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【PRの概念を考える】2020年版

日本において欧米に比べ、非常ーにリテラシーが低い分野、それはPRである。クライアント、代理店、メディア、全てにおいて、分かっている人が非常に少ない。以前、日本は10年遅れていると言われていたが、その差は特に縮まっていないように思われる。遅れていても良いじゃないかの意見もあるかもしれないが、それは確かに良いかもしれないが、非常に大きな損をしているという事実は変わらない。

今回は頭にあることを改めて整理してみることとする。

◯広報とPRの違い

企業や人によって、全く異なる。特に日本においては、それが顕著だなと感じる。いわゆるバックオフィス部門よりに属するのが「広報」であり、宣伝、マーケティング、プロモーション部門寄りに属するものが「PR」で、「広報」は、プレスリリース作成、配信、メディアプロモートなどを行い、場合によってはIR寄りのことも行うなど。

※広報も上流〜下流まで実に業務範囲は様々。

もしくは、PRとして広報領域が含まれたり、広報としてPR領域が含まれたり、企業によって、マーケティングという言葉の定義が異なるように、色々なパターンがある。

特に正解は無いものとして、とはいえ言葉の定義として、しっかり置いておかないと、広報だから〜をする、PR担当だから〜をする、など、何となくの定義が多いため、曖昧な業務範囲やスキルセットが行われていない同種類の人が非常に多く散見される。

◯PRとは

企業(商品、サービス)が世の中といかに上手くやっていくか、そのための戦略やノウハウの総称であり、結果、パーセプションチェンジ(認識の変容、モノの見方)→ビヘイビアチェンジ(変わらない習慣や思い込みによる行動)が変わることが求められる。主導権はメディア、パブリック、ソーシャルに委ねられる。

◯PRで大事なこと

PRで大事なことは何か。まず、広告とPRの違いは、言わずもがなである(ググれば色々出てくる)そして、PRでは企業の売り込みはご法度である。

ある駅にポスターを掲出するとして、駅の利用者数がX人/日、どこの駅に、どう掲出すればY人にリーチ出来ますよ、は広告。渋谷駅に出現したヤマトの、ネコポス(モフモフ)は枠としては広告であるが、これは広告ではなくPR文脈もコミュニケーションとなる。

そもそも広告は市場規模は置いておいて、広告はこの 10年間で、消費者から年々嫌煙されてきている。企業が一方的に言いたいことを言うクリエイティブは、雑音以外の何ものでもない。

また、企業内のコミュニケーションでもユーザーや消費者に買ってもらう、利用してもらう、獲得するなどといった言葉は未だに当たり前に使われている。これは誰が悪いということではないが、非常に幼稚な表現であることを認識しないといけない。

一方で、ある程度支持を受け続けている商品、サービスにおいては、その企業や担当が、PRを理解しているケースが多い。そもそも発想の段階で勝負がついているのだ。

買わせる(利用させる)のではなく、買いたくなる(利用したくなる)ための、必然的理由〜世論を作ること、そして消費者のベネフィットの在り方を変え、属性順位転換を起こすこと、それらがPRにおいては大事である。

例)遠い存在のアイドル
  →会いにいけるアイドルAKB48
例)ラグジュアリー、社内が広い
  →エコカー
例)白い洗剤(スプーン一杯で驚きの白さに)
  →除菌、部屋干しに向いている洗剤(洗浄力に、除菌力)
例)軽い、ファッショナルブルなベビーカー
  →衝撃を和らげるベビーカー

某クリエイティブエージェンシーのトップが言っていたことで、バズ(死語)らせたい、拡散(死語)させたい、という企業のオリエン自体、無理ですと回答すると。逆に出来ますというところは信用できない、笑。なぜならば、バズらせるのは企業でもなく、ましてや、代理店でも、クリエイティブの役割でもなく、消費者(ユーザー)が自ずと拡散するわけで、どうしたら自分ゴト化し、さらに、人にポジティブなリコメンドをしたくなるか、から考えないといけない。もちろん着火点の用意は意図的に必要。

ちなみに、どんなに拡散されても、売上が上がらないケースがある。それはあくまでプロダクトの目指すところのブランドに間接的に繋がらないためである。他社事例を真似ても失敗する所以であり、なぜその企画である必要があるか、ゼロベースで設計をしていきたいものである。

今後、PR=コミュニケーション全般の定義になっていくのではと個人的には思う。

◯そのための手段

PRの手段に正解は無い。面白いギミック混じりの、動画クリエイティブを制作して、積極的なメディアプロモートを行う?こういうパターンは大体失敗する。目的が無いから。

もちろん、要素として、新規、季節、時流、テクノロジー、実利、実績、人、など、基本的に抑えないいけないこともあり、アイデアのフレームワークや、企画のチェックポイントもいくつかはあるが、あくまで思考を働かせるための材料でしかない(もちろん引き出しが多いと掛け算で生まれる企画もあるので、勉強と経験は必要)

その上で、左脳と右脳をフル活用し、是非ゼロベースの発想を心がけていきたい。PR会社の人間でも、このあたりのレベルはピンキリだが、ほんの一部しかいない、イケてる人とブレストするだけで、視野も発想も広がるであろう。

正解は無い中でも、Web(SP)と、SNSを軸とするようなコミュニケーション設計が基本的には良いと考える。情報がどこからどう生まれて、どう誰に届き、結果どうなるか、そのコミュニケーション設計自体がPRの手段となってくる部分があるであろう。

◯PRの成果指標

20年以上前に遡ると、古くは掲載数や広告換算値や、リーチという指標がある。ただ、あくまで指標で、ほぼ意味が無い。本質的ではない。さらに認知度向上や、自然検索数の増加も、あまり意味がない。

例えばであるが、以下のようなものを、定点的に取得し、それが、どう認知されて、どういう類の関心を持ち、さらにどういった行動に寄与しているかの遷移を見ていくのは良いと思う。

・ブランド(企業)想起率の向上
・ブランド(企業)好意度の向上
・購入利用意向の向上
・NPSスコアの向上
・SNSを含めた各種エンゲージメントスコアの向上
・昨年比較の、各種問合せ率の向上
・サービス理解度の向上
・リピートユーザーの向上

ただ、上記以外に見えない要素X(米Walt Disneyが10万ドルで調査した結果)もあるので、100%分析解析は不可能だということも理解しておきたい。

以上

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