ニュース0202●黒い羊/欅坂46

(1)黒い羊がやってくる。

 欅坂46の21人体制が終わった時、もう欅坂についてはレビューするのをやめようと思った。2018年の「夏の全国アリーナツァー2018」の幕張最終公演で、平手がステージから落下するのを見て、精神的にも肉体的にも平手は限界だと思った。よく戦った、もう休んでよいよ、という気持ちに何故かなっていた。もう限界だ。これ以上の戦いは辛すぎる。

 平手が不在のけやかけもつまらないし、テレビ番組として面白いというだけでいえば、ひらがなの方が面白い。そう思っていた。

 しかし、黒い羊である。平手の声がはっきり聞こえてくる楽曲である。ネットでは、「これは平手が作詞したのではないか」という声まであがっていた。平手が書いた最後のブログを覚えているだろうか。あの言葉の世界が翻訳されたような世界だ。

 そして、TAKAHIROさんと新宮監督が参加して、更に明確に、更に深くなっていく不安な世界。平手、少し痩せたかな。YouTubeで公開されずに、自前のサイトで公開しているのは、YouTubeにあげたら、倫理規定で削除の可能性があるからだろうか。なにかを思い出す。

 昨日、公開されて以来、繰り返し繰り返し流している。

(2)走馬灯

 人は死ぬ間際、それまで生きた人生の局面局面が走馬灯のように自分の周りを走ると言う。まさに、死に際の走馬灯のような映像。

 彼岸花は、墓地に埋葬された死体の血を吸って、あんな激しい赤色をしていると言われている。しかし、それはそうではなく、彼岸花の根っこには毒性のアルカロイドが含まれていて、埋葬された死体を掘り起こす野犬が、アルカロイドでラリってしまうために、彼岸花を墓地に埋めたということを僕は知っている。若いということは、それだけで存在がアルカロイドなのだ。

 階段の踊り場で平手に彼岸花を渡す少年。あれは何なのか。あれは誰なのか。あれはきっと、平手の心そのものだ。息を荒らして階段を登り何かを叫ぶ。「僕はいやだ!」だと最初思ったが、違うのか。違うようにも思う。(僕は僕だ! にも聞こえてきた)

 そして屋上での狂気のダンスシーン。走馬灯を巻き戻すように、飛び降りる前の混乱した精神状態か。「孤独なまま生きていきたい。だけど一人じゃ生きられない」というアンビバレントな風景。仲間を抱きしめて、大人たちに引きずり倒されて、僕だけがいなくなれば良いんだ。

 混乱の映像を見るには、見る方も混乱しなければいけない。

(3)崖っぷちの全力疾走。

 しかし、14歳でオーディションに登場した平手友梨奈が、ここまで来るということを秋元康たちのスタッフは想像していたというのか。見えない可能性を評価した関係者を尊敬する。

 伏線はあった。2018年の夏の平井堅のノンフィクションを踊った平手友梨奈。そして、「響 -HIBIKI-」を主演した平手友梨奈の演技。昨年の欅坂21の崩壊の中で、平手は、ひたすら自分の出来ることを追求してきた。その経験が、すべて、このMVに凝縮されている。一瞬たりともサボらずに生きた姿が。

 15歳ぐらいの時、NHKの特番で、平手は「20歳になったら、何をしていると思いますか?」と聞かれて、ごく自然に「結婚でもしてるんではないですか」と答えた。作られたアイドルを越えた、時代のアイドルがここにいる。

 今年は、アニバライブをやるのだろうか。黒い羊の表現は、そのアルバムの全曲を聞きたくなる。期待してやまない。

 安定した人気者の座なんかに興味がなく、ギリギリの崖っぷちを全力で走り抜けるのが平手。最後まで付き合おう。

▼橘川の欅坂についてのデビュー以来のレビューは、以下。
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欅坂46と平手友梨奈についての論考です。

考えることが好きです。考えて、すぐ試してみることが好きです。試しながら考えを調整したり、最初から考え直してみたりすることが好きです。言葉の力を信じています。自分の考えを言葉にしようしない人を信じません。一緒に考え言葉にしていきましょう。

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橘川幸夫

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