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第九の粘土板 マーシュ山の試練

 ギルガメシュは、旅の装いも軽く、ただ独り、周壁あるウルクを後にした。今度の冒険は、死の海の向こう側にいる、遥かなるウトナピシュティムに会いに行く事だ。
 ウトナピシュティムは、人の身でありながら、死から免れていると言う。その秘密を確かめるのが目的だ。永遠のズィを持つのは、神々だけと思っていたが、例外もいるのだろうか。
 ギルガメシュの疑問は尽きない。
 ――エンキドゥの死に間に合わなかったが、確かめる価値はある。
 それが動機であり、興味だった。だがもし本当に、ウトナピシュティムの様になれる方法があるとしたら、一体どうなるだろうか。人の身で、永遠のズィを持つべきなのか。その場合、先に死んだエンキドゥは、どう扱うべきだろうか。
 死から免れるという事が、神になると同義ではないにしても、それは最早、人とは呼べない存在かもしれない。人とは呼べないものになり、名声を打ち立て、冒険を繰り返す事に、何の意味があるのか。ならば、人の身のまま、真っ当な死を迎える方がよいのではないか。
 あるいは、想像していたものと違うかもしれない。例えば、不老であるが、不死ではないと言った様な。あるいは、適性の問題もあるかもしれない。ある人は可能でも、他の人は不可能かもしれない。それも具体的な方法が分からないと、判断できない。結局、骨折り損の草臥れ儲けかも知れない。だが確かめない事には、話も始まらない。
 ――結局、この足で行き、この目で確かめるしかない。
 不意に、心の裡に黒いリルが吹いた。この感じは覚えがある。戦争と疫病の神ネルガルだ。
 ――ギルガメシュよ。エンキドゥだが、試練に失敗した。
 ああ、やはりエンキドゥは失敗したか。振り返ってはならぬという試練は、想像以上に忍耐力を強いる。英雄でも凡人でも難しい。特殊な精神の持ち主でなければ不可能だろう。
 ――試練は一度切りだ。エンキドゥは冥界に留まる。だがこちらから話をする事は可能だ。
 無論、ギルガメシュは、エンキドゥとの会話を望んだ。
 ――以降は私の許可なしで、話せる様にしておく。だがエンキドゥからは話せぬ。
 神々ではないから、会話は一方通行となる。こちらからは何時でも話せるが、向こうからは話せない。向こうは呼び出しが掛かった時のみ、会話ができる。なぜこんな仕組みになっているかと言うと、生者が死者に煩わせられないためだ。そうでなければ、地上は大変な事になる。
 だが神々には煩わせられる様だ。実はギルガメシュは、そこが納得行かないが、この仕組みを作ったのが神々なので、諦めている。故に神々からの会話は拒否できない。何時だって神々は、勝手に決めて、一方的に宣告する――友の死さえも。
 ――エンキドゥと代わろう。
 戦争と疫病の神ネルガルが立ち去ると、心の裡によく知る気配が、影となって現れた。
 ――ギルガメシュよ。
 エンキドゥの声が裡側で響いた。数日ぶりだと言うのに、懐かしささえ感じだ。
 ――エンキドゥか。具合はどうだ。大いなる地の様子はどうだ。
 ギルガメシュが答えると、エンキドゥは言った。
 ――身体がないのは変な感じだが、苦しくない。大いなる地は暗く、どこまでも冷たい。
 そうか。話に聞いていた通りだな。その後、エンキドゥは幾分、恥じる様に言った。
 ――すまぬ。試練に失敗した。
 それは仕方ない。想定の範囲内だ。だがどうしくじったのか、訊きたい。
 ――一問目でしくじった。
 ほう。それはどういう問題だったのか。
 ――後ろから女に声を掛けられた。
 ――それでどうした。
