Day 2_騒がしい朝

 夜中2時。犬が猛烈に吠えている。延々と吠え続けている。犬に限らず動物は無駄吠えをしない。故に何か吠える理由があるのだろう。が、そんなことは関係ない。何時だと思っているのだ。黙れ。
 6時。夜明け前。今度はコーランがスピーカーからけたたましく、街に鳴り響く。レーでは少数派だが、この押し出しの強さはさすがイスラム教徒だ。7時。ようやく明るくなってきた。8時過ぎ、水道再開通。昨晩溜めておいたクソと小便を流す。念願のホットシャワーは100度近く、とても浴びることはできない。昨晩バケツに溜めておいた水と混ぜながら、なんとか髪の毛だけゆすぐ。多少さっぱりした。9時前、散歩に出る。バザールも眠りから覚め始め、ホウキで道を掃いたり、ゴミを集めている人がちらほら。路地に入ると2軒のチャイ屋並んでいる。客の少ない方に入る。壁にはイスラムのカレンダーみたいなのが貼られている。カシミール系の店だろう。ルイージみたいな店主がパンを焼き続けている。それを指差し、チャイもオーダーする。Rs35。ルイージは、パンにバターをたっぷり塗ってくれた。固いができたてだ。湯気立つチャイも一緒にすすると、体が温まる。濡れたままの髪で外に出たので、軽く凍りベジータのようになっている。だが、ヒマラヤの日光は強い。日向はすぐに暖かくなる。風邪もほぼ完治した。標高0mの東京、北京からやってきたので、ひとまず3500mの高地に体を慣らすのが先決だ。あまり行動せず、腹式呼吸を心がける。旅行者相手の店はシャッターが降りたままだが、野菜売りが店を開いたりと、活気が出てきた。昼はチベット料理屋でモモ。Rs100。うまい。
 あてもなく街を散歩する。バザールから15分ほど歩くと、途端にひと気はなくなる。ゲストハウスも見かけるが営業していないところばかり。路地で痩せこけた犬が凍りついていた。その屍体を見守るように別の犬が塀の上に佇んでいた。凍死か餓死かはわからないが、この寒さでは仕方ないだろう。春が来て溶ければ、別の犬か鳥が食べていくのだろうか。街にはたくさんの犬たちがいる。自宅でホットカーペットにへばりついて寝ている愛犬を思い出す。同じカテゴリーの生物とは思えない。
 18時過ぎ。ロータスが宿にやってきた。ハイテンションで、歓迎の白い布を首にかけてくれた。この風習はネパールと同じだ。6ヶ月ぶりの再会。「もっとワイルドじゃなかったか」と笑う。6ヶ月前に5000m超えの峠ですれ違った時は、こちらは10人いれば9人がラダック人と間違えるよな髭面の風貌だったので、到着早々のアンパンマンのような雰囲気にやや面食らったようだ。ともかく、明日からのチャダル の荷物をチェックしてもらう。服装はOKだが、靴下は4枚(もう2枚)は必要だという。寒ければ二重に履くし、汗をかくと冷えてしまうからだそうだ。問題は寝袋。モンベルのかなりどデカイタイプを持参したのだが、これでは耐えられないという。マジか。小さいのを追加で買うことも検討したが値段が高すぎたので、結局ロータスから、インド軍仕様の寝袋を借りることになった。
 細々したものは街で手に入れる。靴下2足Rs60。靴下より軽そうなゴム長靴Rs400。ロータス達ローカルはこのゴム長だけでチャダル を歩き通すそうだが、グリップが弱いので慣れてないと滑りまくるらしい。あまりに貧弱で不安だ。かさばるが軽いし、都度、登山靴と履き替えることにする。サーモスの水筒Rs.650。蓋を開けて、耳を当てるロータス。音の漏れを確認しているらしい。さすが偽物。フェイスマスクRs50。気づくと街は真暗になっていた。明日は朝10時出発。宿で夕食にダルカレーを食べて寝る。

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まみれ

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