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吉本興業問題について(1)

1.吉本興行のドタバタとテレビ局

 テレビのワイドショーは選挙のことにはほとんど触れず、吉本興業の話題でいっぱいだ。コメンテーターが相変わらずの、よく分からない正義感で、社長の謝罪会見を馬鹿にしている。吉本の体質をあたかも初めて知ったような顔をして追求している。

 岡本昭彦社長が、高圧的に宮迫博之たちに迫ったということだが、普通の企業と比較しても仕方ない。芸人は、基本的にはやんちゃな連中が、ホワイトカラーの人生を蹴っ飛ばして入ってきて、のしあがったものであるし、言葉で言い負かすプロでもあるので、経営する側も、それなりの対応が必要だろうことは察する。

 芸人の方も、ここぞとばかり一斉に吉本興行に対して本気の怒りをぶつけはじめた。しかし、それは、元々、吉本の芸人たちは、会社の対応に不満かあって、そのエネルギーが爆発したいにみたいに見える。だとしたら、なんでもっと早く、吉本の前近代的な仕事の仕組みを、内部から変えようとしなかったのか。

 テレビが吉本問題を騒ぎたてるのは、一つは、自分たちが吉本の株主であり、ことの行方は、自分たちにとっても関心がある。吉本興業は、東証一部の上場を廃止して、非上場になった。その時、テレビ局を中心に株を引き受けて、いわばテレビ業界の制作部みたいなカタチになったのだろう。一般株主がいないのだから、好きにやれると思ったのだろう。

 どうも、この問題は、奥深い闇があるように思う。

▼吉本興行の株主
フジ・メディア・ホールディングス 60000株
日本テレビ放送網 40000株
TBSテレビ 40000株 
テレビ朝日ホールディングス 40000株
大成土地 (創業家) 40000株
京楽産業 40000株
BM総研(ソフトバンク関連)30000株
テレビ東京 20000株
電通 20000株

 吉本興業は、連結で、500億ぐらいの売り上げで、純利は6億ほど。ギャラ支払いをケチっていたとしたら、支出はなんなのだろう。長年の上場を元ソニーの出井さんがTOBでまとめて、非上場になった。株主は、テレビ局が大半で、あとは電通と銀行と創業家と出井さんら。これって、吉本の利益を株式配当でテレビ局に還流するということなのかも知れない。

 だから、吉本芸人は、吉本から見捨てられたら、それは、すなわちテレビ局に見捨てられるということだから、黙って我慢してたんではないのか。どうも他の芸能事務所とは、構造が違うような気がする。

 吉本興行の岡本昭彦社長の会見で器の小ささが露呈してしまったが、株主側が経営の主導権を握っていたとしたら、むしろ辣腕の経営者よりも、マネージャー上がりの上の言うことを素直に聞くタイプの人間の方が社長として扱いやすかったのではないか。「テレビ局は吉本の株主だから大丈夫」という岡本社長の発言も、株主というよりもっと大きな力を感じる。「おまえたち全員の首を切る力がオレにはあるんだぞ」という発言も、本当に社長として会社の全権力を握っていたら、わざわざ言わない。本当の権力者から、首を切る権利を預かっている、という立場を自覚していたのだろう。

 吉本興行の経営をオールテレビ局がやっていたのだとしたら、芸人の現場を熟知しているテレビ局の責任も追求されるべきではないのか。

 また、芸人と口約束で契約書も交わしていなかった問題も、通常でいえば会計監査や税務調査で追求されるべきものではないか。経理に詳しい人の説では、9割のマージンをとっていたら、9割分の業務内容を明確にしない限り、芸人から吉本興行への贈与と考えられることもあると指摘している。長年、税務署が黙認してきたのはなぜか。

 また年商500億の企業に、100億の国家予算が投入されるというのも、不思議なことだ。

 調査報道の出番であろう。

追伸

紳助が文春につかまって今回のことについて話してる。

島田紳助が激白「松本の発言は別問題やから。でも大崎クビにしたら会社潰れんで」

 大崎会長のインタビューを読むと、もともと吉本興行は筋者たちとどっぷりの関係があり、役員の中にも、反社がいて、それを整理するのが大変だったと言っている。恐らく一般株主の中にも、大勢いたのだろう。それを一掃するために、テレビ局と組んだ、というのは想像できる。大崎会長の政治的腕力は相当なものであろう。そして、恐らく相当の金額の代償を払ったのだろう。反社に対する手切れ金を出したのが新しい株主だとしたら、それは問題になるだろう。そうした経緯を含めて、吉本興行は、次の時代へのステップに向かう局面に来ていることには間違いない。他人事ながら、現在の社長には重すぎる課題であろう。

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