 ――振り返った。
 ――そうか。
 ギルガメシュは笑った。そう言えば、エンキドゥは女が弱点だった。我慢しろと言っても無駄であった様だ。むしろエンキドゥらしくて清々しい。神々の決めたルールなんて糞喰らえだ。一問目で、あっさり試練から落ちるエンキドゥは、微笑みさえ誘う。
 ――もう一緒に旅に行けない。冒険できない。
 エンキドゥは淡々と言っていたが、その痛みは誰よりも感じた。
 ――ああ、分かっている。後は任せろ。
 するとエンキドゥは無感情に言った。
 ――大いなる地という処は、どこまでも冥く、闇に溶けてしまいそうだ。
 今、気が付いたのだが、エンキドゥの影は薄かった。存在感が希薄だ。
 ――どういう事だ。
 ――地上で我の事を覚えている者が、少ないからだろう。
 ギルガメシュは危機感を持った。英雄は忘れ去られた時、真に死ぬ。
 ――安心しろ。エンキドゥ。我が不滅の名声を打ち立てる。誰もお前の事を忘れやしない。
 それは本気だった。人の歴史が続く限り、語り継がれる物語を紡いでみせる。それだけの内容にしてみせる。それが二人の戦いであり、神々に抵抗した英雄達の冒険だ。
 ――ああ、冥い。ここは光もなければ、温かさもない、暗く、冷たく、乾いている。
 ギルガメシュは戦慄した。これがエンキドゥなのか。ここまで変わるものなのか。
 ――ウルクに帰ったら、我らの冒険を人々に伝える。纏めて文字と言葉で残させる。
 ――ギルガメシュよ。頼む。
 エンキドゥとの対話は終った。ギルガメシュは独り旅路を急いだ。
 ギルガメシュはエンキドゥの事を想い、涙を流した。そして野原を彷徨い、呟いた。
 「我も死ぬと、エンキドゥの様になるのか」(注29)
 悲しみが裡に入り込み、段々死ぬのが怖くなって来た。人は死ねば、冥界に行く。これは定めだ。これを超克するには、神になるしかない。だがその道は選ばないと決めた。死ぬならば、人として死に、英雄として生きよう。だが万が一、英雄として生きられなかったとしたら。
 ――それは怖いな。何としても避けたい。
 ギルガメシュは死を恐れて、荒野を彷徨った。そして道を急ぎ歩いた。夜になり、山の狭間にさしかかると、無数のライオンどもを見て、初めて恐怖した。怖気付いた。
 ――我に流れる人間の血のせいだ。
 夜空に輝くシンに顔を向け、鼻の上に右手を置いた。
 ――月神シンよ、我を守り給え――
 果たして願いは聞き入れられた。
 夜を想わせる静かな旋律が流れ、雨が降りた後に漂う空気と似た香りがした。黒髪黒眼の優美な横顔を見せる男神シンが現れた。質素なカウナケスを腰に巻き、白い衣を纏っている。そして黄金の後光の輝きは、温かさに満ちている。だが月神シンは、全ての顔は見せない。
 ――ギルガメシュよ。いつも兄が世話になっている。
 月神シンは言った。その声は妙なる音楽の様であった。
 ――太陽神シャマシュには、迷惑ばかり掛けている。
 ギルガメシュが答えると、月神シンは微笑んだ様だった。
 ――そなたが謝る事ではない。全ては神々がする事。
 ギルガメシュは、月神シンに底知れない深さと広がりを感じた。月神シンは、この世界の始まりから終わりまでを司ると言う。それは月の運行によって、決まるものらしい。
 ――承知した。だが今は月神シンを頼るより他はない。
 ギルガメシュが答えると、月神シンは言った。
 ――夜の間は守ろう。そして夢の眠りで、そなたの悲しみを取り去ろう。
 今は、月神シンに委ねるのがよいと思った。
 ――そなた達の行い、全て見ていた。強く心を動かされた。これはその礼だ。
 夜の間、月神シンは静かにギルガメシュの近くに横たわった。そしてギルガメシュは穏やかに眠り、夢から醒めた。ギルガメシュは夢の中で、ズィに満ち溢れ喜んだ。
