見出し画像

2024年注目すべき世界の音楽・アフリカ編~Zonkeから紐解く南アフリカのスロウでメロウなアマピアノ的ハウス~

皆さん、ご機嫌如何でしょうか?アフリカ音楽キュレーターのアオキシゲユキです。

2023年は5月と11月にインド、9月にナイジェリアと、念願だった二つの国を訪れるチャンスがあって非常に貴重な経験ができた1年でした。また、いつもお声がけを頂いているあっこゴリラさんがナビゲートするJ-WAVESONAR MUSIC」にも合計4回(新年・KIZONBA特集・ネルソンマンデラ特集・ナイジェリア特集)出演させて頂きました。本当にありがとうございます!

さて、そのSONAR MUSICに今年も1月2日から出演させて頂きました。2024年のスタートは新年恒例となる「SONARファミリーが選ぶ!2024年注目の海外アーティスト」特集!今回は「アメリカ・イギリス編」を岡村詩野さん、「ラテンアメリカ編」を島晃一さん、「アジア編」をDJ水月さん、そして「アフリカ編」を私アオキがご紹介しました。OAの様子はradikoのタイムフリー機能で1週間以内なら視聴可能ですので、ぜひチェックしてみてください!


今回ご紹介したアフリカ音楽のアーティストは、南アフリカのZonkeです。

画像はYoutube Musicより掲載

Zonke(本名Zonke Dikana、1979 年 10 月 11 日生まれ)は、南アフリカのシンガーソングライター・プロデューサーです。2003年に生バンド編成のヒップホップグループ「Culture Clan」のヴォーカルとしてドイツでデビュー。その翌年2004年には1stアルバム「Soulitary」でソロデビューを果たし、これまでに6枚のスタジオアルバムをリリース。「Give and Take Live」「Work Of Heart」「L.O.V.E」等のアルバムで南アフリカの音楽賞を受賞しています。ブシ・ムロンゴやミリアム・マケバといった南アフリカのレジェンドシンガーをリスペクトし、ソウルやR&B・ハウスなど自身の音楽的志向とアフリカ音楽を融合させた現代の南アフリカを代表するディーバです。

OAで紹介した「LITTLE THINGS YOU DO」、実はこの曲はカバー曲で、では元ネタは誰なのかというと、Zonkeの実の姉でシンガーだったLulu Dikana(1978年12月18日生まれ)が2008年にリリースしたデビューアルバムの収録曲なんですね。妹のZonkeと同様に姉のLuluも高い歌唱力とパフォーマンスで南アフリカで高い人気を博し、Luluはジョン・レジェンドの南アフリカ公演で前座を務めるなど将来を期待された存在でした。しかしLuluは2009年に食道穿孔(しょくどうせんこう)の診断を受け、その後5回に渡る手術の甲斐も虚しく2014年12月に35歳の若さでこの世を去ってしまいました。

Luluの1stアルバム「My Diary, My Thoughts」に収録された原曲は生バンドによるアップテンポでエネルギッシュな曲調(その他同アルバムにはHouse Mixヴァージョンも収録)ですが、今回のカバーでは敢えてテンポを落とし、Zonkeが2022年にリリースしたシングル「Oko」にも通じる豊かな情感でメロディラインの美しさを際立たせています。アクセントで入るファットで歪みがかったログドラムの音色が程良いスパイスとなっており、どんな呼び方をしていいのか不明ですが「大人版Amapiano風House」ともいえるクールでメロウなアレンジ。姉妹同士で歌手として活躍しながらこれまで一度もレコーディングで共演したことがなかった2人にとって、遂に念願のコラボを果たしたメモリアルな1曲となっています。

今回Zonkeを紹介したのは、亡くなった姉のLuluとの時空を超えたコラボレーションだったのと同時に、ここ最近南アフリカの音楽シーンにおいて個人的に気になっているトレンドでもあったからです。それはZonkeの「LITTLE THINGS YOU DO」や「Oko」のように「HouseともAmapianoとも言えそうなダウンテンポでチルな曲」でかつ「美メロでクールでメロウ」な楽曲に頻繁に出くわす、ということでした。

すでに音楽シーンでは南アフリカの代名詞となったAmapiano。現在も飛ぶ鳥を落とす勢いで世界中に広がり続け、2023年12月にはついに日本の音楽雑誌「サウンド&レコーディングマガジン」でも初めてAmapiano特集が組まれました。

Amapiano特集が組まれたサンレコ2024年2月

そんな流れの中で見過ごす訳にはいかないのが、元々ハイクオリティで活気のあった南アフリカのHouseシーン。勢力を拡大し続けるAmapianoとは明確にスタイルを分けバキバキのHouseをリリースしているDJやプロデューサーももちろんいますが、逆にAmapianoと付かず離れずの絶妙な距離感で融合が生まれていることも興味深く、SONARファミリーでもあるアボかどさんが以前の記事で語っていた世界的なHouse復活の潮流も重ねてみていくと、AfrobeatsやAmapianoだけでは収まらない第三のアフリカンムーブメントがチルでスロウな南アフリカのHouseシーンから起きているように思えるのは僕だけでしょうか。

例えば南アフリカで今一番期待されているシンガーの1人であるMsakiの2021年リリースのアルバム「Platinumb Heart Beating」に収録された楽曲「Uthando Lwam」(プロデュースはDJ Black Coffee)はHouse的ですが、

最近Spotifyの南アフリカTop Songsチャートの上位にも食い込んだKelvin Momoの「Amalobolo」だったり、

Amapianoの象徴たるKabza De Smallらと共作したOskidoの「Amalunde」などは基本Amapiano的なんですがHouseの文脈でもいけそうなラインです。

そんな中でも僕がとても香ばしく感じるのは、例えばEarful Soulの「I Have Dicided」やDJ Staxの「Khanya」などの楽曲で、これらはあくまで往年の王道的Houseの作法に則りながらAmapianoのエッセンスを漂わせてる感があり、具体例を挙げると例えば「I Have Decided」だと通常Houseではハイハットで刻むところをシェイカーに、またHouse的ベースラインをログドラムに置き換えながらもヴォーカルはあくまでど真ん中Houseなところがグッと込み上げてくるのですが、皆さんは如何でしょうか?

というわけで今回は「南アフリカのチルでスロウでメロウな、AmapianoともHouseとも言えそうな曲」を集めたプレイリストを作りました。まったり過ごしたいお正月休みのBGMに聴いて頂き、アフリカ音楽の新しい魅力に触れて頂けたらとても嬉しいです。


そしてそしてそして!
来月2月4日(日)は、日本において最も研ぎ澄まされたAfrobeatsとAmapianoが聴けるクラブイベント「Party No Dey Stop」を新宿Spaceで開催します!詳細は今後X(旧twitter)やインスタグラムで詳細をUPしていきますので、ぜひ一緒に盛り上がりましょう!その前の1月4日21時からはX(旧twitter)のスペースにて、昨年末に募集した2023年のナイジェリアンアフロビーツ・ベストソング&アルバムの発表式も開催予定です。

ここまでお読み頂きありがとうございました。アフリカ音楽キュレーターのアオキシゲユキでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?