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インターネットの限界について・情報小料理屋 2016/06/07

 10年ほど前に、あるベンチャー企業の社長に呼ばれて、意見を求められた。そこの事業は、テレビ番組をすべてハードディスクに入れて、それに検索エンジンをかませて、キーワードを入れると関心のある番組が出てくるというものだ。テレビには東京ニュース通信社が作っている番組表というものがある。これは予定表であって、テレビというのは、番組変更というのがあるから、かならずしも予定表そのままでは実施されていない。そこでパート軍団を組織して、実際に放映された番組表を作り直していたりした。

 それで社長が言ったのは「橘川さん、最近のテレビというのは、ものすごく内容のクオリティがあがっていて、検索して探すだけの価値のあるものになっているんですよ」と。それで、僕は、「なぜ、テレビのクォリティがあがったのか、知ってますか? それは、台本書きの段階でインターネットを使って、細かい情報を集められるようになったからです。インターネットで情報が調べられる限り、わざわざ二次情報のテレビの番組を検索する人はいませんよ」と。

 かつて情報を発信する人は、情報の表現力と同じくらいに情報の収集能力の優れていた人であった。明治時代のインテリは、大衆の知らない欧米の知識をソースとして翻訳し、大衆の尊敬を集めた。福沢諭吉も夏目漱石も森鴎外も、独自のソースを持っていたのである。今は、そのソースが大衆化した。

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