ある日突然、顔の半分が動かなくなった

結論だけ見たい人、もし顔面神経麻痺になって心配でなにかすがる藁が欲しい人は「通院治療から回復へ」の項目へ



皆さんは顔の半分が動かなくなったことはありますか?

2024年の1月12日夜、社会人の私は当たり前に仕事が始まり、長期休み明け漸くの2連休にのんきに冷凍ナゲットを揚げてパーティをしていた。
おいしくナゲットを食べ終えて、適当に風呂に入り、気になっていた過去のドラマを1クール10話一気見して、朝の5時に眠りについた。

不健康丸出しだが、休日のルーティンは基本こんな感じだった。好きなものを食べて、ゲームをしたり、ドラマやアニメをみて夜更かしをして朝日が昇る少し前に眠りにつく。
そして昼過ぎ頃に目を覚まして空腹を訴える腹を満たすために昼食を食べるのが当たり前だった。

しかし、その日は何かが違った。
13日の昼、起きてからずっと舌に膜が張ったような違和感があったのだ。下瞼と頬の動きも悪い気がする。
でもほんの些細な違和感だった。
特に気にすることもないだろうと、寝起きに昨晩解凍しておいたふるさと納税のサーモン500グラムを刺身とユッケで食べ終えた。
歯磨きをしながら鏡を見ていると、やはり顔の右半分の動きがおかしい気がする。瞬きがうまくできていなかったり、口角の上りまで悪い。

いやな予感がした私は、急いでスマホで症状をググった。
本当はよくないことだとわかっていたけど、とにかくググらずにはいられなかった。現代病みたいなものだ。
検索画面一番に出てきた文字は「顔面神経麻痺」だった。
ある日突然、顔の筋肉が動かなくなる病気。顔の半分が脱力し、垂れ下がったようになっている患者さんの写真。などなど……とにかくショッキングなものが流れ込んできた。
何とか「早期発見、早期治療がカギ」の文言を見つけ、次の日必ず病院に行こうと眠りについた。

さて、この時点で土曜の夜である。
次の日は日曜。しかも目が覚めたのは日曜の10時だった。
日曜の10時といえば、基本的に病院の受付は終了しており、午後からの診察なんて滅多にない。
1時間ほどインターネットの海を回遊して16時から診察可能な病院を見つけ出し、出発の準備をした。
家から1時間半ほど電車でかかるところだった。

昨晩の残りのサーモンを味噌汁に突っ込み、昨晩よりも悪化した顔の違和感と闘いながら、何とか食事を胃袋に流し込むころには家を出る時間だった。
電車に揺られ、到着した病院には風邪を引いた子供や明らかに体調の悪い人ばかりでどうにも居心地が悪い。が、この時の私の判断は間違っていなかった。
体調は悪くなかったが、私も十分急患だった。


診療開始の約30分前に並んだからか、16時20分ごろには医者の目の前にいた。
簡単に顔の動きを観察されて下された診断は「顔面神経麻痺」だった。やっぱりか、という納得とショッキングな画像が頭の中を駆け回る。
休日診療で自宅からは遠い病院であることから、医者には翌日15日の朝に家の近くの病院で再度診断を受け、即座に治療を開始するアドバイスと処方箋をもらって帰ることになった。
「最後になにかありますか?」
ちょっとだけくたびれたようなお医者さんがなるべく優しく声をかけてくれるのに、震えたまま一つ質問を返す。
「治るんですかね」
顔が半分動かなくなる恐怖がずっとあった。麻痺がない状態でさえ人と会うのに躊躇するくらいルッキズムの思考に侵されている私は、顔が半分動かなくなるどころか、垂れ下がって表情筋を満足に動かせないことにずっとずっと恐怖していた。
「う~ん……正直わかりません。まだ症状が出て1日しか経っていないので経過観察をしていかないことにはなんとも……」

泣きそうになるのを必死に堪えながら支払いをして病院を後にした。
まともに処方箋を交換できる薬局なんかなくて、1時間前に乗ってきた電車を逆に乗り、翌日の病院に目星をつけながらなんとか家に帰ったのだけは覚えている。