 起き始めるとまだ夜明け前だった。黄金の斧を手に取り、帯から黄金の剣を抜いた。全て前の戦いから使っているミッタだ。黄金の斧はエンキドゥから受け継いだ。
 ギルガメシュは、矢の様な速さで、ライオンどもの中に駆け下りて行った。そしてあれほど恐ろしかった筈のライオンを、全て斬り斃した。
 ライオンどもを斃すと、渡る事の難しい海があった。水面にはシンの横顔が映り、ギルガメシュに優しい微笑を浮かべていた。手で掬って飲んでみると、水は苦かった。死の海だ。
 ここを越えると、マーシュの山がある。その向こうには忘れ去られた園がある。だがその前に蠍人間がいる。蠍人間は、マーシュ山と忘れ去られた園の番人だ。
 ――月神シンよ。この海は渡る事が難しそうだ。
 ギルガメシュは、鼻の上に右手を置いて、心の裡で言った。
 ――あそこに巨木がある。斧で切り倒して、丸木舟を作れ。
 分かった。それで行こう。切り倒すのは簡単だが、中をくり抜くのが手間だ。
 ――それは仕方ない。櫓を作る事も忘れるな。
 ギルガメシュは、月神シンに礼を言うと、早速斧で巨木を切り倒して、枝を切り落した。適当な長さの枝から、櫓を削り出した。後は一日掛けて、木の中をくり抜いた。どうにか座れる深さまで掘ると、試しに水面に浮かべてみた――思ったより悪くない。
 「リルが吹いている」
 ギルガメシュは、櫓を持つ手を止めた。水面は波で乱れている。
 ――今日は止めておけ。明日になれば凪ぐ。
 分かった。そうしよう。ギルガメシュは、月神シンに従った。翌朝、水面が凪いだので、丸木舟に乗って漕ぎ出した。暫くは問題なかったが、そのうち波を被る様になり、何度も転覆しかけた。荷はしっかり縄で縛り付けていたが、水に濡れて、幾つかの荷が駄目になった。
 ――一体どれくらい掛かるのか。
 ギルガメシュは焦りを感じた。だが程なくして、遠くに山が見えてきた。まだ霞んでよく見えないが、天まで届く壁の様に聳えている。あれがマーシュ山か。
 目的地が見えたので、ギルガメシュは櫓を漕ぐ速度を上げた。だがあまりに大き過ぎて、いつまで経っても、近づいた気がしなかった。
 それから三日経過した。疲労困憊したが、どうにか海岸に辿り着いた。さしものギルガメシュも身を投げ出し、砂浜に倒れた。
 ――生きているのが不思議なくらいだ。
 独りは辛かった。エンキドゥがいない事は大きい。もう旅の途中で、あの陽気な鼻歌を聞く事もできない。どちらかが挫けた時、お互い励まし合う事もできない。
 ――このまま眠ってしまいたい。
 体力の限界まで使い果たしたが、程なくして身を起こした。いつまでも寝ている訳にはいかない。渡る事が難しい海は越えた。次はあの山だ。ギルガメシュは歩き始めた。

 双子山が見えて来た。マーシュ山だ。黒い山体に紅い光が流れ、白い蒸気に覆われている。硫黄の匂いと熱気が、リルに乗ってこちらまで漂って来る。とても人が立ち入れる感じはしない。死の山だ。
近くに辿り着くと、黒い二子山はその両端で、曙光と日没を見張っており、その頂きは、大いなる天にまで届き、その麓は大いなる地にまで達していた。
 そして蠍人間共が、双子山へと続くその途上で、門を見張っていた。その猛々しい姿は恐ろしく、その姿は死だ。
 そしてギルタブルルの紅い瞳の輝きが、山から川の様に流れていた。その全てが、蠍人間の紅い眼の輝きだった。一つ一つは小さいが、信じられない数が集まって流れている。気味が悪い事この上ない。近付けば、近づく程、その恐ろしさが増した
 道を登って、ギルタブルルの姿をはっきり見た。全身が黒い鱗で覆われ、太くて長い尻尾が、先で二又になっていた。手にも二又の槍を持ち、太くて長い尻尾を揺らして、威嚇している。
