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詩 境界暴きの瞳


 詩 境界暴きのひとみ



投光器が照らしだす
満ち足りた表情よりも
太陽の焦熱が明るみにする
燦爛さんらんたる大自然よりも
光が産み出す影にうずもれた
アンニュイ 暗澹あんたん 当惑 迷い
そればかり眼差してしまうから
なんの思慮もなく ただの癖で
くらやみを暴いてしまうから
居場所はなくなった
あらゆる専門の分野でも ひとの結託は必要で
結託の場面において 暗闇ばかりに向くこの瞳は
受け容れられることがなかった

さりとて、このが視ていたものは
正確には暗闇そのものではなく
ましてや自己憐憫でさえもない
このが視ていたのは
光と闇のあわいにある
自と他のあわいにある
現と夢のあわいにある
境界線
を探っていた
境界線とは
物事の分水嶺であり 分解点であり
その肝要を掴めば 異世界にだって
宇宙にだって行ける手掛かりである

この瞳は この肉体と精神を乗り物にして
ここではない 遠く果てない景色を視ることを
細胞の末端に至るまで 願っている

肉体と精神が、この瞳の要望を
受け入れるだけの器だとしたら
わたしを構成する、あらゆる要素が
焼き切れてなくなるまで
境界へと歩を進める
光と闇のあわいへと
絶えず蠕動ぜんどうによって







東方Project『少女しょうじょ秘封ひふう倶楽部くらぶ』系列作品に登場する女子大生『マエリベリー・ハーン』を基にした詩