新年早々、最悪の気分だった。

顔面神経麻痺であると休日診療で診断されたものの、本格治療となると通院が必要なため、翌日の月曜も家の近くの耳鼻科へと向かうことになった。
朝一で並び、聴力検査と麻痺の進行具合の確認で約1時間。
前日と比較しても明らかに症状が進行し、唇や鼻が動かなくなっていた。診断結果は進行度重度になっていた。
ここでまさかの事態になったのだが、もう外来の耳鼻科では対処ができない状態になっていた。投薬治療にしても、入院にしても大きな病院に行くしかない。しかし今日はもう診察ができないので紹介状を書くから明日大きな病院に行ってくれ。
どんどん目の前が暗くなる。
早期発見できても早期治療からはどんどん遠ざかる。しかも進行がとてつもなく早い。
どんどんと目の前が暗くなった。

結局紹介状を書いてもらう間、点滴のステロイドを打ってもらい帰宅した。

昨日今日そして明日と有給を消費して、しかも入院の必要があるかもしれない。そこまでして治らなかったら?とにかく不安で仕方がなかった。

日が明けて火曜、大きな病院に朝早くから受診し、聴力検査に加え血液検査など午前のすべてで院内スタンプラリーをした結果、かなりそっけない担当医の下した判断は入院の必要なし。薬を飲みつつ通院で様子を見ます。手術も必要ありません。

いやいやいや。それで本当に治るのか?ここに来るまでさんざん治りが悪いかも、入院が必要かもとドキドキしていたのに?

担当医曰く、
・近年治療方法が見直されて点滴の大量投与も錠剤での経口摂取も治療には大差ないことが証明されている
・聴力に全くの問題がないことや、検査結果からも治りはよい兆候である

以上の結果から通院治療で問題ないことが丁寧に説明された。
いったいこの3日間の私の心配はなんだったんだ……と思いながらも、なんだかほっとした気分でその日は家に帰った。

通院治療から回復へ

正直顔が動かなくなってすぐの3日間以降は薬を飲みながら仕事をして週に1度通院の特におもしろくもない日々が続いた。
回復までを簡単に書いていく。

・1日目…顔面神経麻痺の兆候(舌のしびれ、顔の右半分の違和感)
・2日目…顔中心部の筋肉が動きが鈍くなる
・3日目…唇や鼻が動かなくなる
・4日目以降から約2週間…緩やかに症状が悪化してく。下瞼の垂れ下がるような感覚や口角が動かないことでしゃべりにくいなどの支障がある。ただし、目に見えて垂れ下がりがひどいこともなく、黙っていれば麻痺に気が付かない程度。
・2週以降…緩やかに回復が始まる。
・1か月後…ほぼ完全回復。担当医もびっくりするほど元通りだった。
・2か月後…治療終了。

投薬されたのはステロイド、神経を回復する顆粒の薬、ビタミン剤、その他胃薬など

ステロイドの服薬は約2週間で、毎食6錠から始まり3日ごとにどんどん投薬量が減っていった。
大きさは小さいもののとんでもない苦さでとても不味かった。
さらに気分が落ち込む、常に疲れているような気分になるなどいろいろと副作用もあったように思う。
あとなんかすごく眠かった。

神経回復の薬とビタミン剤は2か月間続けていた。神経回復の薬が甘くて飲みやすかった。

通院のほかに鍼灸も効果があるとのことで、一応通ってみたがあんまり効果を実感しなかった。
というのも、鍼治療開始が2週間後だった為すでに回復が始まった段階で始めたこともあり、3回ほどしか試していない。
人によっては効果があるんだと思う。

回復までの間、顔が動かない以外にも右側のフェイスラインの辺りと耳の裏あたりと顎関節がとんでもなく痛かった。大体2週間くらいで納まったものの、顎関節にしては3ヶ月ほど経過した今でも若干痛みがある。ほかに原因があるかも。

関係があるかは謎だが1ヶ月経過後しばらくして左側の眉毛あたりが痛く、頭痛のような状態が1週間ほど続いた。1日目はズキズキと痛む感じで2日目はずっと金槌で左眉を叩かれ続けているような感覚だった。3日目から緩やかになり、時折激しく痛むのが続いた。
眼精疲労から来るものか、他に原因があるのかは不明。現在は回復している。

最後に

顔が動かなくなったら病院に行こう。
違和感を感じたら病院に行こう。
当たり前だがとてつもなくこれを実感した2か月だった。

それから睡眠と食事は大切。
顔面神経麻痺のほとんどが原因不明であるという。
ただ、生活習慣の乱れやストレスによって、体内にもともといる帯状疱疹のウイルスなどが神経を攻撃することで発生するのではないかという話だった。
生活習慣を見直そう。

いつかね。

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