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「津軽海峡・秋景色」序章

 コミックマーケット102で発行する拙著「鉄道150年記念 JR東日本パスでゆく津軽海峡・秋景色」の序章を、試し読みを兼ねて公開する。


【序章】JR東日本パス

 
 「鉄道開業150年記念 JR東日本パス」
 大きく書かれたA4のフライヤーを、駅のちらしラックから気まぐれでピックアップした。8月のことだった。

 このパスは、2022年10月14日~27日の2週間、フリーエリア内のJR東日本全線と民鉄7社の路線が3日間乗り放題になる。しかも新幹線や特急の指定席に4回まで乗ることができる。これで22150円。JR東日本がずいぶんと太っ腹企画を打ってきた。

 正直、駅置きのちらしというのは暇つぶしに眺めることが多い。実際にその商品を買うところまではなかなかいかない。
 しかし今回は違った。ちらしの内容を読んだ途端、コロナ禍で押さえつけられていた「鉄旅欲」が一斉蜂起した。
 鉄分が足りない、鉄分を寄越せ。
 私はすぐにスケジュール帳を開いた。

 仕事の都合上、3日間旅に出るとしたら、金曜の夕方に会社のある東京を出発し日曜夜に帰宅、もしくは土曜の早朝自宅を出て月曜の朝東京に帰着しそのまま出社、という日程になる。いずれも新幹線を利用すれば、そして鉄道に乗るだけならば、JR東日本管内、割とどこにでも行ける。
 
 私はパスの購入を決めてから、行先を思案した。切符ありきの旅だ。当初は、10月1日に全線再開通する只見線に乗りに行こうと考えた。ずっと乗ってみたかった路線である。

 しかし生来の貧乏性がささやいた。
 「乗り放題なんだから、どうせならもっと東京から遠い所に行けばいいのに。その方がお得じゃね?」
 ――と。確かに。

 このJR東日本パスは、遠くに行けば行くほど、新幹線に(4回まで)乗れば乗るほどお得になる。せっかくの乗り放題、フルに活用したい。
 あけすけに言うと、得をしたい。只見線は東京から普通列車でも十分行ける距離にある。18きっぷの季節でも良いではないか。

 よし。JR東日本の最果て・青森へ行こう。パスで行ける一番遠くへ行ってやろう。
 数年前に青森を旅したときは、秋田から五能線で弘前に入り、津軽鉄道や弘南鉄道に乗った。
 ならば今回は、青森県でもまだ足を運んだことのない、下北半島や奥津軽へ行ってみよう。あの辺りの鉄道を乗りつぶそう。決まりだ。

 JR東日本パスはウェブ限定発売である。JR東日本の「えきねっと」システムからしか買うことができない。しばらく使っていなかったえきねっとにログインし、パスを予約した。同時に、往路の新幹線だけ席を押さえた。

 金曜日の17時20分に東京を発つ東北新幹線はやぶさ。座席を指定する画面で、最初に表示された8号車を選んだ。

 予約完了後に、8号車が「ビジネス車両」だと知った。列車内で仕事ができる、ビジネスパーソン向けの平日限定車両だ。追加料金はない。コロナ禍で生まれた人気サービスらしく、初乗車は楽しみだが不安もあった。

 私はいわゆる「意識高い系ビジネスパーソン」が苦手だ。パソコンのキータッチ音を高らかに響かせたり、オンラインミーティングで意味不明な和製英語を連発したり。「できるんですアピール」甚だしい人たちが乗っているのではないか。
 まあいい、それならそれで彼・彼女らの生態を観察し、ネタにしてやろう。「ビジネス車両潜入記」の一本でも書いてやろう。

 数日後、すでに付箋だらけの時刻表を睨みながら、2日目以降の新幹線指定席券も予約した。出発の3週間も前だというのに、日曜夜の上り列車はもうずいぶん席が埋まっていた。


 二泊三日の旅では八戸、青森市、龍飛崎を旅した。乗車したのは東北新幹線、八戸線、IGRいわて銀河鉄道、青い森鉄道、大湊線、津軽線、北海道新幹線(1区間のみ)。もちろん夜はサウナ付きのホテルに宿泊した。 

 「津軽海峡・秋景色」は、私にとって久しぶりの、全編文章による旅行記である。サウナ&グルメレポート(A4フルカラーペラ)も添付する。

 ご興味ある方はぜひ、夏のコミックマーケットでお手に取っていただければと思う。BOOTHでの通販は、8月13日以降を予定している。


「鉄道開業150年記念JR東日本パスでゆく 津軽海峡・秋景色」

A5版/52ページ/表紙フルカラー/フルカラーペラ付き
予価700円

8月13日(日)コミックマーケット102
東2ホール Vー15b「しろねこ帝国」

「津軽海峡・秋景色」表紙写真


 

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