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YOASOBI Tiktokライブレポ-2年を経て、完全体での披露-

2021年、コロナ禍で大きく世に知れ渡ったYOASOBIは、ミラノ座跡地(建設中の歌舞伎町タワー)にて初のオンラインライブを行い、無観客の中でもレーザーやスモーク、ドローンを駆使して迫力のあるライブを画面越しの視聴者に届けた。そして2023年、2年の時を経て歌舞伎町タワーが完成。今回はそのこけら落としライブであり、前回と大きく違うのはステージのすぐ先に多くの観客がいること。歌舞伎町タワーはライブハウスさながらの近さであり、最前だとメンバーの呼吸感をも感じ取れそうだ。
ステージには、初のオンラインライブからずっとライブ現場を回っているYOASOBIオブジェがぐるりと配置されており、YOASOBIの思い出が詰まっているものだ。
20時を周り、YOASOBIメンバーが登場。
レーザー光線のような激しい音と共に、『祝福』でライブはスタートを切る。Vo.ikuraの歌声は透明感がありつつもメロディの迫力に負けず、颯爽と駆け抜けるように絶妙にマッチしている。
派手に幕開けし、次に演奏されたのは代表曲『夜に駆ける』だ。跳ねるようなピアノとベースに乗るAyaseの手拍子に合わせて観客のクラップが鳴り響き、ストーリー性を持たせたikuraの歌声が飾る。ライブでは全員がたのしめるポップチューンとなるが、リズミカルでありつつも切なく、胸が締め付けられるような感覚になる。
続いてスリリングなイントロで『セブンティーン』のスタート。早口の部分でikuraは黒いものを吐き出すように屈んで歌っており、それがとてもかっこよかった。また、Ayaseは「残酷な悪魔が鳴いている」の部分で銃を撃つ素振りにてPVを再現したり、Key.ミソハギザクロは笛を吹いて参戦したりと、個々でその場その場を楽しんでいた。テンポが速く緩急激しい曲だが、ikuraの伸びやかな歌声は全くぶれず、さすがともいうパフォーマンスであった。
ここでMCを挟み、歌舞伎町タワーのオープン記念を祝してみんなで乾杯をする場面。2年前も初ライブ記念の乾杯をしており、その時はikuraは飲み物の中身を確認する前に飲んでしまっていたが、2年経って自分の飲み物を確認するように成長したとのこと。
ほっこりしたコーヒーブレイクMCを終え、
Ayase「2年前は歓声を聞けなかったからね!」
ikura「全力で楽しんでいきましょー!」と客席へ呼びかける。
ここからは『ハルジオン』、『たぶん』と続き、エモーショナルな空間に浸る時間となる。
『ハルジオン』ではBa.山本ひかるはベースを置きキーボードへ、Gt.AssHはエレキからアコギへと持ち変えられており、この2人のコンビの音はラスサビ前のソロでとても心地よく鳴っていた。『たぶん』ではikuraは椅子に座り、全員が向かい合って円になりアンサンブル形式で演奏。ikuraの歌声が最も前面に出る曲であり、しっぽりと聴き入るタイムであった。ikuraの「では最後は皆さんで締めましょう」という合図で、何人もの指パッチンで曲は締め括られた。
ikura「ここは青空です!皆さん自由に羽ばたいてください!」この言葉で始まるツバメが個人的にとっても良かった。どう生きて良いか迷い悩んでいる時にツバメを聴くと、「あぁ、自由に生きてて良いんだ」と安心感を与えてくれる。 ikuraは手を鳥の羽ばたきのように左右へ仰がせ、山本ひかるはキュートに、雛の飛ぶ真似をしていた。観客もサビで手をウェーブさせ、大空の開放感を味わい、自由に空中を泳いでいるようだった。
ここで配信ライブの醍醐味であるコメント読みタイム。「ikuraちゃんのお団子がどんどん増える」「Ayaseかっこいい!」などのコメントが目まぐるしい速さで流れていき、ikuraとAyaseはこれらに答えていく。なんとこの時リアルタイムで10万人もの視聴者がいたのだ。夜に駆けるから始まったYOASOBIの楽曲は、これだけ大多数に支持されているのだと改めて実感した。

