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【MIA】2012年オフの"史上最悪の大型ファイヤーセールトレード“を振り返ろう!

皆さんこんにちは!

今回のテーマは、マーリンズの過去のトレードについてです!

今回紹介するトレードは、2012年オフの11月13日にブルージェイズ相手に行われ、計12人の選手が動いたブロックバスタートレードです。

このトレードは、マーリンズ側は大規模なチーム再建と悪名高かった当時のマーリンズオーナーのジェフリー・ローリア氏が命令した年俸削減を行う目的。ブルージェイズ側は、近年(2012年当時)低迷していたチームを再びコンテンダー(勝ちに行くチーム)として戦うための戦力強化という目的で行われました。

なお、このトレードでマーリンズが主力選手を軒並み放出したこともあり、案の定ファンや選手,球界関係者達から批判の嵐となり、MLB機構側からもこのトレードを成立させてもいいのかどうか一度審査が入ったほどでした。

しかも、マーリンズは当時新球場のマーリンズ・パーク(現ローンデポ・パーク)が完成して本拠地移転1年目で、前年の11年オフにホセ・レイエスマーク・バーリーなどを獲得する大補強を行ったこともあり、「これから強いマーリンズが見られるんだ!」と喜んでいた当時のマーリンズファンやマイアミに住む人達、また新球場建設に莫大な資金を投入した人達からの怒りは相当なものだったようです。

こうしてネット上やMLBファンの間で史上最悪の大型ファイヤセールトレードと成立当時言われたトレードですが、このトレード自体が成功or失敗したかどうか?選手が活躍したかどうか?はまた別の話。

今回はトレードされた選手達が移籍先でどういう活躍したのか?どのような成績を残したのか?を紹介します。

【トレード選手について】

(TOR 獲得選手) 5人

ジョシュ・ジョンソン(SP)

2005年に21歳の若さでメジャーデビューし、マーリンズでは8年間プレー。チームのエースとしてオールスターに2回出場、2010年にはNL最優秀防御率のタイトルを獲得するなど大活躍した身長201cmの剛腕右腕。

この大型トレードでは、目玉選手の1人としてブルージェイズに移籍しました。しかしマーリンズ時代から故障が非常に多いことで有名だったジョンソンは、移籍後も故障に苦しみ16登板で防御率6.20とまさかの大不振、オフにFAとなりブルージェイズではわずか1年のプレーとなりました。

翌年契約したパドレスでも故障に苦しみ0登板。球界屈指の剛腕投手だったマーリンズの元エースは、30歳になる前にMLBの舞台から姿を消してしまいました。

マーク・バーリー(SP)

通算214勝,完全試合1回,15年連続2桁勝利,14年連続200イニングクリアなど、多くの輝かしい実績を誇る00〜10年前半のMLBを代表する名投手。

2012年に12年間プレーしたホワイトソックスからマーリンズへ4年契約で移籍。契約1年目から防御率3.74 202.1イニング 13勝と期待通り活躍するも、2年目に入る前にブルージェイズへトレードが発表。

これにはバーリー本人も寝耳に水で、当時の球団フロントが彼に対して「契約期間中はトレードしない」などと口約束してたそうで、当の本人が「マーリンズにはすっかり騙されたよ」とメディアに対して怒りと呆れのコメントを残していました。

その後バーリーは、家族を自宅のあるフロリダ州に残して単身赴任で2013年からブルージェイズでプレーすることになりましたが、モチベーションを何とか維持し、移籍後3年間全てで2桁勝利,規定投球回をクリアし活躍。15年には地区優勝達成に貢献し、同年オフに現役引退。またホワイトソックス時代に付けた背番号56は17年に当球団の永久欠番に指定されました。

ホセ・レイエス(SS) 

通算2138安打,517盗塁,盗塁王獲得3回の実績に加え、歌手としても活躍したメジャー屈指の韋駄天選手。

メッツ時代の2011年にNL首位打者を獲得し、オフに6年1億600万ドルの大型契約でマーリンズと契約し、契約1年目から40盗塁するなど活躍するも、オフにブルージェイズへトレード。前述のバーリー同様「契約期間中のトレードはない」と口約束も、大型契約1年目での移籍に彼も困惑。モヤモヤが残るまま移籍しました。

