下書きの記事は、長いこと放置しておくと息絶えてしまう。

途中まで書いた記事を下書き保存する。それから、他の急ぎの仕事に取り掛かる。他の仕事のほうが忙しくなって、書きかけの記事を下書きの状態で放置してしまう。他の仕事が片付いて、いよいよ書きかけの記事を仕上げようとする。するともう、その記事を書こうとする情熱が失われていることに気づく。

エリザベス・ギルバートが、『BIG MAGIC「夢中になる」ことからはじめよう。』の中で同じようなことを書いていた。小説家の彼女は、あるとき1960年代のブラジルを舞台に小説を書こうというアイデアを得た。リサーチを進め、物語の輪郭も生まれ始めていた。

でも、そこで現実の人生のほうにドラマが発生してしまう。執筆は中断された。2年以上が経過し、現実のドラマが落ち着いたところで再び彼女は小説の続きを書こうとした。でもそのとき、耐えがたい事実に気づく。彼女の小説は、すでに死んでいたのだ。

▼関連記事:小説は「誰かを助けるため」に書くもの……なんかじゃない!〔書評〕BIG MAGIC「夢中になる」ことからはじめよう。

それと同じことが、ブログやnoteを書こうとするときにも、小さな規模で起きている。下書きのまま後生大事にとって置いた記事は、再び書こうとするときにはもう鮮度を失っている。

書き上げた記事を熟成させるために、公開までに時間を置くことはあるかもしれない。でも、熟成してうま味が出てくるのは、一度書き上げた記事なのだ。書きかけの記事じゃない。もし、どうしても時間切れで下書きのまま保存しなくちゃいけないなら、せめてその翌日も、一行でも構わないから続きを書こうとすること。漁船の生け簀に、空気ポンプで少しばかり酸素を送るみたいに。その日も書き上がらなかったら、また次の日も。


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