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福島三部作〜悲劇への立ち向かい方

震災10年。私は当時岩手で被災し、家族こそ無事だったものの社員を一人亡くし、多くの悲報に接しながら復旧復興に力を尽くした。自身が当事者で、東京にいる者、被当事者との溝、ズレには心が痛んだ。原発事故、という意味では福島とそれ以外の被災県にも彼我の差があっただろう。日本の国難、国全体が当事者のはずなのに。
あれから時を経て、第三部が語るよう、多くの語られたがるが語られていない言葉が、ある。その言葉たちから、既に東京に居を移した私が、震災で何も失っていない人々が、何を掴み取ればいいのか。
当時の悲劇に涙することではあるまい。傷は確実に癒えている。我々はこの日本の苛烈な経験を追体験することで、非当事者としての非道さ、繰り返してはならない所作を学ぶべきか。事実に基づかぬ風評や中傷、当事者の心の痛みを想像できぬこと。第三部は、ほぼ学んでいないかのような日本社会と我々にもう一度それでいいのかと問いかける。演劇という、よりライブで生々しく現在を盛り込める手法は、胸に響く。鳴り止まぬ拍手、それぞれが重く受け止めたに違いない。
昨日の大余震。開演前に谷氏が丁寧に挨拶。震災を風化させず、困難により正しく立ち向かうために、今回の三部作上演は意義深いものだった。当日券にトライしてニ、三部当選。本当によかった。