三十路の天使はサンダイルにいた


「ツンデレ」という言葉が台頭してきたのはいつごろでしょうか。

Wikipedia先生にお尋ねしたところ、2002年くらいじゃねーのとお答えをいただきました。2002年。サガフロンティア2が発売されたのは99年4月1日。ツンデレなる言葉が広く使われるようになる4年も前からツンデレツンを張ってきたのがナルセスさんです。

#YOME_LOVE 企画、本日はサガフロンティア2、ナルセスさんのかわいすぎ天使かぶりについてわたくし、ももかがお話します。性質上ゲーム内容のネタバレを含みます。                           また、サガシリーズは極端に情報をそぎ落とし、行間がめっちゃある作品なので、公式設定をもとにした妄想も挟みます。ご了承ください。


♥ナルセスさんとの出会いは2013年4月

サガフロ2をプレイしたきっかけは、サガフロに挫折したからでした。
もともとゲームが苦手なくせに、ロマサガ3、ミンサガをクリアしていい気になり、「よっしゃサガシリーズを全作プレイしよう!」と息込んでいた矢先の挫折でした。サガシリーズって、くせが強いことで有名ジャーン……

しかし、サガフロを引退した私の手元にはプレイ予定で購入したサガフロ2、アンサガが残りました。アンサガは、<説明書が別売りの特殊なシステム>と名高いゲームです。案の定、

挫折に次ぐ挫折。それでも懲りずに二か月後、私はサガフロンティア2のプレイをはじめました。

♡ところでサガフロンティア2とは

ナルセスさんは、二人いるサガフロンティア2(以下、フロ2)の主人公のうちのひとり、新米ディガー、ウィル・ナイツくんの先輩です。

「ディガー」はサンダイルにおけるレジャーハンター的な存在です。ナルセスさんは危険な場所に赴く彼らを護る「ヴィジランツ」をやってます。
ウィル編は、ウィルくんがディガーデビューするから話がはじまります。ウィルくん(15)、コーデリアちゃん(15)、タイラーさん(25)、ナルセスさん(30)の四人パーティーです。この四人で十一年の時を紡ぎます。

ところでナルセスさんはある一定層に向けて、たいへんにハイスペックです。金髪、美人、三十路、ツンデレ、世話焼き、心配性、あまのじゃく、術馬鹿。四人パーティーのインテリ枠にたいへんに弱い遺伝子を組み込まれた私にはひとたまりもない生き物です。もうかわいい。ほんとかわいい。       

見てこのドット、

羽根を失くしちゃった天使かな?(真顔)


さて、そんなナルセスさんの自己紹介を見てみましょう。

そうなんですね。でも行ってないなぁ……

!!!!!超大人げない!!!!!!!

なにそれ!!!!!!かわいい!!!!!!!あんた三十路だろ!!!!!!!!!!仕事を前にしてちょっと我慢とかないんすか!!!!!!つっけんどんだし十五歳も年下の男の子に対してめっちゃわがまま丸出しな言い草だな!!!!!!!!いいのかそれで!!!!!!!!おい!!!!!!!かわいいだろ!!!!


♥そうナルセスさんは三十路なんだ 

フロ2の舞台であるサンダイルの平均寿命はだいたい五十代半ばくらい。三十路のナルセスさんはそれからするとすでに人生半ばに踏みいってることになります。それにしてはおとなげない。

主人公の先輩、パーティーの最年長というナルセスさんのポジションはたいていのRPGだと大人ゆえの余裕で包容~主人公の相談役~みたいなとこじゃないかと思います。がしかし、この人が前述のとおりおとなげない。
受けつけられない人物には歯に衣着せず「気に入らん」パーティー新人加入に際し「こんな新米と組むのか」自分の信条に悖る行動には「外へ出ろ根性叩き直してやる」貴重な植物を独り占めするにあたり手伝ってくれた相手に「私が死ぬまで口外するな」とくる。おとなげない。最高におとなげない。