 ギルガメシュは、三分の一が人間のため、恐怖した。だがギルガメシュは勇気を出して、蠍人間共に声を掛けた。するとギルタブルルは、自分の妻に向かって叫んだ。
 「こちらに来る者は、身体が神で出来ている」(注30)
 蠍人間の妻は、自分の夫に向かって答えた。
 「彼の三分の二は神、彼の三分の一は人間です」(注31)
 ギルタブルルはギルガメシュに向かって呼び掛けた。
 「神々の子よ、なぜお前はこんな遠い処までやって来たのだ?なぜお前は渡ることの難しい海を越えて、私の処までやって来たのだ?お前の来た目的を知りたい」(注32)
 ギルガメシュは答えた。
 「死から遠く、永い命を持つウトナピシュティムに会うために来た。生と死の事を聞きたい」(注33)
 蠍人間はギルガメシュに向かって言った。
 「ギルガメシュよ。それを為した者は誰もいない。山の通路を越えた者も誰もいない。十二ベールのところで、暗闇は深く、そこには光がない。日の出には、光が射すが、日没には光がない。日没は死だ」(注34)
 ギルガメシュは答えた。
 「悲しみと苦しみがあろうとも、湿りがあろうとも、渇きがあろうとも、溜息と涙があろうとも私は行くのだ。さぁ、山の道を開けよ」(注35)
 ギルタブルルは、語るために口を開き、ギルガメシュに向かって言った。
 「行けギルガメシュよ。マーシュの山を越える事を許そう。山々と山地を越えて行け。つつがなく、お前の足がお前を連れ戻す様に、山の入口はお前に開かれる」(注36)
 ギルガメシュは蠍人間の言葉に耳を傾けた。そして太陽の道に沿って行った。
 一ベールを過ぎると、暗闇が深く、そこには光がない。前も後ろも見る事ができない。
 二ベールを過ぎると、暗闇が深く、そこには光がない。前も後ろも見る事ができない。
 三ベールを過ぎると、暗闇が深く、そこには光がない。前も後ろも見る事ができない。
 四ベールを過ぎると、暗闇が深く、そこには光がない。前も後ろも見る事ができない。
 五ベールを過ぎると、暗闇が深く、そこには光がない。前も後ろも見る事ができない。
 六ベールを過ぎると、暗闇が深く、そこには光がない。前も後ろも見る事ができない。
 七ベールを過ぎると、暗闇が深く、そこには光がない。前も後ろも見る事ができない。
 八ベールを過ぎると、暗闇が深く、そこには光がない。前も後ろも見る事ができない。
 九ベールを過ぎると、ギルガメシュは北風を感じた。何かが起きている。だが顔が強張った。暗闇が深く、そこには光がない。前も後ろも見る事ができない。
 十ベール過ぎて後に、北風が止んだ。道の出口に近づいた。十ベールの距離だった。
 十一ベールを過ぎると、太陽の光が射して来た。
 十二ベールを過ぎるとそこには光があった。(注37)

 ギルガメシュは洞窟を抜けると、前方に石化した木々があるのを見て、まっしぐらに走った。後方から強いリルが吹き、背中を後押しした。丘の上に立つと、眼下の光景に目を奪われた。
 そこは忘れ去られた園だった。周辺部の木々や植物は石化して、崩れていたが、中心部はまだ生きていた。今は地上にない見知らぬ草木が生い茂り、その種を保存していた。
 ここには大洪水以前の世界が保存されていた。忘れ去られた園は、全ての始まりの園であり、全ての動植物がここから出て行った。そして園だけが残されていた。今は手入れする者もなく、土とリルとシャマシュに任せるままだった。
 ギルガメシュは独り、園を歩いた。左には、紅玉石で出来た低木があり、葡萄のツタが伸びていた。そして葡萄の実が垂れ下がり、見るからに好ましかった。右には、青玉石で出来た低木があり、青葉を付けていた。これも葡萄の果実を付け、眺めるのに心地よかった。
