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全裸レストランの背景にあるものと衣の未来●情報小料理屋 2016/06/10


日本初の全裸レストランがオープン! 世界一美しい肉体を持つ男も登場

 世界的に話題だという全裸レストランが日本にオープンするらしい。イギリスの店では、すでに1万人が予約しているようだ。日本の場合は完全ヌードではないようで、デブと55歳以上はダメらしいので、美しい肉体を見せ合う場ということか。

 昔、マーケティングの仕事で、未来のファッションの調査をしていたことがあった。衣類というのは、最初は「機能」として寒さ対策で必要であり、次に「権威」の象徴として権力者や資産家が依頼でそれを表現する時代があった。いわゆる「ブランド・ファッション」というのもその流れ。「組織」のシンボルとしての制服も同じだろう。やがて「個性」が権力になって、自分の考え方や生き方を表現するファッションがあらわれる。着飾る、という言葉があるが、まさに、着ることによって自己表現をしてきたわけだ。そうした豊かなファッションの時代の次に何が来るのかというのが研究テーマだったのだが、僕らは、「脱ぎ始める」という仮定を出した。単に脱ぐのではなく、最終的なファッションは「肉体」になるという考え方だ。化粧や整形、あるいは先進国のタトゥーや身体改造の動きは、肉体に衣類をまとうのではなく、肉体そのものを衣類化する動きだと思った。

 無印良品やファストファッションというのは、これまでの着飾るファッションの限界の中で、最初に「脱ぎはじめた」ファッションだ、とそのリポートに書いた記憶がある。

 その考え方でいけば、全裸レストランは、世界の最先端の意識の人間が集まる空間を意識しているのではないか。自分の誇るべき肉体を見せ、相手の素晴らしき肉体を見るという、新しい社交界が生まれているのかも知れない。

 日本の場合、そうした白人たちの文化の歴史を辿っていないので、単なるノーパン・レストランのような、すけべ感覚で見られるだろう。タトゥー禁止といおふれが出るかもしれない(笑)。

 かつて日本の最上級の知性であった三島由紀夫は、虚弱で背が低いというコンプレックスもあったが、ボディービルで肉体を鍛え、戦う武士になって死んでいった。ライザップが受けているのも、単なる肥満対策ビジネスというだけではないのかも知れない。

 しかし、あらゆる産業がITテクノロジーによって蹂躙され、標準化・自動システム化・データベース化していく中で、コンテンツ企画としては性的な肉体が最後の人間の砦になるのかも知れない。

 80年代に、ホットドッグプレス(講談社)の編集長時代の故・内田勝さんと飲んでて、彼は「情報化社会が進むと、あらゆるものが擬似体験出来るようになる。旅行にいかなくても、行った気分になれる。実際の旅行も、あらかじめ情報を仕入れた知識を確認するだけのものになってしまう。しかし、セックスだけは、どれだけ情報を仕入れようとも、はじめて体験すると、集めた情報がすべて無意味になるような体験になるんだな」と語っていたことを思い出す。

 人類よ、どこへ行く。

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