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NHKから国民を守る党(N国)とれいわ新撰組(リアルテキスト塾新聞20190722)


1.NHKから国民を守る党

 参議院選挙2019が終了した。今回の選挙は、メディアに関わってきた者にとっては、興味あるものだった。新聞・書籍・テレビでしか情報に接していない旧型インテリたちは、着眼点が古いから、事態が理解出来ない人が多いだろう。

 N国とれいわ新撰組は、全国で2パーセント以上の投票を獲得したから政党要件を満たした。特にN国については、なんでそんなに票が集まるのか、と疑念の声が多い。

 N国の候補者で僕が注目したのは大阪選挙区の尾﨑全紀候補である。早稲田を出て京都大学大学院に進んだ秀才であるが、ドロップアウトして世界を放浪し、10年くらい選挙の投票にも行ったことがないと語っていた。彼は、NHKを象徴とする現代社会の既得権益に反発しているというようなことを言った。番組の中身云々ではなく、集金人にいやなことさせて、その利益で高給を得ている放送局員や幹部たちを攻撃したいのだと思う。そういうNHK的な組織は日本に無数にある。だから、他のN国の候補者のように、最後に「NHKをぶっ壊す」のお約束フレーズは使わずに「大阪から維新をぶっ壊す」とやった。彼にとって、維新もまた新しい既得権益に見えるのだろう。

【参院選2019 大阪選挙区】「維新をぶっ壊す」尾崎全紀候補(NHKから国民を守る党)

 ちなみに、ポプラ社は出版業界の外から新しい社長(千葉均氏)を迎えて、インタビューに答えているが、以下のような状況に驚いたと語っている。

「出版業界は、作家さんや書店員さんやそれを取り巻く物流の人たちなど、いろいろな人に支えられています。でも私は、書店員さんって、あれほど本が好きで頑張って仕事をしているのに、実は日本でいちばん給料の安い職種のひとつだと思うんです。一方で、出版社に勤める人たちは、どちらかと言うといい給料をもらっている。」(千葉均氏)

経営者の孤独/ポプラ社・千葉均「宗教を持たない私たちは『哲学の徒』として生きる」

 素晴らしい人材が出版業界に現れた。この発想に尾﨑全紀候補の考えにもつながっていると思う。要するに、現代社会は、無自覚の格差が完成していて、その構造に無自覚のまま、インテリや良識人と言われている人は好き勝手な思考を遊んでいるのではないか、と。

 尾﨑全紀候補がネットで話題になり、すぐに応援演説に行ったのが、横山緑である。緑くんは、ニコ生全盛期に黒マスクで暗黒放送をやっていた有名人であるが、昨年の地方選にN国から出て、立川市議になっている。

『NHKから国民を守る党』久保田学市議(横山緑)がNHKの問題点をズバリ指摘「見てもないのに受信料を取るのが問題だ」

 N国は、突然出てきたのではなく、インターネットが普及して、それまでのテレビが支配していた文化状況を、おちょくるように出てきて、勢力を拡大した、2ちゃんねるやニコ生の文化が底流にあるのだと思う。ようするに、N国にとって、選挙とは、新しい「祭り」なのであろう。

N国・立花孝志代表「人と金はYouTubeで集めた」


2.れいわ新撰組

 山本太郎率いるれいわ新撰組の選挙戦略は見事だった。今回の選挙をスタートラインとして3年後の参議院選挙を見据えた、長期的視野に立った選挙活動は、これまでの風頼りで一喜一憂した反体制活動とは一線を画している。

 山本太郎が今回の選挙で目標としたのは、政党要件を満たす政治団体を立ち上げることであり、その目的は達成された。得票数は2,204,098票で得票率4.5%。まだ政党ではないので、テレビに露出しないことは百も承知で、路上パフォーマンスに終始した。演説は見事なものであり、選挙演説なんか建前ばかりで聞きたくもない、と思っている多くの人にも、頭と心に響くものであった。演説には手話の人をアテンドし、講演内容もすぐにアップロードされたりテキスト起こししたりして、支えるスタッフに優秀な人材を集めた。Twitterもツイキャスも見事に使いこなした。

 しかし、これはまだリハーサルなのだろう。政党要件が満たされて、年内の衆議院選挙は、街頭だけではなく、テレビというメディアの上で、山本太郎の講演が見れるようになり、衝撃を受ける視聴者が増えると思う。仕事左翼、労働貴族が支配している既成野党からも流れてくる人が増える。まあ、実際、今回の選挙を通して、野党から立候補して当選した人でも、れいわに行きたい人はいるだろう。落選した人の中にも、合流する人がいそうである。

 山本太郎が見ているのも、N国とは違うが、既得権益の欺瞞性である。今回、れいわ新撰組の立候補者の顔ぶれに驚いた。世の中の人が「山本太郎一派」と見なしているインテリ左翼や心情左翼などの口舌の徒を一切排除して、現場の人間を多く選抜したからである。お仲間サロンを作りたいのではなく、現場からかけ離れている政治の中枢に、現場をつなげてしまおうということだろう。この方法論は、やがて、現場を持たずに批評するだけの似非インテリと対立することになるかもしれないが、現場主義を貫いて欲しいものだ。そういう期待を込めて、僕もはじめて、山本太郎に一票を投じた。

 山本太郎の路上パフーマンスを見て、ロックフェスを思い浮かべる人も多いだろう。しかし、ロックフェスに登場するのは、それまでメディアで親しんできたミュージシャンが登場するから、多くの人が集まるのであって、ロックフェスそのものが独立した価値ではない。れいわ新撰組がテレビなどのメディアでの露出が増えて、そこで何かを感じた者が路上に集まるという構造が出来て本物になる。


3.既成メディアの激震

選挙期間中にメディアの世界でもいろんなことがあった。

ジャニーズに「注意」 公取委の狙いは?

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 いずれも、高度成長以後に築かれた、公共電波であるテレビ波を支配し、利益構造を完成させていた組織のほころびである。

 このキズは力技で修復されてしまうのか、一点突破で新しい構造や権利関係の整備が行われるのか注目している。特に、「のん」ちゃんがテレビから抹殺されている状況は、友人のスピーディーの福田さんがマネージメントで頑張っているので、応援したい。

 政治も産業も教育もメディアも、あらゆるところで、既得権益の矛盾が露出してきたのだと思う。それは、ただ崩せばよいというものではない。それに変わる新しい構造を生み出さない限り、単なるカウンターになるだけで、未来を開くことは出来ない。それはまた面白い時代の始まりだと思える人たちとつながっていきたいと思う。

 こうした村の構造を打破しない限り、日本はますます世界から取り残されていくだろう。

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