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夢の中にはもう一つの幻想がある(夢日記)

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昨夜見た夢ただ連ねていく夢日記。最新のものは無料で読めます。
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記事一覧

書きたいという気持ちは性欲に似ている。

夢の中で、私は絵を描く人だった。

それは禅画のように何か意味が込められたもので、でも漫画に近いもの。美少女のシルエット。儚い色。

私は夢の中で青年だった。僧のように頭を丸め、袈裟のようなものを着ていた。そして、固いベッドの上にいる。もしかすると、何かの病気をして入院していたのかもしれない。

スケッチブックを広げる。母親は「そんなくだらない絵ばかり描いて」と私を叱っている。それでも私は、食事を

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(十六)夢の中にはもう一つの幻想がある

(十六)夢の中にはもう一つの幻想がある

雨があんまり長く降り続くので、海面が上昇してうちのベランダを越えてくる。波の上に透明な海百合がぽっこり顔を出していた。ガラス玉みたいで、あんまりきれいなのでiPhoneで写真を撮る。やがて水面は天井まで届く。

寝ていたら、玄関チャイムの音。居留守をしていたのに、がちゃがちゃと音がして扉が開く。またジロウが鍵をかけ忘れていったのだろうか。寝てるのに、寝ていてこんなに体が動かないのに、誰かが勝手に入

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(十五)夢の中にはもう一つの幻想がある

パスカルズの前座で歌うことになって、横浜のサムズアップに初めてやってきた(おこがましくも、そんな夢を見た)。ズンさんのギターで歌うことになっている。遠方からやってきた前職のお客様も、「たまたま横浜で他のイベントがあるから」と申し込んでくれている。前売り券はそうそうに売り切れたそうだ。

サムズアップはビルディングのフロア内にあって、お客を入れるメインフロアよりもさらに広そうな完全防音の控え室があっ

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(十四)夢の中にはもう一つの幻想がある

(十四)夢の中にはもう一つの幻想がある

三十代にして、もう一度中学に入る決意をした。今日は卒業式である。教壇に立つのは藤本さきこで、Tが書いた花(アネモネだろうか?)の絵を黒板にチョークで写し取っている。

見ればクラスメイトには、中学の同級生と高校の同級生が交ざっている。机をきれいに並べて整えているのは、中学の同級生のSだ。高校ではそれぞれの机を小島のように離して並べていたけれど、中学ではふたつを一組にしてくっつけていた。片側が男子、

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(十三)夢の中にはもう一つの幻想がある

(十三)夢の中にはもう一つの幻想がある

高崎の実家に、主人と、主人の子どもたちと一緒に住んでいる。三人兄弟の末の女の子はまだ小さくて、小学生だ。長男は成人していて、私が呑みに行くのにいつも付き合ってくれる。十歳くらい年下の、血の繋がっていない青年を連れて歩くのは、なかなかいいものだ。

その日はすごい大雨が降っていた。目の前の碓氷川が氾濫して、西濃運輸の駐車場がそのまま川になっていた。私は風邪気味で留守番をしている。夕方、長男が大学から

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(十二)夢の中にはもうひとつの幻想がある

(十二)夢の中にはもうひとつの幻想がある

夢のなかで、裸だった。

裸のまま、変な別れ方をしてしまった人たちと会った。

たぶんもう、現実では会わないのかもしれない。
会っても笑顔で会話することなんてないのかもしれない。

それでも夢のなかのその人は、屈託のない顔で笑っていた。

私は昨今の彼の仕事のことを「盛況だったみたいだね」と言って讃える。
彼がその仕事に挑む前には、失敗してしまえばいいのに、という後ろ暗い気持ちもあった。
それでも

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(十一)夢の中にはもうひとつの幻想がある

(十一)夢の中にはもうひとつの幻想がある

過去に大量虐殺事件があった小中一貫校に取材に来ている。
その学校は私立で、偏差値から見ればかなり優秀な生徒ばかりが集まって来ているが、夜学の男子校である。
なんらかの事情で昼間は通学できない生徒たちが通っているのだ。

事件が起きたのはちょうど五年前の今頃だった。
この学校の卒業生だという、十八になったばかりの青年が刃物を持って乱入した。
無差別に、手当たり次第に刺しまくったという。死傷者は二十一

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夢の中にはもうひとつの幻想がある(十)

夢の中にはもうひとつの幻想がある(十)

本棚を作ろうと思ったが、材が無い。
前の下宿からこっそりもらってこようと思う。前の下宿は材木屋である。

木切れを拾って金槌で打ち付ける。
本棚の最上段ができたところで、大家のおばさんに見つかってしまう。
あらあら、言ってくれればいいのに、とおばさんは言う。作業場からは大将が出てきた。
タケさんが見習いに来ている。結局、手ほどきを受けながら、一緒に本棚をつくることになった。

昔勤めていた図書館で

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夢の中にはもうひとつの幻想がある(九)

夢の中にはもうひとつの幻想がある(九)

高校のキャンパスは山の中にある。とても広い。
土曜日の昼、部活が終わり、副部長のハルカが部室の鍵を守衛さんのところへ受け取りに行く。
普段なら鍵は部長の私が管理しているけれど、昨日は夜遅くまで残りって守衛さんの見回り時刻に迫っていたので、鍵を預けて帰ったのだ。

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夢の中にはもうひとつの幻想がある(八)

夢の中にはもうひとつの幻想がある(八)

座長が、棟梁と私と含めて打合せをする必要があるのだ、と言う。
棟梁は、江ノ電の藤沢市側にある駅に家を借りている。
江ノ電は海に面した断崖絶壁を走る路面電車だ(本当は違う)。

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夢の中にはもうひとつの幻想がある(七)

夢の中にはもうひとつの幻想がある(七)

出張先に来ている。かなり標高の高い、山の上にある町だ。
上司は高校の頃の教務主任である。
アクシデントがあり、予定していた時間には帰れなくなった。

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夢の中にはもうひとつの幻想がある(六)

夢の中にはもうひとつの幻想がある(六)

その施設には滝がある。方丈になったその作業場は、暑くはない熱帯植物園のハウスのような趣である。私は幾ばくかの生活費を稼ぐために、そこへときどき通っている。

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夢の中にはもうひとつの幻想がある(五)

夢の中にはもうひとつの幻想がある(五)

その図書館は小学校の校舎を改築してつくられている。

1階には貸出の多い小説が並び、2階から4階までの教室には、それ以外の一般書が並べられている。日が沈むと2階から上は消灯する。夜の図書館にやってくるのは、新しい物語を手にしたい老人ばかりになる。

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夢の中にはもうひとつの幻想がある(四)

夢の中にはもうひとつの幻想がある(四)

赤いオープンカーに乗って夜の街を走っている。街のはずれには関門がある。ビルの狭間に、高速道路の料金所のように。警備員の顔をのぞき込むと、小学校を卒業して以来会っていない同級生の顔である。再会を喜び合い、彼の掌に小銭をのせて別れる。

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