コメントタイムが終了し、ホラー要素のあるライティングとBGMで怪しい雰囲気へと一転。「まだまだ盛り上がれるかー!」のikuraの掛け声と少女の叫び声にて『怪物』のスタート。ここから後半戦だ。
曲の高揚と共に暴れる楽器隊の音とライティング。自身の中の理性と、怪物のような本能との葛藤が感じられ、楽曲の世界観がステージ上で繰り広げられる。ラップ部分では「ヘイッ!ヘイッ!」の観客の掛け声が加わり音源が完全再現されていた。
怪物が終わり、さっきまでの赤いライティングは青へ、水中を思わせる真っ青な空間へと一変した。そして、爽やかで切ないピアノのメロディ。次に来るのはTHE FIRST TAKEでも話題になった『群青』だ。
客席の盛り上がりを見て、Ayaseは「やっぱライブって最高だな!!ここは間違いなくライブハウスだ!」と感激の思いを叫び、メンバーのボルテージも最高潮近くまで上がっていることが分かる。
ライブで群青を演奏する時、ikuraはステージ上の各バンドメンバーの元へ行きセッションをする場面がある。仲間との演奏を噛み締める青春の1ページを見ているようであり、もがきながら夢へ向かう、青さを感じる歌詞とメロディがより心に響いてくる。ラスサビ前にikuraの絞り出すような歌声から、失敗を恐れずに進む強い意志のかけがえなさに気付かされる。そして、「知らず知らず…」のコーラス部分は2年かかってようやく観客の声を入れて完成体ができあがったことにも感動だ。
時間はあっという間であり、この時点でもうラスト2曲とのこと。トリ前に演奏されたのは、『アドベンチャー』。真っ青な空間から、クラッカーが鳴らされお祝いするような、そんな幸福感溢れる色とりどりの空間に早変わりだ。この曲は思わず皆笑顔になる 、USJのために書き下ろされた曲である。しかし、行けば笑顔になり心を満たしてくれるライブハウスをも連想させた。もちろん、エンターテイメントで楽しませるだけでなく、とっても幸せな気持ちにしてくれる YOASOBIのライブも思わされる。ハッピーなラストに向けて冒険が始まることを予感させる雰囲気で締めくくられ、ラストは何が来るのだろうか。
レクイエムのようなSEが鳴り響きTiktokライブのトリを飾るのは、アニメ「推しの子」OPの最新曲『アイドル』。曲の入り方から、これがアイドルをテーマにした曲だとは初見では想像し難く、筆者も聴いた時は戸惑いとゾッとする感覚になったのを覚えている。Ayaseの斬新なセンスには毎回驚かされる。推しの子ではアイドルのキラキラした世界と闇深い世界の両方が背景にあるが、それと物語の重要人物である星野アイを絡めた内容を、3分半の音楽で見事に表現しているのだ。
ikuraは明の部分ではキュートに、暗の部分では病み要素満載で歌っておりとても引き込まれた。そして観客はピンク色のペンライトを高く振り上げ、「オイッ!オイッ!」と見事なアイドルオタクっぷりが出ていた。アイドルはライブ映えが大きく、現地で生のパフォーマンスを見たら確実に心揺さぶられる曲だ。これからのフェスシーズンでもハイライトとなる曲間違いなしだろう。
全10曲を大盛り上がりで演奏し終え、TikTokライブは終了となった。現地で生ライブを見ても、配信を見てもこれが全部無料だったのは大サービスであり、贅沢な1時間だった。本当に素晴らしいライブで、ステージや画面に吸い込まれる様に見る人が多かったのではないだろうか。
現在YOASOBIは絶賛アリーナツアー中であり、演出もすごいことになっているとのこと。コロナの規制が緩和され、自由に楽しめるライブシーンが戻ってきた。これからYOASOBIは確実に、更に大きく化けていく。来年には、新たに斬新な曲やライブをするアーティストになっている予感しかなく、今後もとても楽しみだ。

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