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佐野氏問題の終了

 オリンピック・エンブレムを巡る剽窃問題は、佐野氏の辞退によって、ひとまずの終わりになるだろう。組織委員会の、問題の本質がまだ理解されていないような会見は、更に油を注ぐようになったが、これ以後、新しいパクリ作品が指摘されても、状況的にはそれほどのインパクトを与えないだろう。

 僕たちは、今回の問題で、この「複製芸術の時代」における「オリジナルな表現」とは何かという、本質的な問題に向かいあえる契機を得たのだと思う。そのことを、特に、表現に関わっている人達は、各人が、徒党を組むことなく、個人の問題として向かい合うべきだ。

8月15日のnoteに以下を書いた。

「デザイナーとは、そもそも画家でも写真家でもないわけで、画家の作品をよりよく見せるというのが任務である。オリジナルな作品を作るとしたら、それは、作家になるしかないわけだ。今回は、ネットの素材を使ったわけだが、本来なら、イラストレーターやカメラマンに素材を作ってもらい、それをデザインするのが業務だろう。インターネットがなかった頃は、素材や参考資料なんて神保町の洋書屋で探してくるしかなかったが、今は、クーラーの効いた部屋で、なんでもパクってこれる。これからのデザイナーに必要なことは、こうした誘惑の多い情報環境の中での「自制」と「禁欲」だろう。これはデザイナーに限らない、あらゆるクリエイターに言えることだと思う」

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