大丈夫、もうなんにもうらやましくない。

「いつもつまらなそうだね。」「なんでそんなに大人なの?」

小さい頃からそう言われながら育った。今でももちろん言われるこの言葉たちについて改めて考えるよになったのは、私が「なんでそんなに大人なの?」の「大人」に近い歳になったからだ。

小さい頃は、いつも隣の青い芝生ばかりを眺めていた。楽しそうにはしゃぐ同世代とか、誰にでもわがままを言える友達が本当にうらやましくて、でも私は今もそれが出来ない。

食べ物の好き嫌いを聞かれると「にんじん」と答える。大人になると好き嫌いはなくなると言うけれど、私の好き嫌いは増える一方だ。だって、普段は大抵のことを許せて、だいたいのことは何でもいいと思っている私にもわがまま言えるチャンスくらいあってもいい。

だからこれは、大人になっても私だって「みんなみたいにわがままを言いたい」という私のわがまま。そう、せめてものかわいいわがまま。


自分から楽しそうな輪に入っていくのが苦手な私を作り上げたのは、幼少期のバックグラウンド。

小さい頃に転校を繰り返したり、入院して病弱で学校を休んだり、それでも体調がいい日に学校に行くと、いつも仲よさそうにしている友達がいて、感じる疎外感は今も胸の奥につかえる苦痛として残っている。私が学校を休んだ日にあった楽しかった出来事を友達が話してくれても、その面白さなんて分からないから「どうでもいいや」と笑う。

それでも、みんなの「楽しそう」がうらやましくて「いいなぁ」と眺めている私の顔を、みんなは「つまらなそう」と言うのだから、やっぱり私はその輪にいなくてよかったな、と思い知らされる。

だから小さい頃から一人でいる方が好きだった。好きとういよりは「楽」という感覚に近い。私のことを好きと言ってくれる男の人がいると、一人が好きだからあなたの好きに答えられなくて消えたくなる。そうやって恋すらもおざなりにしてきた。


それからはるかに時間が経って、今でも同じように一人が楽だなと思うことはある。同じようにつまらなそうな顔をしていると言われる。

けれど、一つだけ変わったことといえば、私は最近になって「人生は楽しい」ということを知った。他人の人生をうらやましがる暇なんてないくらい今、私は自分の人生が楽しい。

小さいころから人のことをうらやましがる癖が治らなかったから、自分が好きでもないくせに人のものを欲しがったり、たいして興味もないのにみんながやっていることを真似したりして生きてきた。好きなんてなれやしないのに「愛されたい」とおこがましく恋をした。

そのおかげで、時間はかかってしまったけれど、うらやましがりながら生きているうちに本当に自分が好きなものを見つけて、好きになれる人に出会って、いまではそれに囲まれる幸せな生活を送っている。

輪に入りたいとつまらなそうな顔で眺めているのではなく、自分で大きな輪っかが作れるくらいたくさんの大好きな仲間に出会った。なんでもいいじゃなくてこれがいいんだ、と遠くにあっても指をさして大きな声で叫ぶほどの情熱を捧げる好きが出来た。

大好きな本も、大好きな一人旅も、気づいたら朝な魔の飲み会も。恋はしてないけど、それと同じくらい幸せだと思える人たちがいてくれて。人生は、好きだけじゃ生きていけないけど、好きがないと生きていけないのだと思う。

インスタグラムに映るキラキラしたネイルも、ストーリーで昔好きだった男の隣に映る可愛らしい女の子も、行ったことのない異国の地について得意げに話す人たちも。もうなんにもうらやましくない。

辛いことも悲しいことも他人がうらやましくて仕方ないときだってあるけど、あなたにはこんなにもたくさんの好きがあるでしょ。

だからほら、大丈夫だよ、昔の私。もうなにもうらやましくない。

あれだけ言われるのが嫌だったあの言葉たちの裏側には、全てが楽しさや幸せで満たされているから全てがどうでもいい、が隠されているのだと思う。

だから、いま他人がうらやましくて仕方ないあなたもきっと見つけられるよ。他の誰でもないあなたの好きがきっとある。

大丈夫、もうなにもうらやましくない。


小さい頃はあんなに夏生まれがうらやましかった私にも、もうすぐ毎年歳を重ねている春がやって来て、大好きな季節にまた少し大人になる。


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