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香港の電子決済サービスの連携(香港非居住者向け)


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中国大陸では支払いの方法として支付宝と微信支付の2つがあれば他はほぼ不要になっていますが、香港では八達通(Octopus)が普及しているというものの、現金を含めて、他の支払い方式を組み合わせなればいけないのが実情です。

2018年9月30日に 香港金融管理局(HKMA)により、FPS(Faster Payment System)がサービスが開始されました。FPSは、香港の銀行や、Alipay、WeChatPay、Octopusなどの電子決済サービスを相互に接続し、相手の口座番号がわからなくても、電話番号、メールアドレス、FPS Identifierのいずれかが分かればリアルタイムに送金を可能とするものです。

このFPSを活用し、各電子決済サービスの間で送金を行うことにより、バラバラな電子決済サービスを連携させ、香港での支払いをより一層便利にすることが可能となります。

ただ、決済サービスでFPSを使うためにはHKIDによる認証が必要な場合もあり、香港非居住者が自由に使えるというわけでもありません。香港非居住者でもどこまでできるのか、私が調べて試した範囲とはなりますが、ここにまとめてみました。

冒頭の図はこの記事のサマリーとなっています。私はHSBC香港の口座を使っていますので、銀行のところにはHSBCのロゴを入れています。

1. 香港の電子決済サービスについて

まずは香港での主要な決済サービスについて簡単に説明します。

1.1 Octopus(八達通)

Octopusは、香港のMTRをはじめとする主要な公共交通機関や店舗で使用可能なNFCのICカードによる決済手段です。香港で1997年より正式に導入され、公共交通機関の乗車カードとしては、世界で最も早く日本のSuicaよりもソニー開発の非接触型ICカード規格"FeliCa"を採用してます。香港を訪れる人は必ずといってよいほど使っているでしょうから、ここで詳しく説明する必要はないと思います。1つ付け加えるならば、スマホのOctopusアプリを使うとOctopusの決済サービスであるO!ePayと連携することができるようになります。
[現金での入金]
7-Eleven等の店舗やMTR駅で入金ができます。金額はHKD50の倍数である必要があります。
[FPSでの送金]
Octopusアプリ上で、O!ePayを使うことにより他システムへの送金が可能ですが、O!ePay Plusへのアップグレードが必要です。

1.2 O!ePay(好易畀)

スマホのOctopusアプリに入っている機能で、AlipayHKと同様のQRコードによる決済サービスです。NFC付きのAndroidスマホを使うと、O!ePayの残高をOctopusに移したり、その逆もできます。
[現金での入金]
7-Eleven、收銀車、恒安市場で入金ができます。まだサービスが始まって間もないためか、入金できる場所は少ないです。金額はHKD50の倍数である必要があります。
[FPSでの送金]
インストール後のLiteのグレードなら入金のみ可能で、グレードがPlus以上で出金も可能となります。Plusへのアップグレードにはパスポート情報等のアップロードが必要。日本でアップグレード手続きをしようとするとHKIDしか入力が出来ませんが、香港のIPアドレスを使うことによりパスポート情報も入力可能となります。
[eDDA(electronic Direct Debit Authorisation)]
Plusへのアップグレードで利用可となります。金額は入金$50以上、出金$500以上なのでFPSに比べると使い勝手が悪いです。単なる資金移動ならばFPSで十分利用可能で、eDDAは使う必要はないでしょう。

1.3 AlipayHK(支付寶香港)

Alibabaが香港で提供しているAlipayの香港版です。大陸とは異なるアプリで提供されています。大湾区に限りますが、中国大陸でもスマホのQRコードを店に読み取ってもらう方法で支払いが可能になっています。
[現金での入金]
7-Eleven、Circle-K、Watosons等で入金ができます。金額はHKD100以上で、HKD50の倍数である必要があります。
[FPSでの送金]
ID VerificationがIntermediate(パスポートによる認証要)以上になれば利用可能です。

1.4 WeChat Pay HK(微信支付香港錢包)

大陸と同様にWeChat Payですが、人民元のウォレットではなく、香港ドルのウォレットを使います。香港ドルのウォレットを作成するには、最初からWeChatのアカウントを香港の携帯電話番号を使って作るか、既存のアカウントに対して他の香港ドルウォレットを持っている人から香港ドルを送金してもらえばウォレットが作成されます。いずれにしても、香港ドルのウォレットを作成するためには、香港の携帯電話番号が必要となります。

[現金での入金]
7-Eleven、Circle-K、McDonald's、Coin Cart(收銀車)で入金できます。7-Elevenだと$1単位で入金できます。
[FPS]
FPSを使うためには、HKIDによる認証が必要ですので、香港非居住者がFPSを使えるようにすることはできません。ただ、リアルタイムではありませんが、銀行への出金はできますので、銀行経由で他システムへの送金が間接的に可能です。


2. FPSによる各決済サービス間の相互送金

第1章で、各決済サービスについて説明したとおり、FPSを使えば、O!ePay、AliPayHKの間でFPSにより相互に送金可能です。送金先の指定として、O!ePayはFPS IDが割り当てられているのでそれが使用できますが、AlipayHKにはないので、送金先を電話番号で指定することになります。


3. 現金との組み合わせた使いこなし

日本と同様に香港では現金の併用が必要ですから、現金を決済サービスに出し入れできると、使い勝手が非常に増します。

Octopus/O!ePay、AlipayHK、WeChat Pay HKを現金を入れる入り口として使い、各システム間で送金を行えるようにすることが求められます。

WeChat Pay HKに関しては、HKIDがないと最低限の認証も出来ないので、FPSは全く使えません。銀行口座と組み合わせれば、WeChat Pay HKに店舗で現金を入れてから、銀行に送金するという手がとれます。銀行口座がない限りは、他のシステムとは完全に孤立しています。

私の場合、以前だと香港旅行で余った現金は、そのまま持ち帰るか、HSBC香港のATMで預ける($100以上の紙幣しか受け付けてもらえない)かしていましたが、最近は、OctopusやWeChat Pay HKにコンビニでチャージして、その後から銀行に戻すという方法に変えました。いちいち入金可能なATMに行く必要がなく、小銭がすっかり片づいてしまうので楽です。

チャージする金額によって以下のように使い分けるとよいかもしれません。

$50以上($50単位):
Octopus(またはO!ePay)にチャージ。総額が$100を超えるならばAlipayHKにチャージするのも可。

$50以下の端数:
WeChat Pay HKにチャージ。銀行口座があるならば必要に応じて銀行へ引き出し(Withdraw)。


最後に

香港には決定版といえるキャッシュレスの決済サービスがなく、現金の併用が必要です。Octopusが最もよく使えて、AlipayHK、WeChat Pay HKがたまに使えるという程度です。Octopusを中心に使い、AlipayHKやO!ePayを使って、お金を効率的にOctpusにチャージするしてつかうのがよいと思います。そのために、この記事が皆さまのご参考にあれば幸いです。

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