詩 冀えなかった一生たち
詩 冀えなかった一生たち
矮小な話し声を
轟音により秘匿する
超高速の蜈蚣が
地下を通り来る
その体内に踏み入ると
警告音と同時に
気孔が閉じて
話し声はなくなった
一人として
一人として 帰る日は来ない
幻想行きの超特急へ
半券もなしに乗車した
人々は
地底を穿つ大蜈蚣の
かけがえのない贄
日々
空想に明け暮れ
現実に項な垂れ
流星が 一夜漬けの願いを叶える日を
あるいは
彗星が 一世一代の破滅を与える日を
待ってさえいなかった
半端な浮遊者たちが
ありあわせの思いつきを持ち寄って
顕現した
歪な夢想の怪物
だけど怪物は
一心不乱に
専心して 穴を掘り進む
地下以外の世界を
眼差すことはあっても
ふいと目を叛けて
穴を掘っている
その姿は
ひとつの願いを
とうとう叶えられなかった
潜潜話の浮遊者たちの
黒ずんでいるけれど
確かな
希望
『東方虹龍洞』に登場する大蜈蚣『姫虫百々世』を基にした詩