チャングー界隈は在住の外国人が多く、長く住んでいると色々話をするようになる。
そんな中のひとりが、各国からインドネシアに興行にくるアーティストのコンサートを手掛けるプロモーターで、私の中では通称”プロモーションおじさん”。先日ちょうど、イギリスでのミーティングから帰ってきたところだった。年内にジャカルタの大規模施設で大きなコンサートがあるらしい。
そんな大きな案件、おもしろそうだ。
「おもしろいことばかりじゃない、大変なことの方が多いよ」
まあそうか。規模が大きくなれば問題も大きくなる。
最も大変なことは何かと聞いてみた。
「まずはセキュリティだ。何百人も警備員を配置するんだけど、それでも足りないよ。会場に入れなかった人たちが、場外にあふれかえって、そりゃもう大変なことになるんだ」
なるほど。
以前、サーフィンレッスンに来られていたSさんの、ジャカルタでの体験談を思い出した。
有名アーティストのコンサート会場を車で出てきたところ、場外は驚くほどの群衆が集まっていたという。
いたるところ火炎瓶が煙をあげ、入場できなかった人々が暴徒と化しており、前に進むのが困難な状況だったそうだ。
困ったなと思っていると、突然、前方から両腕でかかえるほどの大きな石を持った男が近寄ってきて、フロントグラスに投げつけて来た。
フロントグラスは粉々になった。
これはいよいよ危ない。全力でアクセルを踏んで群衆を突っ切って暴走して逃走し、どうかこうか助かったのだそうだ。
「フロントグラスがないとね、風がすごいんですよ。もう、目を開けていられなくて。前が見えないの」
笑い話みたいに話してくれたが、状況を想像すると震え上がってしまった。
そんな暴動みたいなことが今も主催側を悩ませているのだな。
「あとはね、これも本当に頭が痛いんだけど、チケットの問題だよ。
高額で転売チケットが出回って、その対応が大変なんだ」
おおっ!高額のチケット転売が問題だと、日本のニュースで見たなあ。
「高額ってだけじゃないんだ、それが、偽物のケースが少なくないんだよ。こないだの●●のコンサートは特に、プレミアムチケットだった。世界中からジャカルタの会場に集まって来た。ヨーロッパからも、転売された高額チケットを手に大勢来ていたんだが、それが偽物だったんだ。
こっちではどうにも対処しようがないんだよね、かわいそうだけど。偽物のチケットでは会場には入れられないからね」
私は広告制作の仕事を長年やってきて、自分の仕事がすごく好きだ。
今も面白いと思っていて忘れがちだけれども、丁寧に思い出していくと、その都度乗り越えるべき何かはあったなあ。
なにをするにしろ、色々あることを思い出した。
それでも、それが面白いから、やらずにはいられない。
そんなものなんだろう。
プロモーションおじさんとそんな話をして少し経った先日、日本領事館からこんなニュースがタイムリーにも届いたのでシェアします。