきたのである。にもかかわらず、相も変わらずどんぶり勘定広告が大きな勢力をとどめている。

 どうしてだろうか。昨日、万年野党のシンポジウムがあった。堺屋太一さんの講演を聞いて、納得することが一つあった。堺屋さんは、日本社会はもう30年近く成長していない、と言った。その理由は分かっている、と。それは日本の官僚システムが硬直しているからだ、と。そうだと思う。そして、この硬直化した官僚システムは、政府や地方行政の官僚化だけではない。日本の企業そのものが、官僚化しているのだと思う。

 企業の総務部は、事務機器の扱いを○○商会に任せたら、総務部長が変わっても、取引先は滅多に変えないだろう。誰かが変えて、何かトラブルが発生したら変えた人間の責任になるから、前任の決めたものを守って、次の部長に引き渡すのだろう。広告代理店も、テレビや新聞の広告を電通に任せたなら、ネットも信頼出来る大手に任せればよい、という風潮なのではないか。それを官僚主義と呼ぶ。

 おそらく欧米であれば、新任の総務部長が、取引先のコストを精査し、よりリーズナブルな取引先に変更して、差額の利益が出たら、新しい部長の評価につながるだろう。そうした競争をしないで、いまある資産をみんなで食いつぶすまで、このままでやっていこうというのが、今の日本の組織のあり方ではないのか。

 日本は戦争に負けても、誰も責任者がいなかった。アメリカは、日本にもヒットラーみたいなのがいるだろうと調べ上げたが、いなかった。中心は空白なのである。ただ、ひとびとの「組織に対する無責任な責任感」が全体を動かしている。前任者の作業を無反省に引きつぐだけで、自分自身からイノベーションをしない。そのことで責任から逃れながら、組織に忠誠を示したことになると思っているのだろう。この構造と体質をなんとかしないがきり、日本は再び、大きな敗戦を迎えるであろう。

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橘川幸夫

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橘川幸夫

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