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page 16 Story of 永遠




パタパタと二階から降りて来た先生はふんわりとしたブランケットを優しくかけてくれた。


  美月「少しでも温まるといいんだけど…」


フワフワのそれは彼女の香がして別の意味で熱が上がりそうになる。


  永遠「空の写真…沢山有るんですね…」


マネージャーとの話し合いでリビングに通された時に一番に目に入ったのがこの無数の額縁だった。


  美月「それは…主人が撮ったもので…
    彼は空の写真家だったんです」


ティーポットにお湯を注ぎながら彼女は目を伏せた。

コポコポとお湯の注がれる音だけが辺りに響く。



   永遠「あ…猫飼ってるんですね…」

ソファーの上に真っ白い毛玉のように丸くなった猫を見つけて俺はそう言った。


永遠「そっか。
先生の飼ってる猫だったんですね。
元々俺、この猫のお陰でピアノ教室の場所を知ったんです」


        美月「え?」


話題を変えたかった俺はわざと明るい声でそう言って、あの雨の日にキンピラに出会った時の事を話した。


ふと何気なく言った話題だったのに彼女は物凄く驚いて俺の顔を見た。


  美月「榊さん、ここへ案内されたんですね」

  永遠「え?、案内?この猫にって事?」


    
彼女はふふっと笑ってから「キンピラに案内されたとも言うし、必然的な計らいから案内されたとも言います」と呟きながらマグカップを手渡してくれた。


       永遠「キンピラ?」

美月「あ、ごめんなさい。説明不足ですよね。
この子はキンピラという名前なんです」

永遠「はぁ。猫の名前がキンピラ?
 あの、金平牛蒡のキンピラですか?」

美月「そう。金平牛蒡が謎に大好物なので」

永遠「は?、猫って金平牛蒡食べるんですか?」

       確かに謎だ。

美月「あまり身体に良くないから少しだけにしているんですけどね…何故か好きみたい」

永遠「こんなにフワフワの洋風な猫が和食?」

美月「あ、因みにキンピラの種類はチンチラですよ」

永遠「チンチラの、キンピラ?」

美月「はい。チンチラの、キンピラですね」

       永遠「え」
       美月「え」


  一瞬の間を置いて二人で笑った。


こういう話は全くした事が無かったから物凄く楽しかった。

レッスンで見せる顔とはまた違う青井先生の少女っぽい表情に気持ちが緩む。



永遠「ちょっと話を戻してもいいですか?」

美月「はい」

永遠「さっきの、キンピラに案内されたって言う話、もう少し詳しく聞きたくて…」

美月「あ…、そうですよね。気になりますよね」

永遠「かなり」

カップをコトリと置いてから少し間を置いてから青井先生は話し始た。



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