夢のあと~エピローグ~
「…ッ!」
――跳ね起きた。見知った天井。
――空閑紗陽。高校二年生の17歳で、誕生日は7月12日。身長は160センチ代後半でスラっとした体型、色の白い肌と真っ黒なミディアムショートが和風の…そういえば。
「そういえば髪…」
染めたんだっけ私。
カーテンを開ける。冬の寒い朝だ。吐く息が白い。
ホットココアを片手に、寝ぼけ眼を擦る。
今私は高校二年生の冬にいる。もうすぐ真っ白な冬が終わり、碧く萌える春が来る…なんちゃって。
「似合わないよねー…んふふ」
ふと疑問に思う。何でもない長閑な日曜の朝。いつもより少し、感傷的になっている気がする。なんでだろ。今年の秋から成績が急転落を起こしたせいで、メランコリーになっている
のだろ
う
か
な
涙が止まらなかった。よく自分でもわからない。理由のわからない涙が流れて止まらなかった。なんでだろう。
とても長いような、短い旅に出ていた気がするからだろうか?
何かとても大切な事を、忘れてしまったような気がするからだろうか?
自分が泣いている事がわかると、
もっと悲しくなった気がした。
「――紗陽?起きた?どうしたの?」
そうだった。
昨日は進路の話等をしつつ、友人と通話してる最中に寝落ちしていたのだ。
「ううん。何でもない」
「嫌な夢でも見た?」
「いや、な…夢…じゃなかったよ。皆優しかった」
「また会えるよ。きっといつか」
「そう…かな…?うん、そうだといいな。とても長い夢だった気がするし、とても短い夢だった気もする…凄く怖くもあったし、凄く簡単な夢だったような気も…」
「紗陽、今から受験のストレス感じてたら持たないよ?大丈夫!紗陽なら、出来るよ!私が教えてあげます」
「シノちゃんに家庭教師やってもらえれば鬼に金棒だね。何なら学校サボって一日図書館でそれでも良い」
げ、そういえば今日は図書館で勉強の約束だった。しまった。余計なことを言った。出来れば家でごろごろしていたい。
「どうせやっぱ今日めんどいとか思ったんだろ!あと二時間後だからね!待ってるからね!」
「行けたら行くー」
「問答無用!」
がちゃり。いや、discordにそんなSEは無いのだけれど。
外は雪が積もっていた。最悪である。
せめてこの先の未来が、色鮮やかな世界でありますように。
先の事は、わからぬけれども。
Fin.
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?