 忘れ去られた園の中心には、大きな霊樹があり、黄金の果実を実らせていた。ギルガメシュは近づいたが、ある種、近寄りがたい霊圧を感じた。
 ――この霊樹、神性が高い。
 人でも神でもない木だったが、間違いなく神性があり、大いなる天に連なる眷属だと分かった。ある種の自然神かも知れないが、神々に従属している様にも見えない。あまりに古い時代に創られて、そのまま役割を失った神なのかも知れない。
 ギルガメシュは、あの黄金の果実が気になったが、手を出すのは止めた。裡なる神性が、それはもう必要ないと告げていた。その後、独りで園を歩いたが、誰もいなかった。もう長い間、人が足を踏み入れた形跡はなかった。本当にここは、忘れ去られた園だった。
 ――ここで一晩休もう。
 ギルガメシュはそう考えると、野宿の支度をした。残りの食料も少なく、本来であれば、調達の必要があったが、不思議とここでは腹が減らず、食べる気も起きなかった。そしてあの霊樹から、仄かに瞬く光が、夜になっても消えず、より輝きを増して、目を奪った。
 ――あれは生命の光だ。あれのお陰で、元気なのだ。
 ギルガメシュは得心がいった。あの霊樹の近くにいれば、活力が得られる。今晩はここで寝て、回復に努めよう。そして丘に寝転がると、満天の星空が見えた。
 ――エンキドゥよ。傍にいるか。
 ギルガメシュが心の裡で呼びかけると、傍らにエンキドゥの影が見えた。
 ――エンキドゥはここに。 
 生気のない、虚ろな表情を浮かべている。だが前回よりも、さらに影が薄くなった。
 ――そちらはどうだ。大丈夫か。
 ギルガメシュがそう尋ねると、エンキドゥは無言で見つめ返した。どうやらあまり話したくないらしい。ギルガメシュは話題を変えた。
 ――ここは地の果ての様だ。だが世界の始まりの地でもある。
 手で周りを指し示すと、エンキドゥの影も周りを見た。
 ――ここは何処だ。
 ――忘れ去られた園だ。
 ギルガメシュが答えると、エンキドゥの影は呟いた。
 ――忘れ去られた園……。
 それはある種、エンキドゥにとって、不吉な言葉を孕んでいた。
 ――全てはこの園から始まり、そして全てに広がった。
 ギルガメシュは続けた。
 ――ここは大洪水前の世界が残されている。恐らくもう幾つも残されていないだろう。もしかしたらここが、最後の一つかもしれない。
 貴重な場所だが、どこか寂しく、世界の終りの様に黄昏ていた。恐らく永い時間を掛けて、石になり、砕けて、リルに散って行くのだろう。人の歴史に始まりがあり、終わりがあるならば、この忘れ去られた園は、それ以前からあるものだ。記録の外側にあるものだ。
 ――ここも我らの冒険に記されるか。
 ――ああ、勿論だ。
 ギルガメシュは力強く頷いた。すると、エンキドゥの影が初めて笑った様に見えた。
 ――そうだ。これは我等の冒険だ。まだ続くぞ。
 ギルガメシュも微笑んだ。いつしか眠りに落ちた。そして星の夢を見た。覚めた。
 明け方、遠くを見ると、赤い荒野が広がっていた。園の外側は手付かずの大地が広がっていた。この先に行けば、また人が住んでいる地域に行き当たるのだろう。ギルガメシュは一度だけ、忘れ去られた園を振り返ると、旅を再開した。

                          第九の粘土板 了

『我が友エンキドゥ~いつかのどこかの誰かのための物語~』
第十の粘土板 酒場の女将シドゥリ、あるいは船頭ウルシャナビ 10/12話


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