レイエスは、移籍後ブルージェイズに在籍した2年半(13〜15年途中)怪我による長期離脱のシーズンや走塁と守備面の衰えがありましたが、通算成績は305試合,打率.289,61盗塁,出塁率.334と、1番打者としてまずまずの成績を残しました。

エミリオ・ボニファシオ(UT)

1B以外の内外野どこでも守れる両打ちのユーティリティで、11年は40盗塁、ブルージェイズ移籍前年の12年は64試合で30盗塁を記録したMLB屈指のスピードスター。21年には、ドミニカ共和国代表として東京五輪に出場しました。

マーリンズからブルージェイズにトレード移籍後、同時期にエンゼルスから移籍したマイサー・イズトゥリス(UT)と共に13年の2Bのレギュラーを期待されましたが、2選手揃いに揃って大不振。ボニファシオは94試合で打率.218,出塁率.258,12盗塁とメジャー定着後ワーストの成績を残し、同年8月14日にトレードでロイヤルズに移籍となりました(なおロイヤルズ移籍後は復調)。

ちなみにボニファシオの後釜として2Bのレギュラーに抜擢されたのは、仲の良かったムネリンこと川崎宗則選手です。

ジョン・バック(C)

※上記の動画はメッツ時代

ブルージェイズ時代の2010年にオールスターに選出された経験を持つ、リーダーシップと強打を武器にMLBで活躍した捕手。

このトレードでブルージェイズの在籍は2回目となりましたが、1試合もプレーすることなくすぐにメッツへトレードされました。

ちなみにこのトレードの交換相手は、前年2012年にNLサイ・ヤング賞を獲得したナックルボーラーR.A.ディッキーと、ディッキーの専属捕手2人ジョシュ・トーリマイク・ニケアス。なお、バックと共にメッツへトレードされた3選手の中には、当時有望株選手だったノア・シンダーガード(現LAD)とトラビス・ダーノー(現ATL)がいました。

(MIA 獲得選手) 7人

ヘンダーソン・アルバレス(SP)

ブルージェイズ時代は有望株として期待され、11年に21歳の若さでメジャーデビュー。12年は早くもMLBの規定投球回に到達した早熟のグラウンドボーラー。

マーリンズ側が獲得した選手の中では最も目玉だった投手で、移籍1年目の13年は故障離脱がありながらも、9月28日の試合でノーヒッターを達成。14年は前年にNL新人王のタイトルを獲得した若きエースのホセ・フェルナンデスがシーズン途中にTJ手術を受け、代わりにアルバレスが代役のエースとなり防御率2.65,12勝をマーク。彼はこの年、見事オールスターに選出されるなど大活躍しました。

翌年15年は、マーリンズのエース格として開幕投手に選出。大きな期待をされましたが、開幕から4登坂連続で4連敗。その後MRI検査で肩と肘の炎症が発覚し残りのシーズンを全休。オフにノンテンダーFAとなり、マーリンズを退団しました。

その後のアルバレスは、17年に3登坂しただけのみで、18年以降はマイナーリーグやメキシカン・リーグ、米独立リーグでプレー。前述のジョンソン同様に、アルバレスも30歳を迎える前にMLBから姿を消してしまいました。

アデイニー・エチェバリア(SS)

※上記の動画は千葉ロッテ時代

投手の目玉がアルバレスなら、野手の目玉としてマーリンズにやってきたのが、このエチェバリア

エチェバリアはキューバ出身の選手で、走攻守3拍子揃った有望株として期待され、12年にメジャーデビュー。マーリンズ移籍後13年は、トレード相手のホセ・レイエスの後釜としてSSのレギュラーとして抜擢され148試合に出場。しかし、走攻守全てにおいてMLBで大苦戦。特に打撃で苦戦し、打率.227、出塁率.267、OPSはMLBワースト2位の.565、WARは-1.9と苦しみました。

しかし、翌年以降はMLBの水に慣れ、特に打撃面で進化を見せ打率は14年.276、15年.281を記録。自慢の守備でも好プレーを連発し、15年はUZR・DRSの両指標でプラス10以上の数値を記録し活躍しました。