「ナルセスさんは経験も豊富なようだし」とウィルくんにパーティーに誘われたとき、ナルセスさんはこうものたまい、いえ、おっしゃっています。

「ようだ、ではない。豊富なのだ。」

この、とめどなくあふれる自信家オーラ、ああ、もう、もうね……謙遜一切なし!私は!経験豊富で!!できる術士なんだ!!!!ドヤァっていうね……

人生半ば、もう落ち着いてもいい歳なのにこの言動。少年期には「もうこいつから学ぶことはない」と勝手に判断して術の師匠の元を飛び出したりもしてます。なんですかあなた、もう、もう、かわいすぎる。

だけど十五歳で師匠のとこ飛び出しちゃったのは、もっと自分は上に行くんだ、っていう志の高さゆえじゃないでしょうか。ねえナルセスさん。


♥術馬鹿なあなたが愛しい

サンダイルでは、術が生活のすべてです。料理から洗濯からなにからなんでも術を用います。とにかく術。術ったら術の世界。乱暴に言うと一般人が全員術の上に成り立つ暮らしを送っているわけです。
そんな世界で、あえて「術士」を名乗り、「術士」を職に選んだナルセスさんはそうとうな術馬鹿です。だってべつに職業にしなくったって、術は生活の一部なんだからいつも身近に存在してるわけです。だけど、ナルセスさんはこの道を選んだ。

公式設定資料集「サガフロンティア2 パーフェクトワークス」(以下PW)には、

ナルセスは幼いころから強いアニマ(=術)の素質を感じさせ、周りから神童だと噂されていた。

こんな記載があります。そもそも子どものときから術の才能があったんです。だけど、「神童」と噂されてても、それがほんの幼い子どもだからそう見えてるとか、長じるにつれまわりとレベルが同じになって、たんに早熟だった、という現実に直面することもあるじゃないですか。
「神童」って呼ばれる子には、強さが必要です。現実にぶちあたって、自分が普通だってわかったとき、どうするか。プライドの問題、体面の問題、ほかに得意なことを見つけられるか、このまま続けるか、あきらめるか。「神童」から脱落してしまった子は決断を迫られるでしょう。

という話を踏まえた上で、ナルセスさんのステータスをご覧ください。

次に、ウィルくんの息子、リッチのステータス。

右半分六つが術です。わかりづらいですが赤枠で囲った、資質ありを表す☆マークがついてるのが得意術です。ナルセスさんは三つ、リッチは六つ。「神童」から転落の話をしたのはこのためです。まあリッチは両親が資質の塊なんで極端な例なんですが、術資質三つ持ちは、よくあるステータスです。

でも、同じくPWにはこうも書かれています。

術の研究に生涯を費やしたストイックな術士のナルセス。その皮肉めいた口調とプライドの高さは一級品だが、それは実力に基づいての言動なのが憎いところである。

ステータス上はふつうな感じのナルセスさんを、公式はそう評します。私は、ナルセスさんの実力は、努力の開花じゃないかなあ、と思うのです。
母親の勧め+本人の希望でナルセスさんが術の師匠に弟子入りしたのは十歳。師匠のもとを出奔したのは十五歳。もともと術のセンスがあって、神童って呼ばれてて、でも神童、だから修行時代のどこかで「ステータス的にはふつう」っていうのを自覚した瞬間があるんじゃないか。それで、ものすごく努力して、実力の備わった術士になったんじゃないか。ステータス画面と、「生来の才能と過酷な修行」といった一連のPWの文章を突き合わせてみて、そんなふうに捉えています。

PWによるとナルセスさんが向上心を持ち続けたのは①師のもとで学ぶ楽しさを知った②ろくでなしの父親を見返したいという動機から、だそうです。学問(術)への愛、父親への反感。その他にも「神童」由来の体面を守るためにも頑張ったんじゃないかなあ。安直な言葉だけど自己実現ってやつ。その、果てしない努力の上に、ああいう気位の高い口調だったりプライドが乗っかってて、実力のある術士面してると思うとナルセスさんが愛しくていじらしくてすてきでもう好き。

要約すると見栄っぱりからくる負けず嫌いな努力の人なんじゃないかな。かわいいなあ天使かな?


