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なぜ日本人がヨーロッパのサッカーを見るのか


1.原体験

「日本代表のサッカーが嫌い。」

 小学生の頃の私の所感である。たまにテレビで日本代表の試合が放送されても、90分観たいと思わなかった。
 小学生の頃の私は大人のサッカーにあまり興味がなかった。当時の私から観て、日本代表のサッカーはパスが遅く、途中でカットされてカウンターを受けるチームという印象だった。

 しかし数年後、私にとっての「転機」が訪れる。2015年6月6日。ベルリンのオリンピア・シュタディオンで行われたチャンピオンズリーグ決勝のバルセロナとユベントスとの試合は当時の私の目にあまりにも鮮烈に映った。

 リオネル・メッシ以外に出ている選手の名前すら知らなかった当時の私にとって、試合開始後に数分でラキティッチが挙げた先制点は衝撃だった。ヨーロッパのサッカーは「速い」。

 ジャンルイジ・ブッフォンやアンドレア・ピルロが2006年にドイツ・ワールドカップで優勝したことも、カルロス・テベスやパトリス・エヴラの偉大さでさえ知らない。
 そんな当時の私にとってユヴェントスは守るチームに見え、バルセロナは「崩す」チームだった。バルセロナが「強者」だった。

 私にとってヨーロッパサッカーの初体験はチャンピオンズリーグ決勝だった。「ヨーロッパのサッカーは速い」。私がヨーロッパのサッカーを好きな理由であり、面白みを感じるところだ。

2.導き手

 私がヨーロッパサッカーに興味を惹きつけられ続けた最大の要因は「書籍」だった。そのなかでも私にサッカーの面白さを教えてくれたのは杉山茂樹著『4-2-3-1』である。

 サイドに開く攻撃の重要性、ヘンク・テンカーテやクラウス・トップメラーなどのヨーロッパ屈指の戦術家について書かれた内容はヨーロッパサッカーの奥深さを感じさせられた。
 ロベルト・バッジョやジネディーヌ・ジダン、ロナウジーニョなど、バロンドール受賞者たちと組織的なサッカーを好む監督との対比は私の「サッカー観」の原点だ。

 もう1冊紹介したい本がある。マルティ・ペラルナウ著・木村浩嗣訳『グアルディオラ総論』である。

 私がヨーロッパサッカーに魅了された最大のきっかけはペップ・グアルディオラの存在だった。ペップの「サッカー」に出会うまで、私にとってのサッカーは「ただの運動」であり、「点を取られないようにして耐える」スポーツだった。

 しかしヨーロッパには「華やかなサッカー」がある。各選手が最適なポジシングを取り、攻守にわたって能力を活用し、点をとっても攻撃を続ける。

 ピッチ上に立つ選手がそれぞれ自身の長所にあった役割を与えられ、理論的かつ組織的に相手を上回る。私はペップの「トータル・フットボール」に魅了された。

 先に挙げた2冊の本と『ワールドサッカーダイジェスト』が私にとっての「バイブル」だ。「ヨーロッパには考えさせられるサッカーがある」。ヨーロッパサッカーに感じる最大の魅力だ。

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