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いよいよ1ヶ月を切った2024年問題 業界の本音、ドライバーの本音は速度制限緩和なんかじゃない

いよいよ法施行まで1ヶ月を切った「#2024年問題」

時間外労働の上限規制自体は2018年の働き方改革で導入され、月45時間、年360時間までという上限規制が大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から導入された。
だが、建設、物流、医師の業界では長時間労働が常態化して実態と大きくかけ離れているのもあり、上限規制を直ちに導入するのは困難として5年猶予され、ようやく導入されることとなった。

この問題をについてメディアなどに出演し、自らもトラックのハンドルを握ったことのある、ジャーナリストの橋本愛喜さんのもとには、「4月以降、トラックを降りる(辞める)」という声や、「副業を考えている」というドライバーの声が届いているそうです。

副業。

実は今から20年近く前に、自分は副業を考えたことが一度ありました。
実際に考えたが、副業を行うのは止めました。

それは当然ですが、私たちトラックドライバーにとって、「寝るのも仕事、休むのも仕事」だからです。
無理してトラックドライバー以外の仕事を行い、翌日に疲れを残し、まともな睡眠時間を取らない状態でトラックに乗るということは、翌日本当に命の危険を感じるほどの眠気に襲われるだろうな、と思い、止めました。
その後、今より景気が良かった世相もあり、とにかくガムシャラに働きまくり、副業をやらなくても大丈夫な賃金を貰うことになりました。

そのような副業やるのは危険だ、という考えは、長年ドライバーをやっている人間ならば、いやドライバーをやったことのない人でも想像がつくでしょう。

1990年の物流2法における「規制緩和」。

これにより、業界のバランスが崩れた。
自分もトラックを乗り始めた頃に、よく先輩からそのような話を聞きました。

規制緩和により業界に新規参入しやすくなったことで、それまで4万社ほどだった運送事業者が6万3000社に急増。多重下請構造ができあがったうえ、翌年にはバブルが崩壊。熾烈な荷物の奪い合いが起きた。

#労働集約型産業 (#人間そのものによる労働力による業務の割合が大きい産業)である業界は、運賃を下げ、検品や仕分け、棚入れなどの付帯作業を「おまけ仕事」として提供することで、競合他社との差別化を図るようになり、結果、これまで以上に過酷なのに稼げなくなったのだ。

検品や仕分け、商品の棚入れ、と聞いてもドライバー以外の人にはピンとこないかもしれません。
ですが、この付帯業務をトラックの運転以外でも当たり前のように押し付けてくる荷主、そして当たり前のように行ってきた(もちろん荷主によってこのような付帯業務を行っていない荷主もある)トラックドライバー。

「それでも稼げるなら」とハンドルを握り、荷物を触り、膨大な数の商品の検品などを行うトラックドライバー。
それでもハンドルを握り続けてきたのは「この仕事が好きだから」。

この働き方改革で単に時間外労働を制限するだけでは他産業との賃金格差が一層進むだけであり、労働時間を短くしても生活に必要な賃金が確保できるように賃金体系の見直しこそが本当の働き方改革ではないのであろうか。

国から発表される「働き方改革」の改善案は、毎回毎回「現場の想いとのズレ」「現場が最も望んでいる事とのズレ」があり、自分のような政治運動を行っている人物だけではなく、政治に関心のないドライバーですら全く国の政策には期待していない人たちばかりだ。

「生活より荷物」
「いのちより経済」

この考え方を国や荷主、消費者が改めない限り、野村総合研究所が発表した「2030年には今の荷物より30%の荷物が全国に届かなくなる」という事が現実になるでしょう。

以下は、ジャーナリストの橋本愛喜さんの記事より抜粋です。

「現在までの物流は、ドライバーたちの「トラック好き」に甘えてきた。過酷な環境や理不尽な現場でも、彼らのトラックへの愛情によって物流は支えられてきたのだ。
働き方改革は、そんな疲弊したドライバーの「労働環境を改善する」ためのものではなかったか。労働時間短縮で下がった賃金を、本業終業後さらに体を酷使して補填させたり、ドライバーから、大好きな仕事の現場を奪ったりすることが「働き方改革」なのだろうか。
国が打ち出す2024年問題の解決策は、外国人労働者や女性トラックドライバーの受け入れ、モーダルシフトに自動運転車の開発にと、枚挙にいとまがない。が、これは「運び方改革」ではなく「働き方改革」である。本来多様化すべきは「荷物を運ぶ手段」ではなく、「ドライバーの働き方」ではないのか。
労働時間だけ短くすればいい、人材が足りなければよそから連れてくればいい、機械化すればいい、とするのではなく、地域差や輸送距離、運ぶモノに合わせ、今いるドライバーの働き方を多様化し、働きやすい環境を作らなければ、新しい人材どころか、現在いるドライバーすら失うことになりかねない。
「持続可能な物流」というのは、そういうことを言うのだと、現場を見続けて強く思う。」


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