その後エチェバリアは17年途中にレイズにトレードされ、現在はジャーニーマンとして多くの球団を渡り歩き、21~22年にはNPBのロッテに所属し日本でプレーしました。 

ユネル・エスコバー(SS)

※上記の動画はレイズ時代

マーリンズ移籍前はブレーブスとブルージェイズの2球団でSSのレギュラーとして活躍、MLBきってのお騒がせ選手としても有名なキューバ出身選手。

トレードで移籍したマーリンズでも活躍を期待されましたが、大型トレード発表後1ヵ月もしないうちに、エスコバーはすぐにレイズへのトレード移籍が発表されました。このトレードは、エスコバー本人が志願したものであり、一緒にトレード移籍した同じキューバ出身のエチェバリアとレギュラー争いをしたくなかったというのが最大の理由です。

ちなみに、マーリンズがエスコバーを放出しレイズから獲得したのがデレク・ディートリックという選手で、彼は6年間マーリンズで主にユーティリティプレイヤーとして活躍しました。

ジェフ・マシス(C)

通算打率.194、通算OPS.551とMLBの歴史に残る貧打ながら、フレーミング、ショートバウンドブロック、好リード、強肩と卓越した守備力を誇り、MLBで17年間もプレーした名控え捕手。

移籍したマーリンズでは4年間プレー。1年目の13年は若手捕手のロブ・ブラントリーと併用され73試合に出場。14年はレッドソックスから移籍したジャロッド・サルタラマッキアの控えとして64試合、15年と16年は現在フィリーズに在籍するMLB最強捕手J.T.リアルミュートの控えとして32試合,41試合に出場し。自慢の守備力を武器に、マーリンズでも控え捕手としての仕事を全うしました。

打撃成績は、マーリンズではあまりいい成績を残すことが出来ませんでしたが、サヨナラ満塁ホームランを打つなど意外性を発揮する場面を多くあったのがファンとして印象的でした。

ジャスティン・ニコリーノ(SP)

奪三振率こそかなり低めだが、チェンジアップとカーブで緩急を付けて、フォーシームとカッターで打者を打たせて抑えるThe技巧派左腕投手。

ホセ・フェルナンデスヘンダーソン・アルバレスなど将来を大きく嘱望された若手投手が数多くひしめいていた当時マーリンズにおいて、彼らほど大きな注目はされなかったものの、ニコリーノも将来のローテ投手候補の一人と期待されマイナーリーグの階段を順調にステップアップ。2015年に23歳の若さでメジャーデビューを果たしました。

昇格後ニコリーノはすぐに結果を残し、メジャー1年目の15年は12登坂,防御率4.01,5勝4敗と結果を残しました。翌年以降は先発と中継ぎを両方こなしMLBでプレーしますが、思うような結果を残せず18年開幕前にウェーバー公示されマーリンズを退団しました。

ジェイク・マリスニック(OF)

※上記の動画はアストロズ時代

走攻守全てにおいてアグレッシブなプレーをトレードマークとし、特に守備面で非常に評価が高かった外野手。

マーリンズ移籍後は有望株として期待され、13年にAAでOPS.860と好成績を残しAAから飛び級でメジャーデビューを果たします。しかし13年は、40試合で打率.183 1本 OPS.478と打撃面で大苦戦。翌年14年は14試合で打率.167 OPS.382と結果を残せず、同年7月31日にアストロズへトレード移籍となりました。

マーリンズでは活躍できなかったマリスニックですが、アストロズ移籍後は主に4人目の外野手として自慢の守備と走塁、そして課題とされた打撃でも長打力で意外性のある活躍を見せ、メジャーリーガーとしての成功を収めました。

アンソニー・デスクラファニ(SP)

制球力の高さに定評があるゲームメーカー右腕。

マーリンズ移籍前のブルージェイズ時代の12年にマイナーリーグでデビューしいきなり防御率3.37 11勝と結果を残し、同年オフにトレード移籍。移籍したマーリンズでも期待通りマイナーで好成績を残し、14年は5月14日にメジャーデビュー。その後は先発と中継ぎの両方で起用され、14年はMLBで13登坂で防御率6.27だったものの、FIP3.77 K/BB5,2と投球内容の良さを見せ、来シーズン以降の活躍を期待されました。

