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国際協力のミドルオフィサーになって考えた。

約2年前に新卒としてODAの仕事を始めた私ですが、2部署目で少々ニッチなミドルオフィス(いわゆる金融・法務事務部門)に配属になり、それから色んな感情を経験した。
分かる人が読んだらすぐに身バレしそうで怖いが、この気持ちを残しておくことは大事なことだと感じ、PCを開いた。


「国際協力のお仕事」と聞いたとき、どんなイメージをもつか。

・相手国の行政官や現地のステークホルダーととバリバリ議論しながら案件を動かしていく
・分野毎(農業、インフラ、教育、ジェンダー 等)の高い専門性を持ち(もしくは積み上げる機会があり)、その専門性を持って、技術指導や人材育成をする
…etc

仕事を始めたばかりの私は少なくともこのイメージだったし、このイメージのでキャリアを積み上げていくことを考えていた(というかそれしか頭になかった)。ジェンダー 、社会包摂に関心がある私はそういうテーマを扱った技術協力とかに携われたら良いなと思っていた。
最初の配属先はいわゆる「フロント」と言われるポジションで、上述のイメージの通りの仕事をやらせてもらった。対象国の協力方針を策定したり、相手国政府の方と交渉する機会をたくさん得た。とても刺激的だった。
またそこで私は開発金融支援(いわゆる「有償資金協力」=融資※)の面白さ、ロマン、将来性、開発的意義に気付き、金融の勉強をしたいという気持ちが高まっていった。
そのため、所属先では約2年に1回部署異動があるが、私は金融の勉強も出来つつ、事業を回していけるいわゆる「フロント」の部署に再度希望を出した。わりとキャリアプランをしっかり目に立てておくタイプなので、希望の理由も明確だったと思う。
※厳密にいうと出資も含まれるが件数は少ない。

ただし、受け取った内示は希望には全く書いていなかった金融事務・法務等を担ういわゆる「ミドルオフィス」だった。

国際協力の世界でミドルオフィサーに向けられるまなざし。

はじめはパニックだった。

異動先は組織における牽制としての役割をもつ部署だったが、1部署目でも関わる機会が多く、異動先にネガティブなまなざしを向ける「フロント」勢の声をよく知っていたので、自分が今後どういうまなざしに晒されるか怖くなった。
他にも、私が「○○という部署に行きます」と言えば笑う人、心配の眼差しを寄せてくる人、『マイル溜まるから、次は絶対希望叶うよ』など色々言葉・態度が寄せられ、自分はそれらをネガティブに捉えてしまった。
(もちろん、ポジティブなお言葉もたくさん頂きましたが、センシティブになっていた私は少々嫌味っぽく受け取ってしまっていました。謝罪。)

「理想の自分になれなかった」と感じ、自信がなくなった。
”国際協力の仕事といえば「フロント」をやってなんぼ”というまなざしを自ら生み出し、またそれを内在化し、どんどん自己嫌悪になった。1週間ぐらいはしょっちゅう泣いた。異動の話をするのが嫌でちょっとだけ人を避けた。
(ただし、少し冷静になった今考えてみても、このまなざしを持っている人は少なくないとと思う。特に目的を持って仕事をしている業界だからこそ、尚更強いのではと思う)

回復というか、開き直り。

しくしくしている私が回復していったのは、ある先輩の一言がきっかけだった。

生き急ぎすぎ!(笑)
インパクトを目指すのも大事だけど、その前に人として、「この人と一緒に仕事したい」って思ってもらえるような人になることが大事じゃないかな。(国際協力人材としてではなく)人として成長できるチャンスだよ。

(一言一句は覚えていませんが、要約するとこう解釈しています)

上述の通り、「生き急ぎすぎ」は戦略性を求められる国際協力のキャリアではあるあるではと思うが、たしかにキャリアの途中で出会う事業や人々は「飛び石」で良いのか・・・と先輩の言葉を振り返れば、自然と首が横に振れる。そんな中途半端な気持ちで向き合い続けたキャリアの先で、私と一緒に何かしたいと思ってくれる人はどれだけいるのだろうか。
自分の視野が狭かったことに気づく。

この時からキャリア(人生)を考える時、

①どういうインパクトを社会に生み出したくて、
②どういう手段があって、
③実行にはどういうリソースが必要で、
④それらをモビライズ出来る(リソースパーソンが「この人となら一緒にやりたい!」と思ってくれる)人間はどんな人か

を考えるようになった。それまでは①ばかり考えていて、特に④の解像度が低かった。

結論、細かく考えると仮説は色々たつが、まずはシンプルにいいやつ(もう少し丁寧にいうと信頼できる人)を目指そうと思った。異動先でやることが明確になった気がした。
「国際協力」と言う言葉に頭でっかちになっていたと思う。

その後ミドルオフィサーをやってみての、ミドルオフィスのよさ、気づき。


①当たり前だが国際協力はミドル・バックオフィスがいないと成り立たない。それを理解せず、感謝の気持ちを忘れたり、仕事に優劣をつける人はかっこ悪い。結局信頼されない。
②国際協力はフロントの仕事と同等、もしくはそれ以上にミドル・バックオフィスのポストが多く、それを一切やらないというのはほぼあり得ない(特にJ●CA職員。そもそも職員で採用されている以上、ミドル・バックを担うのが重要なTOR。)。
③ミドルをやると開発課題の知見は積み上がらないが、課題解決の手段(特定のスキーム)の理解が深まる、知見がたまる。
④様々な事業・国を俯瞰的に見て、比較・分析が出来る。視野がぐんと広がる。いろんな国のナレッジが集約されていく。
(⇨③、④は国際協力人材を目指す上で、課題専門性と同じくらい役立つ/現場の案件監理で生きそうな印象)
⑤信頼されるミドルオフィサーとは、「ルールをルールとして強制するのではなく、なぜそのルールが存在するのか、このルールを遵守するのがどうして大事なのか、ルールのエッセンスはどこか、逆にどこまでならルールを読み変えられるのかを考え、説明する手間を惜しまない人」だと知る。同時にその実践がいかに難しいかも知る。この経験は現場での案件形成、監理でも活きると思う。
⑥定型業務を簡素化、デジタル化する経験を積めること。フロントにいるとなかなかできない。
⑦ミドル・バックオフィスは民間企業にもあるため、転職時に応用しやすい(キャリアパスが広がる)そもそも仕事がフロント・ミドル・バックにきれいに分けられないのではと言う論点もあり、ミドル・バックの経験は様々な場所でふとした時に活きる(と思う)。
⑦国際協力には、多様な携わり方があること、多様なバックグラウンドを持つ人がいることを知り、業務に対する解像度・想像力が広がった。
⑧ミドル・バックは残業が傾向として少なめ。余暇を勉強などに有効活用できる(私は証券アナリストの勉強をしています)。

現在はミドルオフィスの経験は絶対に将来活きると思って(信じて)、日々の業務に当たっている。

また、一連の経験を踏まえ、もう1つの大事な気づきは、他人のキャリア(人生)を自分の軸で勝手に定義してはいいけないということ。
私が見ているのは相手の人生の一部の、そのまたわずかな表面でしかなくて、それをどう相手が受け取って、解釈して、今後に活かしていくのかは、他人である私には分からないし、勝手に枠に当てはめるのはとてもおこがましい。
実践するのは難しいと思うけど、まずは相手自身がどう考えているのか、そこを聴いてみるところから始めることを意識したい。

よりかっこいい人間を目指して。

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