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英国のEU離脱と新しい国家運動・情報小料理屋 2016/06/27

(1)国家のエネルギー

 世界は、遠心力と求心力で出来ている。外側に向かう力をグローバリズムと言う。昔は、インターナショナリズムと言っていた。内側に向かう力をナショナリズムと言う。

 この2つのベクトルに引き裂かれたところに、すべての運動がある。それは個人の場合もそうであり、個人の集合した国家の運動論も同じである。外に向かって自分の力を試したい衝動もあれば、内側に向かって自分を再度、確かめたいという衝動もある。

 かつての王国は、他国にない、新しい方法論を身につけると、遠心力を発揮して世界に向けて拡大していった。新しい方法論は「馬」だったかもしれないし「鉄」だったかも知れない。しかし、世界には限界があり、直線的に拡大していく王国の方法論は、いつか限界点に達し、求心力へと戻っていく。僕たちが知っているのは、永遠に栄えた王国はないということだ。人に寿命があるように王国にも寿命がある。

 近代からスタートした、新しい帝国の遠心力は、やがて、世界を二分する世界大戦を引き起こした。戦争は、国家と国家との暴力によるコミュニケーションであり、不幸なことに僕達の技術のブレイクスルーの多くは、戦争の中で生まれた。特に兵器については、その国の総力をあげて最新鋭の開発競争が行われた。その結果が、核兵器という、作ったが使うことの出来ない悪魔の兵器を生み出した。

 そして、第二次世界大戦後の、アメリカとソビエトの超巨大国家間の対峙が生まれた。冷戦である。アメリカは企業や個人が自由に国家運営に参加出来る、民主主義的な自由経済を唱え、ソビエトは中央が主導する計画経済による国土の発展を唱えた。ソビエトは、硬直化した官僚制度を生み出し、経済的に破綻した。ソビエト社会主義共和国連邦は崩壊し、連邦は拡散し、中央のロシアだけが独立国として残った。

(2)新しい世界秩序

 EUとは、第二次世界大戦後の欧州の新秩序を探るものであったのだろう。中心にいたのは、フランスとドイツ。フランスは、「自由」(リベルテ)を求める市民革命の歴史から、思想的に新しい秩序をデザインした。ドイツは、ヒットラーの登場と敗退により、急進的な遠心力を持つファシズムの方法論を永遠に禁じ手とされた。国家を成長させていくためには、ファシズム以外の方法が必要だったので、フランスの動きに同調したのだろう。ドイツ(西)は、ソビエトの崩壊により、東西ドイツの合併を乗り越え、国土を拡大した。東の労働者は賃金の高い西への移動があり、西の労働者は家賃の安い東への移動があったと言われている。シリア難民を100万人規模を受け入れるという覚悟は、東西合併にうまく対応出来たという自信からだろう。シリア難民の労働力を使って、新たな生産拠点を国内に構築しようとしている。そのためには、EUという共同体が、まさに「内需」という市場であるというところに、最大の価値があると思う。

 EUは、固有の民族の集落からスタートした国家の拡張運動の限界から、国家間の協議と協定によるメタ国家を作ろうとする動きだろう。これは、日本帝国が突出しない大東和共栄圏の発想であり、世界の新しい秩序を模索する、極めて重要なムーブメントだと思った。

 そのEUから英国が離脱した。その離脱した理由を問うことに、それほどの意味はないと思う。EUという新しいメタ国家が、ゆるやかな遠心力で拡大していこうというベクトルを持った時に、内実に向かうナショナリズムの求心力が存在していて、それは英国だけではなく、加盟国それぞれに根深く内在していることを知るのである。

(3)我が国の状況

 米ソ冷戦において、国家の方法論は、米国の自由主義的な「小さな国家」と、ソビエトの計画経済的な「大きな国家」との対立として捉えられていた。だから、アメリカが勝利したら、世界は、「小さな国家」に進むのかと思ったが、実際は、そういうことではなかったようだ。

 我が国を振り返ってみて、一体、この国は、どういう方法論を進んでいるのか、分からなくなる。安倍首相は、価値観としては、求心力でもって明治から戦前までの価値観に希望を見ているように思える。しかし、現実の政治は、ひたすら経済拡張、軍事拡張の遠心力に頼っているように思える。自由主義経済のはずなのに、年間予算は100兆円規模にまで膨れ上がり、しかも、その内実は、株式会社に投資しているファンド会社みたいになっている。

 国家運営は、国家の遠心力と求心力のバランスをもって推進していくものだと思うが、今の政権は、遠心力のアクセルと、求心力のブレーキを同時に踏んでいるように見える。これではどこへも進めないで、エンジンはいつか爆発する。

 100兆円もの予算規模になった理由ははっきりしている。日本の官僚制度がソビエト化し、各省庁は、自分の省の権利拡大のために予算を増額してきたからだ。まるで企業が右肩上がりの成長をしなければ潰れてしまうように、予算が拡大しないと省が衰弱してしまうという危機感で官僚が働いているからだろう。官僚組織の問題にメスをいれない限り、日本は豊かなまま破裂する。

(4)進むべき道

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英国のEU離脱と新しい国家運動・情報小料理屋 2016/06/27

橘川幸夫

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