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メニューのない店@鹿島屋(三田)

三田or田町駅から第一京浜を浜松町方面へ向かって歩くこと10分ほど。

交番の交差点裏あたりに店はある。

何時開店かよくわからなかったので、適当に夕方来てみたら閉まっていた。

「まさかもう閉店しちゃったのかな……」と不安に思ったが、赤提灯がそこそこ新しい感じだったので、秋田屋でウォーミングアップしてから再訪。今度は提灯も灯っていた。よかった。

創業ほぼ90年。

戦前。その頃の港区はどんなだったのだろうか。

8席くらいのカウンターにはカップル1組とテレビにかぶりついている常連さんが2人。テーブルは1つで常連さんと店よりは少し若そうな老婆2人が盛り上がっている。小上がりもあるが、ここはほぼ物置。

「あ、いらっしゃい」

老婆が笑顔で声をかけてくれた。お店の方だったのか!

大衆酒場で老婆2人が仕切っているって組み合わせはなかなか珍しいのではないだろうか。お邪魔します。

「あ、うちメニューはないのよ」

明るく教えてくれる老婆A。

ただ壁には値段はないが酒の種類が書かれている。

瓶ビールからはじめて、レモンサワーへ。

むー濃い。3杯くらいでいい感じになった。

続いて、アテ。

カウンターのタッパーに筑前煮っぽいのやらがいろいろあって、あとは名物の煮込みと焼き物。

わざわざメニューもいらないだろう。

大鍋には100年煮込み続けているような真っ黒い汁。そこに眠る看板メニューの煮込みをいただく。

「七味をかけてもいいかもよ」

現金が入ってそうな黒のアタッシュケースを抱えた常連さんが笑顔で声をかけてきた。

「あ、そうなんすか」

「そ、お店の方のオススメだから」

少し会話を交わしたが、メリケンサックを隠し持ってそうな見た目に反して、とっても気さく。美味しそうな焼き魚みたいなのを食べていた。そんなのもあるのか。

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続いて焼き物をお願いした。

すると老婆Bがすっくと立ち上がり、串を持って店外へ。

焼き台は外なのだ。よもや現役だったとは思いもしななんだ。

ちなみに、饒舌な老婆Aに対して、老婆Bはやや寡黙。もしかしたら姉妹と思わせて、雇用関係があるのだろうか。

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食べている途中にパシャっとしたので、ややアレだが美味しかったです。

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酔いも回って、徐々に店の雰囲気に慣れてきた。

しばしテーブルの常連さんと一緒に老婆たちと談笑。

老婆もといお母さんたちが、お二人とも明るく、オープンなお人柄。必然、店も居心地がいい。昔から変わらぬ手作り感は、AI効率化万歳の令和時代にあって、丁寧さが際立ち、たまらない個性になっている。

「また来てよ、毎日来てるから!」とはテーブルの常連さん。

いい店だが、お母さんたちの年齢を考えると、あと何年続くのか……と考えてしまう。私の娘が訪れることは叶わないだろう。

また来よう。開店は17時半とのこと。

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