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アメリカ編‐③‐

僕は、女性に質問を投げた。

「あの、ヘビは?」

女性は、少しあきれたような表情で一度俯き、僕の方を見てから答えた。

「・・・さっき、あなたの脇に噛みついたのが ”ヘビ” よ!」

そうじゃない。あきれたような顔をしたのがめっちゃむかついたが、まず毒の事を聞き出したいので我慢だ。まあ、彼女のこの余裕っぷりを見ていると、恐らく解毒剤か何かですでに毒の心配はないのだろう。

「・・そうなんですね。あの、毒は大丈夫なんでしょうか?」

「大丈夫じゃないわ。」

大丈夫じゃなかった。大丈夫じゃない感じをもっと出してほしいものですね。しかし、一瞬身震いがしたが体調は悪くない。毒といっても、とても弱い毒なんじゃないか?そう考えることにした。

「とても強力な毒よ。」

とても強力な毒でした。それはもうすごく嫌な気持ちです。この間祖父が、孫である僕に「孫の顔見るまでは死ねないんじゃ・・」と言った時くらい嫌でした。目の前にいるのが孫だと気づいたらあなたは即死です。それはさておき、毒をどうにかしなければならない恐怖に支配されないように「冷静になれば大丈夫」そう自分に言い聞かせて、もう一度女性に頼ることにした。

「あの、毒はどうすれば・・」

女性は、今度は先ほどとは違った自慢気な表情を見せてしゃべりだした。

「心配はいらないわ!心配したってしょうがないじゃないの!ヘビの毒、心配なのはまあわかるわよ!誰だって怖いわよそりゃ。でもそれがなによ!」

なんだそれ。そんな安い精神論はやめてくれ。そんな言葉を飲み込んで、僕は質問を新たに投げることにした。

「解毒剤はないんですか?」

「解毒剤・・・?懐かしい響きね。」

近年使ってないじゃねえか。もう終わりだ。僕はミシガンまで来てヘビの毒にやられてしまうんだ。

「ふふ、解毒剤なんか使わなくても大丈夫なのよ。」

一筋の光が差し込み、そこにミシガン名物のふきのとうが生えそうな気分でだった。僕は女性の目をまっすぐみて、少し笑顔で答えた。

「え・・じゃあ、僕は助かるんですか!」

「もちろんよ!でも、それをやるには条件があるわ!」

「なにそれ!解毒の条件とは?」

興奮しすぎて大喜利のお題になってしまったのはさておき、早くその条件をクリアして、あの輝いていた頃の自分を取り戻したかった。

「条件はね・・・お前の魂さ!!!」

女性は大声を出しながら僕の方を思い切り指さし、その指は僕の左の鼻の穴に突き刺さった。

つづく。





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