♥負けず嫌いはプライドの証明

負けず嫌いのナルセスさんといえば、弓です。弓。ナルセスさんは術士なので、基本的に術で戦うのですが、初期装備で所持している武器は弓です。術、つまり遠隔攻撃が広く普及しているであろうサンダイルでは、弓は決して花形とは言いがたい、変わり者の武器です。
変わり者……変わり者……うん……天使だからね……

再び、ナルセスさんのステータスを見てみましょうか。

に☆マークがありません(三段目左から二番目)はっきり言ってこの人弓に向いてないんです。だけど、術よりも高い値、鍛錬の証。向いてないのに弓を選んで、それなりに使えるようになっている。ほかに鍛えている武器は剣。しかし剣は途中で放棄したと思しき、弓の約半分の値です。

おそらく、剣は本人が向き合ってる中途で「向いてない中でもものすごく向いてない」と気づいて、これ以上伸びない判断を下したんじゃないでしょうか。もしくは、ああいう言動をする人です。嫌いだったのかもしれません。剣が。なんか、そういう嫌いなものは嫌いだ私は!!!!!!っていう、白か黒かみたいなとこ、かわいい……子どもか。

で、剣をすっぱりあきらめたナルセスさんだけど、弓に転向したら性に合ってたから続けてる。続けてるのは多少なりとも気に入ってるんだろうし、「ナルセス」という人が己の技能として自認するためにはそれなりの力量が必要です。公式も認めるプライドの高い人ですから。

負けず嫌いとプライドの高さは癒着してると思います。ナルセスさんもまた、この典型といえましょう。ステータスはふつうだけど努力して「経験が豊富だ」と断言できる術力を得、本領以外の才能まるでなしの弓を、それなりにするために頑張ってる。かわいいじゃんそんな顔ぜんぜんしてないのにさあ……

上でナルセスさんは努力の人、と述べてますが、まだまだ本人的には現状に満足しておらず、こっそり、そーっと、真夜中とかに、誰にも見つからないように弓の練習とかしてるような気がします。うっかり矢を片づけ忘れて仲間に見つかって、つっけんどんに知らん、とか存ぜぬを貫き通してるかもしれません。でも、口止めするのも憚られるんでしょう。

負けず嫌いでプライド高いあまのじゃく……天使だな!!


♥ツンデレかつあまのじゃくかつ心配性の世話好きだ

三十路の天使はハイスペックです。ツンデレかつあまのじゃく(ryです。プライド高くておとなげなくて負けず嫌いなので、まあそうでしょうよ、って感じですね。

♡よりぬき世話好きナルセスさん

最初に確認されたツンデレ世話好き発動は、ゲーム開始数分、ウィルくんがナルセスさんをパーティーに誘ったあとです。さんざん嫌なやつだったから行かなかったとか経験が豊富だとめっちゃ主張されたあとです。

ウィルくんは、ナルセスさんのほかに同い年の女の子、コーデリアちゃんもパーティーに誘いました。ここでもナルセスさんは炸裂します。

「おい、そんな小娘を連れていくのか?」

「私だけで十分なのにな。」

でたーーーーーーーーーー!!!!!!!!ちょうおとなげない言動!!!!三十歳男性(経験豊富)が十五歳の女の子(新米)にこの発言!!!おっとなげなーーーい!!!!!! ※おとなげなさすぎて私はここでいつも悶絶します

おっとなげなーいが服を着て術士を名乗ってるナルセスさんですけど、三人で行くと決まるととたんに、

「お前達のような新米コンビはハンの廃墟ぐらいがお似合いだ。私が案内してやろう。」

あっ……ちゃんとおとなだ……(感涙)

性格上そういうことは言われたくないし、言われたら言われたで否定するだろうけど、世話好きの一面をそうそうに見せてくれる、ナルセスさんのエンジェルポイントです。かわいい。かわいいよぉ……


♡よりぬき心配性ナルセスさん

さて、時は流れ、ウィルくんも立派な一人前になりました。

フロ2はずーっと同じ年齢でなくて、年月が経過していくので、このときウィルくん26歳、ナルセスさんは41歳。 四 十 路 !

でっかい仕事がしたいというウィルくんに、ナルセスさんは術発祥の地「ヴァイスラント」行きをすすめます。それはいい、行きましょう!とウィルくん、奮起します。そこでナルセスさん、四十路のコメント。

「私は行かないぞ。」

行かないのーーーーーーーー!!!???

