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小松未歩さんの『恋心』の恋心を恋心さんとして考えた。

小松未歩さんの1つの曲に焦点を当て1時間時間語り合うラジオ。
 月に一度のこの企画もすっかり恒例化され10月下旬に開かれる『恋心ナイト』で8回目となります。
 今回の記事はその『恋心ナイト』で私が披露する話の原稿としてのものです。

基本的なストーリー

さて、まずはこの曲における私が思い浮かべている設定は以下のようなものです。 


久しぶりに会う別居中の夫婦。待ち合わせのカフェのテーブルにおいてある一枚の紙には
離婚届
と書かれています。
 決意を固めてはいたもののいざ旦那を前にすると胸がチクリ。
 それでももうやり直せない。これで二人の関係をきっちり終わらせよう。そうして夫の同意とサインをもらった私。
 ひとしきり話が終わると、席を立ち去っていく夫。そのうしろ姿を見送りながらひとつの想いが私のもとから去っていった。


といった話をイメージしています。
 「私」と「あなた」の話。基本的にはこれで良いのですが、さらにもうひとり登場させようと思います。

もうひとりの登場人物

この『恋心』という曲には人称代名詞として登場するのは

 私 と あなた 

の2人です。しかし密かに歌詞の中にもうひとりいるのです。人が。その人物は…

恋心さん

です。
 恋心さんて誰?と思われていると思われるので、もう少し詳しく言うと

 「私」の中にある「あなた」への恋心

です。
 名前がないので便宜上「恋心さん」とさせてもらいました。
 『恋心』という曲において、作詞した小松未歩さんは恋心を擬人化して表現しています。つまり作者公認の「恋心さん」なわけですね。具体的には最後の最後

意地もはれないほど 疲れ果てた恋心が
なじりもせず いま去って行くよ

の歌詞です。
 これ、人ですよね。恋心さんですよね。
 そんな恋心さんですが、意地をはれなかったり、なじりもしなかったわけですがその相手は誰でしょうか?
 私の答えは…。

 私(主人公)の心たち

です。

恋心さんのストーリー

 自尊心、自立心、猜疑心、依存心などなど。「私」のなかには色んな心が入り乱れています。
 そんな心たちと同じく恋心さんは「私」の中にあり「私」が最後まで離婚に踏み切ずにいた、躊躇させていた心理です。
 それ以外の心理たちからしたら離婚しかないと結論付けていたなかで恋心さんだけが反対し続けた状態。
 恋心さんは「あなた」との婚姻を継続するうえでのさいごの砦として孤独に頑張ったわけです。
 しかし…。健闘むなしく「あなた」が離婚届を書き、the end。
 「私」はもちろん、恋心さんもその結果を見届けて孤独な戦いが終わったことを悟ります。そしてもう「私」の心のなかにはいられない、と「あなた」の背中を追いかける。
 その去り際、恋心さんはなじりもせずに無言。恋心さんはもともと「私」のなかの気持ち。「私」を飛び出しては存在しえない。
 「あなた」の背中に追いつくことなく恋心さんは消えていきます。
 意地をはれないくらい疲れていたけど、さり際にそれまで反目していた心たちをなじりもせず、振り向きもしないですっと消えていったのは恋心さんの目いっぱいの意地だったのかもしれません。

恋心さんの視点ではないか?

さて、勝手に恋心さんなんて人物を持ってきたのですが、これによって個人的に解釈を都合良くできる箇所があります。
 それは…

 すっかりあか抜けた二人

です。
 この二人は当然「私」と「あなた」ですがあか抜けた、とは客観性の強い言葉です。
 登場人物においてこの二人をあか抜けた、と言えるのは久しぶりに「あなた」と、そしてあらゆる感情を抱えて「あなた」と対峙する「私」を客観性を帯びた視点で見られる恋心さんだけなのではないか、と思うわけです。
 どのくらい「あなた」に会っていなかったのかはわかりませんが、恋心さんはずっと「あなた」への気持ちを変わらずに持ち続けていました。変わらずに、です。
 しかし「私」や「あなた」そして互いを見る二人の気持ちはガラリと変わってしまっていた。それをある種の二人の成熟として捉え、そして自分だけ変われていないという恋心さんの負い目もあり、あか抜けたという言葉になったのではないか、なんて思ったりします。

最後に…

 そんな恋心は「私」の心から去っていったわけですが個人的には「あなた」へついて行ったイメージです。
 人によっては去っていく「あなた」に背を向けて去っていくようにイメージするかもしれませんが、私は最後まで残っていた恋心にせめてもの情けで心だけでも「あなた」のもとへと向かわせたいのですが、ちょっと甘いですかね?

 と、こんな感じで小松未歩さんの『恋心』を解釈してみました。
 寂しいといえば寂しいけど後味は悪くないといった印象です。皆さんはどうですか?

 ということで今回の記事は以上です。
 次回もまたよろしくお願いいたします。

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