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新時代へ向けてのご挨拶

 シャープ、東芝、ソニー、任天堂、フジテレビなど、20年前であれば、永遠の繁栄を約束されていたかのような大組織が不規則飛行を続けている。永遠に人気のあるスターがいないように、永遠に社会のニーズに応えられる組織はないのだろう。インターネット以後、顧客の多様性はめまぐるしく、技術の進化もすさまじい。大組織にしか所有出来なかった技術やノウハウが、どんどんオープン化し、個人レベルでも使えるようになってきている。日本を代表する企業組織である、トヨタ自動車にしても、電気自動車が一般化すれば、どうなるのか分からない。トヨタは、日本が繊維産業(イトヘン)の輸出で外貨を稼いだ時代に、機織り機の開発で組織の土台を作り、戦後のGHQによる道路建設の推進政策にのって、自動車産業を成長させてきた。トヨタは、何十年前から、自動車の次の業態模索をしてきた。住宅産業だ、情報化産業だと、追求したが、自動車産業が巨大すぎて、そのスケールでの業態は見いだせていない。

 90年になってから、日本の大組織は、M&Aを繰り返し、集中と選択で、組織を肥大化させ、下請けの中小企業を見捨てて内製化を進めた。しかし、そもそも、日本の大企業は戦後の混乱の中で、中小企業からスタートして、大きくなった組織が多い。それらを主導したのは、戦前派の戦争体験者だ。戦中派や戦後の団塊世代は、そうした先人が作った組織に入社し、巧みな処世術でライバルと戦い、組織を拡大してきた。彼らには、組織をゼロから創ることも、これまでの組織を叩き潰して、裸でスタートするということは出来ない。官僚的な秀才だけが、組織の中で出世したのだろう。東芝のゴタゴタを見ていると、つくづくそう思う。そんなことをしている間に、世界は、別の次元の世紀に行ってしまう。

 20年前なら、決して破産することはないと思っていた日本国も、崩壊する大組織に代わる、新たな「成長する中小企業」を見出さない限り、未来はない。僕らの世紀では、決して衰退することのないと思っていた、アラブ産油国の雄であるサウジアラビアでさえ、IMFは「サウジアラビア、5年以内に金融資産が枯渇するリスク」を語りだした。

 サウジアラビアの危機の本質は、原油価格の低迷ではない。豊富な金融財政の中で生まれ育った子どもたちは、新しい事業を立ち上げようとか、新しい社会建設を目指すという意欲が決定的に喪失してしまっていることだと思う。金がなくても、人の心意気があれば、物事は始まる。それがなければ、どれだけお金を持っていても、何も始まらない。ただ、歴史の濁流に流されていくだけだ。

 組織は、組織を立ち上げた人たちが消えていく時が、最大の危機だ。日本各地の商店や小企業は、倒産ではなく、後継者がいなくて、立ちゆかなくなっていると聞く。一方で、都市においては、納得の行く仕事が見つからない若者たちがいる。「引き継ぎつつ、新しく起こす」ことがポイントだと思う。

 僕は、すでに65歳。残すべきものは何もないが、戦後社会で生きた証として、多くの信頼出来る友人たちの関係性がある。戦後に生きた者は、生きた経験と感情を次世代につなげていく役割があると思う。

 コンセプト・バンクを再起動します。

 よろしくお願いいたします。

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