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ノベルマガジンロクジゲン

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むつぎはじめの書いた小説が読めるマガジン。 メインはSFというかファンタジー。
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2019年6月の記事一覧

暗洞に声よ響いて #9

【最初から】 【前回へ】 そして、行く先々で既に狩場が使用され、やんわりと向けられる(ここ使ってんですけど)オーラに抗えず退散を繰り返し、さりとてダンジョン自体から出ることは出来ず、その結果私は第5階層にまで来てしまっていた。 『この階層より上に行くと、一気に敵が難化するようですね。今の装備では攻撃が通じない場合があります』 「このフロアで狩場を見つけたいなあ」 元々はボスが設置されていた”区切り”の階層らしい。さっき調べた。 その時、ドゴン! という音と共に、いかにもフ

商人と海。あと亀とエルフとレールガン #2

前回へ 「戻ったぞ。こいつが新しい仲間、カメお(仮)だ」 「ネーミングダッサ! あ、岩塩2ケース追加で」 相変わらず息を吐くように口の悪い奴だ。仕入れを続けるコマい小僧の横に飛び降りると、仕入れリストを頭越しに眺めながら長い耳をビロビロと引っ張ってやる。 「俺は誰だ? 荒野でノビてたお前の命を救ったのは?」 「アイダダー! それ禁止。それと……それを言われたら何も言い返せないじゃない、旦那さん」 その通りだ。 「うーん、この精霊結晶はもう一声負けられないか。その代り量を増

商人と海。あと亀とエルフとレールガン #1

「小僧ォ!! 左来たぞ!!」 「わかってるわよ! あと小僧じゃなくてメアリー!」 「うっせえ早く撃て!!」 「マイクでうっさい! 速く走らせなさいよ!」 キュウウーン…… 「いいのよジェイク。あなたは悪くないわ」 「右ィ!!!」 「うるさーーーーい!」 ディアボレアス街道ど真ん中。俺と小僧と新入り兼新車のジェイクは、流行りのロケットシーフとコロシアイと洒落こんでいた。 ▲ 2日前。 「こちらが機体になります。FCS……火器管制システムの定着が上手くいってないだけなんで

魔族砦で放課後を #1

「砦を取りに行こうよ!」 ふわふわの髪を跳ねさせて、せんちゃんが例によってそんなトんだ発言をしたのは、私達が放課後の部室で『各々猫動画を見て最強の猫動画を決める決定戦』をしているときだった。 「ゑーと……最初から話して」 指をくるくる回しながらよーこちゃんが言う。なに? その仕草。 「えとね、BGのハウジングシステム? ってのがあって、その一環でフィールド上の施設を奪える機能があるんだって! 昨日から」 「え、できるのそんなの。そういうのって普通エンドコンテンツじゃない?」

暗洞に声よ響いて #8

最初から 前回へ 実装前から新要素獲得競争の戦いは始まる。けして先走って実装前なのにダンジョンを走り回ってたというわけではないのだよ。 そうしておよそ一日かけて探し回った結果、試練の塔5階が件の新アイテムドロップイベントが発生するんじゃないかと目星をたてた。詳しく言えば、このフロアの隅にある、【崩壊領域】と呼ばれる塔オブジェクトが倒壊したmob無popエリア。前から何かあるぞ何かあるぞと噂されていた場所で、10年かそこら経ってようやくの実装だ。 BGの運営は人ではない。

ダンジョンに装甲変身ヒーローがいていいのだろうか#3(終)

前回へ 『アーマーの強化にあたり、まず関連スキル【装甲服作成】を取得してください』 「追加で? 痛いな」 『コストは最低です。今のところ』 ほんとだ。1ポイントだ。実質タダ。 取得済みスキルに関連するスキルはコストが跳ね上がる【調整】がされている場合があるので、このコストは破格だ。今後何らかの情勢変化……このスキルセットが大人気になったりしたら……スキル取得・育成に必要なポイントが【調整】され、所要ポイントが跳ね上がってしまうのだろう。 『次に装甲を解除して、ウインドウを

ダンジョンに装甲変身ヒーローがいていいのだろうか#2

前回へ 「うわ、速っや」 普段は命中回避の判定に使われるだけのステータスが実パラメーターとして反映され、一足で数メートルを跳ぶ。遺跡の敵エリアへはあと数歩。敵の反応がうっすらと赤く視界に映る。この調子なら壁走りすら出来るかもしれない。 『おはようございます。戦闘行動を開始しますか?』 その時、耳元で聞き慣れない女性の声が響いた。 「えぇ!? だれ!?」 『付属型戦闘支援AI、リリイフラワーです』 思わず尋ねる俺の問に、リリイフラワーとやらは涼しく甘い声で自己紹介をする。そ

ダンジョンに装甲変身ヒーローがいていいのだろうか#1【W.B.G番外編】

565>>【朗報】なんだかよくわからんが「装甲変身」とかいう新スキル覚えた 566>>この書込みは削除されました 567>>またまたご冗談を 568>>嘘乙 569>>この書込みは削除されました 570>>新実装かな?新スキル久しぶりだね 新実装でした。 ■ ダンジョン【月遺跡】表面層。 新しく覚えたスキル、【装甲変身】を試すべく、俺はこんなとこまで来ていた。特段旨味のないmob構成、そして操作しづらい低重力設定。が、今日は関係ない。なにせオールコントロール強制スキルな

素晴らしき大事業 【NoteパルプマガジンMexico】を褒める

先日、この様なマガジンが発刊された。 遊行剣禅=サンと桃之字=サンがうんえいする大事業である。 拙作も収蔵していただき感謝の極み。 何がスゴイのかそれを説明するには発端の非note公式超規模企画第1回逆噴射小説大賞に遡る。400文字の書き出しでメキシカンスタンドオフする真の漢(魂の性別)のイベントだった。 このイベントは凄まじい数のパルプスリンガーを発掘し……本当にどこに潜んでいたんだこの連中?……実際おれの創作における再生を促してくれた。 この企画は【ほんやくチー

暗洞に声よ響いて #7

最初から 前回へ 然程ひどい顔はせずに、家に帰って来れたと信じたい。 『お帰りなさい、レイコ様』 「うん、只今」 キッチンに買い物の袋を置き、また水を飲む。今度は水道水だけど。 『お食事のあとは、ダンジョンに行かれますか? それでしたらまた次の攻略情報を……』 「今日は、もういい」 『……左様ですか』 サンデイがなんだか少し嬉しそうだった気もするが、気のせいだろうか。だが、私は無性に”れいん”になりたい気分だった。 「ご飯食べたら、シャワー。その後、収録する。第十回の前