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佐野氏問題で明らかになったこと。

 今回の動きは、戦後社会の方法論と、インターネットによって生まれつつある新しい社会の方法論との軋轢としてとらえることが大事だと思う。それぞれの立場から、それぞれの立場を擁護するだけでは、相手の側に言葉が届かない。オリンピック・エンブレムの問題の直前に、国立競技場の設計問題があり、当初の案が撤回したあとに、エンブレムの問題が勃発したのであり、問題の本質は、つながているとみるべきである。

 戦後の方法論というのは、明治以来の近代日本社会の方法論が純粋培養したものだが、あるテーマごとに有志が集まり、新しい知識を学び、精進し、議論し、仲間内の優秀な人間を評価し、あるいは否定したりして、業界が固まってきた。その業界秩序は、外の人間からはあずかりしれない世界であり、独自のルールや伝統が生まれてきた。外の世界の人間がその世界のことを知るのは、アウトプットされた作品や成果だけである。そのような業界が、無数にある。政治の世界にも、実業の世界にも、教育の世界にも、文化の世界にも、メディアの世界にも、アウトローの世界にも。

 そうした閉ざされた業界人の世界が、インターネットによって、内部の出来事があらわになってきた。昔は、銀座のクラブや、新宿のゴールデン街でしか聞けなかった話題が、日常的に一般の人にも触れるようになった。そのことで、いろんな業界の面白さも知り、矛盾点も知るようになったのである。

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