「ロッキング・オンの時代」紙の本で読んでもらいたいということ。

 エンジニアの大江くんと僕の新刊「ロッキング・オンの時代」の話をしていて、大江くんが「電子書籍は同時発売ですか」と言うので「よく分からないけど、ないんじゃない」と答えると、「今時、電子書籍出さないのは駄目ですよ」と言われた。そうは思うけど、何か言い返したい気持ちがあった。

「ロッキング・オンの時代」は紙の本で読んでもらいたい気持ちがある。この本は、10年以上前、ある出版社の社長と話していて企画がまとまり、書き始めた。時々、書きたいシーンがあって一気に書くのだが、継続的に書けない。僕は筆運びは早い方だと思うが、どうも、一気に書く気が起きない。ポツンポツンと書いて、ブロマガやnoteに掲載していたりした。

 1981年に最初の単行本「企画書」を出して以来、4年に一冊の目標で単行本を書いてきた。だいたい時代評で、その時その時の現象とか直面する課題に向かい合って書いてきた。なので、書いたら、早く公開したいという気持ちがあった。特にインターネット登場以後は、ライブ感覚が最重要なので、どんどん思ったり感じたりしていたことを、さまざまなツールで公開してきた。

 しかし「ロッキング・オンの時代」は70年代の記録だから、そんなにあわてて公開する必要もないので、ずるずると引き伸ばしてしまったのだ。当初の発行予定だった出版社の都合で、出せなくなった時も、「それは仕方ないな」という気持ちだった。幸いに晶文社の安藤くんが拾ってくれて、めでたく発行できるようになった。

 本には、2種類あるのかも知れない。すぐに読んでもらいたいものと、いつか読んでもらいたいものと。

 情報という言葉は、情と報とで出来ている。情はインテリジェンスで報はインフォメーションである。報については、新鮮さが大事だから、電子書籍が似合ってる。しかし、情の方は、著者と読者が向かい合うものなので、別段、急ぐこともない。出会いのタイミングというものがある。読んでもらうことが大切なのではなく、読むことによって読者の中に浮かんだものが大切なのだと思う。

 林雄二郎が80年のはじめのころ、恵比寿にあった僕の事務所に来てくれて、プライベートのレクチャーをしてくれた。その時に教えてもらったのは「文明と文化」の違いで、文明は、「人に利便性を与える」のに対して、文化は「人にアイデンティティを与える」と。だから戦後の家電で三種の神器と言われた「冷蔵庫、洗濯機、テレビ」を同じカテゴリーにするのはおかしいと言った。冷蔵庫と洗濯機は文明の産物で、テレビは文化の産物だからだ。

 電子書籍は、文明として便利な道具であると同時に、文化として人にアイデンティテイを与える道具でもある。本を「知識取得のために読む」のであれば電子書籍で良いだろう。しかし、本には、単なる知識伝達のためのものではない部分がある。ここんところは、本当にそうなのか微妙なのだが、僕は「僕が体験した時間」と「僕が体験した時間を追体験した執筆のための時間」を読者と共有したいと思う。ゆっくり、本当は出来たら、直接、会って話しながら伝えたい。そうしたアナログな気持ちは、電子書籍の回路とは少し違うような気もするのだ。

 もっともそのためには、こちらもパソコンを捨てて、鉛筆で書かなければならないのかも知れない。昔、真崎・守は、マンガというのは指の肉体労働で、エネルギーを直接、紙に伝えていくものだ、というようなことを言ってた。

 まあ、いずれにしても、企画から10数年ぶりに発行にこぎつけた。登場する多くの仲間たちや、関係してくれた皆様に感謝いたします。発行イベントとして、HMVやビレバンでトークライブを計画します。LFのラジオ番組にも仲間たちが動いてくれてゲスト出演です。

 さて、時代が直面している課題を、もう一冊の本にしなければならないので、こちらはスピードを上げて書きます。

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橘川幸夫

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