しかし、同年オフにマーリンズがレッズから同じ先発投手のマット・レイエスを獲得したため、デスクラファニはその交換相手としてレッズへトレードで放出されました。その後デスクラファニは怪我で長期離脱した時期があったものの、レッズで先発の柱として活躍。現在はジャイアンツでプレーしています。

【トレードについてのまとめ】

ざっと12選手を紹介してみましたがいかがだったでしょうか。

このトレードで動いた選手の移籍先での活躍度を

◎ 複数年or期待以上の活躍
○ 短期的or及第点の活躍
△ 活躍も不振も両方あり
✕ 故障や不振で期待はずれ
ー 評価不能

という感じで評価してみると

ブルージェイズ側の獲得選手

バーリー
ワークホースの期待通り先発ローテで3年間活躍
レイエス
守備の衰えと故障も、1番打者でまずまずの活躍
ジョンソン
エース候補も、故障と成績不振で期待はずれ
ボニファシオ
成績不振で一年も経たないうちに夏に放出
バック
すぐメッツにトレードされたため評価不能

(総合評価)

選手の活躍度だけを考えれば、このトレードの評価は可もなく不可もなくという感じかもしれません。

ただ、長年低迷中だったブルージェイズにとってこのトレードを成立させたことはチームにとって劇薬だったようで、13年は投打が嚙み合わずまさかの地区最下位に終わるも、14年は83勝79敗で07年以来の地区3位、15年には93年以来22年ぶりの地区優勝・PS進出を果たしました。

またこの地区優勝には、マーリンズとのファイヤーセールトレードの後に行われたレイエスバックのトレードの交換相手トゥロウィツキーディッキーが貢献。ブルージェイズにとって、このトレードは見事成功となりました。

【マーリンズ側の獲得選手】

エチェバリア
4年半SSのレギュラーで、主に守備面で期待通り活躍
アルバレス
一時エースとして大活躍も、故障で僅か3年間の在籍
マシス
控え捕手とリアルミュートの教育係の仕事を全う
ニコリーノ
MLB1年目にローテ定着も、その後は結果を残せず
マリスニック
マーリンズでは花開かず、アストロズ移籍後活躍
エスコバー
バック同様にすぐトレードも、交換相手が活躍
デスクラファニ
メジャー昇格後すぐトレードされたため評価不能

(総合評価)

トレード成立当時は経緯を含めてマーリンズ側に対して非難の嵐だったこのトレード。しかし、実際に獲得した選手は全員その後のMLBで活躍しているので、思ってる以上に悪くはないトレードであるという印象です。

しかしこのトレードの最大の目的であったチーム再建ですが、長期的に戦力になると見越し獲得した若手選手は全員故障や成績不振,トレードの駒など様々な理由で5年以内に退団してしまったのは、マーリンズにとって大きな誤算でした。

またマーリンズはその後チーム内で色々ゴタゴタがあり、20年にPS進出するまで長すぎる暗黒時代を送ってしまいました。まあ今も暗黒時代続いている感否めないですけどね…

【終わりに】

私マイア・ミッシーは、マーリンズが球団名がフロリダからマイアミに変更された2012年にMLBを見始めましたが、ちょうどその年のオフにマーリンズが、日本では到底有り得ないような大型トレードを成立させたので、当時小学生だった私は

「MLBってすごい世界なんだな~」

なんて思っていましたね笑

そしてトレードについてですが、MLBのトレードは良くも悪くもチームに長期的に影響を与えるトレードも多いので、今回の12年のマーリンズの大型ファイヤーセールトレードみたいに、数年後にトレードを振り返ってみると選手の活躍度やチーム状況について今までと違った面白い発見ができるかなと思います。

この記事を見てる他球団のファンの人がいるのであれば、ぜひ自分の好きな球団の過去のトレードについてネットで調べてみるのもいかがでしょうか。

【引用元】

(成績)
Baseball-Reference
https://www.baseball-reference.com/

(動画)
MLB公式YouTubeチャンネル
https://youtube.com/@MLB

パーソル パ・リーグTV公式YouTubeチャンネルhttps://youtube.com/@PacificLeagueTVofficial