これはウィルくんは当然思ったでしょうし、プレイヤーも思うところです。大事な戦力が、という切実な問題、もうナルセスさん出てこないの!?という深刻な悲嘆、ファン心理。

この歳じゃな、って言うんですよ。ナルセスさん。自分で提案しといて見送るだけなんですよ。ほかをあたるんだなって言うんです。パーティーのおかんポジション、タイラーさんも「人それぞれだ」って言うんです。ああああ、あ、よ、四十路いいいぃぃ……(涙目)

涙目で先へ進みます。ナルセスさんがいない……ナルセスさんがいないサガフロンティア2なんてレンズのない眼鏡じゃない……しかもこの先、ヴァイスラントにいく橋を渡るためには馬鹿高い通行料が必要ってそんな……

とかしょんぼりしてたら、ラベールちゃんって子に橋が渡れないなら下の樹海を通ればいいじゃな~い!ってアドバイスをもらうんですね。お金払いたくないから濃霧立ち込める樹海を選択するんですよ。

ね。

歩いてくの。

ね。


うわあああああああナルセスさああああん追っかけてきてるじゃないですかーーーーーーーーーーー!!!!!

自分で先輩離れしろとばかりに見送ったのに、「無茶しようとしてるな」とかお説教はじめるとか、とか、心配でいても立ってもいられなかったんです????え?????「この歳じゃな」って追いかけてきたの??四十路????追いかけてきちゃったの???まったくもって矛盾した言動だな!!!!!このあまのじゃく!!

これが天使じゃなくて、なんだ(真顔)

ナルセスさん四十路天使は、これが最後と告げてウィルくんとともに、一歩手前の街まできてくれます。ヴァイスラントは、極寒の地です。ナルセスさんはそこまではいきません。

理由は……かわいいなあ。ナルセスさんはかわいいです。


♥ツンデレあまのじゃく負けず嫌いプライド高いけど、天使です

と、いうような塩梅で天使ながら一筋縄ではいかないナルセスさんですが、ひとを褒めるときは、きちんと褒めてくれる人です。長らく一緒に戦ってきたタイラーさんを「タイラー、お前は本物の男だなー」とストレートに讃えたり、ウィルくんを「人の意見がきちんと聞けるやつ」と言ったり。大事なとこではちゃんと言葉にしてくれるナルセスさん。いい先輩だ……(たぶん)(あまのじゃくだけど)

PWにですね、「人間関係に妥協できない」「術士仲間から浮いた存在」って書かれてるんです。この人。でも、そういう人が、ウィルくん、コーディーちゃん、タイラーさん、っていう固定の四人で十一年も寝食をともにして旅できたこと、褒めてあげられるまでの関係になれたこと、すごく幸せだろうなあってしみじみ思います。
サガフロンティア2は、歴史が進んでいく、まさに時間のように止まることのないゲームです。その約百年の中のたった十一年なんですけど、ナルセスさんがナルセスさんのために磨いてきた技術だとか、プライドだとか、ナルセスさんたり得ているものを仲間に還元できた年月なんです。パーティーから離脱したあとも、一生独身を貫いたナルセスさんにとって四人で戦い抜いた十一年が幸福の象徴であればいいなあ、と願ってやみません。


♥おわりに

ナルセスさんと出会って一年八か月。数年ぶりに二次創作で同人誌を作って、イベントに出て、なんだかいろいろな方に引き合わせてくれました。さすが天使です。縁結びもできます。

今回この文章を書いて、かわいい、天使、と常日ごろ悶えまくっていた価値観のなかに、「この人かっこいい人だな」というのが加わりました。公式情報が少ないので補完を多分に含むんですが、自分の中の「ナルセスさん天使すぎる」を明文化できました。参加してよかったなあと思います。ははあ、ナルセスさんはかわいいなあ……

かわいいの思いのままに書いたので長くなってしまいましたが、ここまでおつき合いくださった方、ありがとうございました。ナルセスさん、およびサガフロンティア2に少しでも興味をお持ちいただけたら幸いです。

最後に、最後に、これだけは言わせてください。




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どうぞよろしく……



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