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『立花隆の書棚』ノート

立花隆著

写真:薈田純一(わいだじゅんいち)

中央公論新社刊

  今年の2月27日にnoteに投稿した『立花隆の最終講義』ノートで、立花隆の仕事場である通称「猫ビル」のことを4~5階建てとあいまいに書いて少し気になっていた。何かこの「猫ビル」に触れた立花隆の本がないかと古本屋で探していたら厚さ五センチもある存在感十分のこの本を偶然見つけた。

 この本では「ネコビル」と書いてあるが、なんとそのネコビルの立体図が掲載されていて、その全容がわかったのだ。地下2階、地上4階建てだ。但し、4階建てといっても4階は実は屋上で、そこもテラスハウスのような部屋になっており、その6階のフロアすべてと階段室に書棚が所狭しと設置してある。

  この本は、著名人の書棚をくまなく撮影してそれを本にする、「〇〇の書棚」という中央公論新社のシリーズの1冊として企画編集された。

 全650ページもの本製本で、その4割近くがグラビアカラーページで、なかには四つ折りのカラーページもある。これらのカラーページはネコビルをはじめ、他の場所にある立花隆の書庫や立教大学の研究室にある書棚に置いてあるすべての本の写真で埋め尽くされ、その背表紙のタイトルや著者名等がわかるほど鮮明な歪みのない写真である。ただし、これで自分のすべての蔵書ではないという。というのは床に平積みにされている本もまた膨大なのだ。

 それらの写真も、それほど奥行きのない場所で撮影をしているから、普通なら超広角レンズで撮影すると考えるが、それでは端っこ歪みが出て、鮮明な写真にはならない。

  ではどのようにして撮影したのか。写真家の薈田純一氏が開発した〝精密書棚撮影術〟を駆使したそうだ。書棚の一段一段を別々にとってそれをコンピュータで精密に面合わせをして合成したものだそうだ。10段の書棚なら10枚撮影したことになる。立花隆が薈田氏に何回シャッターを切ったかと聞くと、「ざっと1万回ですね」と答えている。そして本の数を、一棚10冊として、10万冊、20冊として20万冊で、おそらく10万冊から20万冊の間だろうと見積もっている。

  これらの写真を見て、自分が読んだことがある本を見つけるものもちろん面白いが、それぞれの書棚の前で、立花隆が質問に答えて、ここらにはこんな本が集めてあると詳しく解説をしている。哲学や宗教あり。神話や歴史あり。政治、芸術、文学、科学全般、宇宙と生命さらには趣味の世界の書籍などあらゆる(といってもよいほどの)分野についての立花隆の該博な知識による解説が面白く、格好のブックガイドになっているのが素晴らしい。写真以外の6割のページがこうしたそれぞれの専門分野の詳細な解説になっており、立花隆の掛け値なしの〝知の巨人〟としての本領発揮の書籍である。

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