(十五)夢の中にはもう一つの幻想がある

パスカルズの前座で歌うことになって、横浜のサムズアップに初めてやってきた(おこがましくも、そんな夢を見た)。ズンさんのギターで歌うことになっている。遠方からやってきた前職のお客様も、「たまたま横浜で他のイベントがあるから」と申し込んでくれている。前売り券はそうそうに売り切れたそうだ。

サムズアップはビルディングのフロア内にあって、お客を入れるメインフロアよりもさらに広そうな完全防音の控え室があった(夢の中のことであって、現実にはまだ行ったことがない)。開演数時間前に会場入りする。お店の担当も、まだアルバイトの子しか来ていない。

もう間もなく開演だというのに、リハーサルもしていなければ、練習も、歌う曲もまったく決めていない。慌ててズンさんを探す。ズンさんは機材のセッティングをほぼ終えていて、「歌う曲? 大丈夫っしょ、そのとき決めれば」と余裕である。最終撤収時間を確認している。ぎりぎりの時間まで、演奏し尽くして盛り上がる企みであるらしい。

手荷物をどこかに置いてきてしまったことに気づく。もう会場は、パスカルズを聴きに来たお客さんでいっぱいである。控え室を探しに行く。広い事務室のような控え室は、大勢のパスカルズのメンバーで埋まっていて壮観だった(現実にはそこまでの大人数じゃないだろうけど)。


※この物語はフィクションであり、実在する人物や団体、地名などとは関係ありません。

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