ミュシャのリトグラフを買った話
ふと書店に立ち寄った際に、書店脇のイベントコーナーに絵が飾られているのが目に付いた。
その中にミュシャのリトグラフがあり、僕は立ち止まって、思わず衝動買いしてしまった。
上の写真が購入した物なのだけど、めちゃくちゃ小さくて額縁のサイズとのギャップが、なんかかわいい(サイズ比較のために万年筆(ペリカンM600)を並べている)。
ミュシャは好きな作家のひとりである。
リトグラフというのは版画の一種であり、ミュシャは多くのリトグラフを残した作家だった。版画は一点物の絵画と違い、量産できるため、大衆向けに好んで制作された(日本の浮世絵や美人画なども同じだ。町人向けに大量に刷られたものが多かった。それらは読物の表紙などにも使用された)。
量産と言っても、刷ってるのは熟練の職人なので、ハンドメイドであることに変わりはないだろう。色使いなどには作り手の個性も表れるだろうから、これは立派な芸術品だと思う。リトグラフは単なるレプリカではない。
さて、僕が購入したリトグラフは小説の表紙用に制作された物らしく、ミュシャがまだ存命だった1900年頃、職人によって刷られた作品とのことだ。お店の人曰く、ミュシャ本人が監修したのだとか。
なるほど。そう言われれば、よく見ると絵の端っこにミュシャのサイン(印字されたもの)が確認できる。
一家に一枚くらいこういう絵が飾られているのも悪くないと思う。インテリアとしては実に洒落ているし、ハンドメイドならば愛着も湧きやすい。
しかし、実際に購入する人はあまりいないんだろうなぁ、と思う。
というのも、その場にはもちろん、他にもたくさんのきれいな絵が展示されていたのだが、そのほとんどが売れておらず、半額の値札が貼られているものも少なくなかったからだ。
いずれも優れた技術で作られたことは間違いないのだが(ニューヨークの工房で製作されたものもあるのだとか)、にもかかわらず売れないというのは、要するに需要がない。なんとも寂しい。思いがけず、絵を売ることの難しさを思い知らされた気がした。
「絵って、売れないなぁ。今更だけど」
苦労して制作された物が売れずに、半値で置かれている光景は何か、心にぐさりと刺さるものがある。
金のないところに文化や芸術は生まれない。と誰かが言ってたなぁ。誰だったかは覚えてないけれど。
僕は今、ミュシャのリトグラフを家宝のように飾っているわけだけど、それを眺めながら、いつか自分にもこんな絵が描けたらいいのになぁ、なんて思っているのだけど、それはさておき、願わくばもっと多くの人が絵画などを身近に感じて、それを買いたいと思えるような世の中になればいいのになぁ、と思ったりした。誰かが作品を買えば、それでクリエイターは生活できるようになるし、クリエイターが豊かになれば芸術の質も自ずと向上するはずなのだから。
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