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善行の記 児童の服を拾う

待ってくれ。俺は犯罪者じゃねえ(挨拶)

事の始まり

最近気候も好くなったので、仕事の昼休み、職場の近くを散歩するようになった。
以前もどこかで書いた気がするが、俺が嫌いなのは飽くまで体育の授業であって、実はそこまで運動は嫌いじゃないんじゃね? と改めて思っている。極々軽い運動だが、しないでいると身体がタルい気がしてきて、携帯だけ持って公園に行ったりする。

公園で見つけた

で、だ。
今日近くの公園に行ったところ、ベンチに黒くて薄い何かがあった。近づいてみると、服だ。しかし、随分小さい。そして、少しだけ汚れている。
推測するに、地べたに落ちていたそれを拾ってベンチに置いた人物がいたのだろう。割と丁寧にたたんでいた。
善意である。

善意であるなら、それを継いでみてもよかろう。

見てみると、その名札の学校は、この公園の最寄りではない。それどころか、何個か離れた学区のものだ。車でも10分か15分ほど離れている。理由は不明だ。この理由は最後まで明かされません(ネタバレ)。
また、苗字の一文字目以外、緑の羽根で隠されている。
最近の防犯意識だな。と思いつつ、学年と組までは確認させてもらい、小学校に連絡を取る。向こうも昼休み……だと思っていたが、小学校のタイムスケジュールはもう思い出せないことに今気づいた……まあともかく、数コールもしないうちに電話がとられ、優し気な男性の声が響いた。

伝える。自分の身分と事の次第。そして、すぐ隣に公の施設があるので、そこに預けておくという事を。

何分、職場というのはいつでも居るものでもないし、加えて自分も外出が多い。しきりにお礼を言う小学校職員(事務員か、教員か)の様子には、事務的で淡々とした反応を予想していた俺の気持ちを良い意味で裏切り、安らがせた。

施設へ

さて、その施設というのも、この周辺の公民館というか寄り合い所というか、そういう存在だと思うのだが、結構デカい。デカいので、ちゃんと受付があるのだ。
いや、あるのだ。と言うが、受付があることを俺は特に確信せず何とかなるやろの心で来ていた。無かったらどうするつもりだったんだろうか。アホだなこいつ。

一応弁明しておけば、複数ある施設利用のスケジュール割り振りなんかがあるから、無いわけが無いのだが。いや……しかし……
まあいい

結果として受付にいた男性に再度事の次第を説明し、申し訳ないが取り次ぎをお願いする非常識を詫びた。だが、この職員もまた、一切自身の職務に関係も何もないハズであるのに、ありがとうありがとうと礼を言ってきた。

意外と、この世は生きるに値するな。
と、爽やかな気持ちになりつつ、大汗をかきながら昼休憩を四分ほどオーバーして職場に戻るのだった。

【おわり】

資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。