「B企業」の衝撃と、今の政治が間違っていると思う、僕の考え。情報小料理屋 2016/06/29

社会派「B企業」の逆襲。渋沢栄一に学ぶ新興国 編集委員 梶原誠

1.株式会社とNPOの次に来るもの。

 2016/6/27付日本経済新聞の朝刊に掲載された記事は、ちょっと衝撃的だった。アメリカでは、リーマン・ショック以後「B企業」と呼ばれている企業が急増しているとの記事だ。企業が、株主の求めに応じて短期的な利益を極大化を目指したことによってリーマン・ショックが起きたという反省から、株主ではなく、社会に恩恵(ベネフィット)を与える企業をB企業と呼び、すでに30の州でB企業の法的な枠組みが整い、2000社が地位を獲得し、民間でも認証制度がスタートしているという。アメリカという国は、いろんな意味で、社会そのもののイノベーションが行われている国だと思う。

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 アメリカに比べて、我が国は、戦争に負けようが、恐慌に襲われようが、本質的には何一つ変わらず、次の危機に対する対応策を模索することもなく、何度も何度も痛い目に合うだけの民族なのかと、目をつぶりたくもなるが、そうも言ってられない。眼前の事態を見つめなければならない。

 僕は、昔、ジョージ・ソロスの本を読んで、「私のビジネスはボランティアではなく、私のボランティアはビジネスではない」という彼の言葉がずっとひっかかっていた。彼のビジネスは、小国がぶっとぶような過酷なものであり、彼のボランティアは東欧の民主化を支えたほどに歴史を変えるものだったし、世界の教育機関に多大な資金を提供している。目的と手段を明確に分ける方法は、潔い戦士を思い浮かべる。

 しかし、違うと思う。社会を潰すようなビジネスをして、その利益で、社会に貢献するという方法は、20世紀までの方法だと思う。次の時代は、ビジネスとボランティア(社会貢献)が一体しなければならないと思う。一方で他人の家に放火をして保険金をせしめ、他方で、消防署に多大な寄付をするようなことは、普通は、個人の人格を崩壊させる。

 1970年のはじめに、日本最大の株式会社であるトヨタ自動車の豊田英二さんから、財団の設立を頼まれた林雄二郎は、日本の著名な財団法人を回ってヒアリングを続けた。しかし、どこの財団でも「財団というのは、国家の補助金をもらう受け皿ですよ」というような説明を受け、絶望的になった。多くの財団が、監督官庁からの天下り先になっていたことも、林さん自身が経済企画庁の官僚でありながら、天下りを拒否した性格から、不愉快になったことだろう。アメリカに渡り、著名な財団のヒアリングを続けると、欧米の財団は自己資金で運用し、財団活動で最も重要なのは、プログラムスタッフだということを繰り返し言われた。プログラムスタッフというのは、財団が支援する相手の活動を理解して、サポートと評価を行い、ある場合は、編集者やプロデューサーのようにしてプロジェクトに関わっていく。

 林さんは、日本で最初の本格的な助成財団であるトヨタ財団を設立する。トヨタの資金で基金を作り、プログラムオフィサー(現在はプログラムディレクター)として山岡義則さんを迎える。林さんは、企業の社会貢献(フィランソロピー)をその後も一貫して考え、山岡さんは、日本NPOセンターを作り、NPO法人制度の制定に尽力した。日本NPO学会の初代会長は林さんであり、その学会では「林雄二郎賞」という顕彰制度がある。

 僕が林さんの本を読んで感動し、長い手紙を書いたのは、1979年ぐらいだった。林さんから返事が来て、最初に会ったのは新宿三井ビルにあるトヨタ財団の専務理事の部屋だった。窓の外には新宿・渋谷の街が一望出来る部屋だった。それ以来、彼が亡くなるまで、35年間、お付き合いさせてもらった。生きている時は友だちとして付き合い、亡くなってからは僕の師匠として付きあわせていただいている。林さん、山岡さんと3人で、一冊の本を作ったこともある。

生活情報論 (講座生活学) 光生館

 いわばNPOの産みの親か祖父である林さんは、21世紀になってから、既存のNPOへの不満を言うようになった。「NPOは、国の補助金や助成金や民間からの寄付金の受け皿になっている。これでは、本当に社会のためになる活動が出来ない」と。それは、おそらく、林さんがトヨタ財団を作る時に、既存の日本の財団にヒアリングした時の嫌悪感を思い出していたのだと思う。

 林さんは、「NPO(Nonprofit Organization)ではなくNPE(Nonprofit Enterprise)にしなければダメだ」と言った。Enterpriseというのは、冒険心のある企業体のことだ。補助金を頼りにしない、自律的な企業体でありながら、企業利益だけを目的としてない社会的組織体ということだ。これは、まさに、ソーシャル・ビジネスとしての「B企業」のことではないか。僕が、日経の記事を読んで軽い衝撃を受け、リーマン以後のアメリカの動きに羨望を感じたのは、林さんの「NPE」という言葉が、ずっと僕の気持ちの中に残っているからである。

▼2006年ぐらい、林さんと滑川海彦と橘川。

2.政治の時代認識

 今、ビジネスに必要な物は正義感である。それは、倫理の問題ではなく、社会正義の不義を正すことが、人々のニーズであり、最大のビジネスチャンスになるからである。そうした不正義に敏感に反応したものが、行動に移れる。

 僕は、今の政治状況に失望している。それは、政治家の資質がどうの、イデオロギーのクオリティがどうのという問題ではない。今の日本は、戦後の復興期を経て、次の次元に進もうとしている認識が僕にはある。復興期においては、生産力の向上のために、過酷な競争社会が必要であった。しかし、ある程度の豊かさを獲得してしまった後に、競争社会は必要ではない。豊かさの中での競争は、格差を拡大していくだけだ。国家や社会の現状と未来を展望するなら、どうやって「競争社会を終焉させて、新しい方法論を見つけるか」が、最大のテーマになると思う。

 現在の選挙制度は、この社会で最も過酷な競争制度である。この競争に勝ち抜いた人間に、競争社会の終焉を委託することは出来ない。政治家たちが、ライバルの悪口と攻撃を繰り返しながら競争している姿には、呆然とし、時代錯誤を感じてしまう。批判は必要だと思う。しかし、それは、相手の成長を願っての批判でなければ、お互いの憎悪が成長するだけだ。それが、21世紀の人間の、生き方だと思うのだろうか。

 NPOにしても、同じ問題意識を持ちながら、同じ補助金の枠を取り合うライバルになると、お互いの悪口を言い合う。一人ひとりの個人の意識の中に、他者を押しのけて自らの立場を確保するという競争社会の原理を軽減していかないかぎり、息苦しい社会構造が続く。

 僕は、どちらかというと思考的なタイプの人間ではなくて、時代感覚的な人間だと思う。その僕が、今年になってから、深夜に考え、文章を書くことが急速に増えてきた。そうとう、時代がやばいのではないかと思う(笑)

 僕は時代を信じるものであるし、時代の彼方にいる人々を信じるものである。そして、若い世代に対しては無制限に信頼するものである。ともに、この時代を考えてくれる人間を、僕はずっと待ち受けている。

 アメリカの大統領選挙を見ても、政治というのは単純な喧嘩ショーなのかも知れないとも思う。しかし、アメリカは、アメリカを支える企業社会の方で「B企業」という、新しいコンセプトによる運動体が始まっている。政治が国家を主導する時代は、やがて終わりになり、社会が先行して、政治がやがて追いつく時代になっていくのだろうか。

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橘川幸夫

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橘川幸夫

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