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学生が軍事訓練をする世界

ベトナムでは、大学の寮に住まわしてもらっているので、大学生の生活が観察できて結構面白い。

最近は軍事訓練の授業があって、男女問わず、銃の使い方や、戦術について、戦うための基礎戦略を一通り学んでいる。留学生は免除されるが、ベトナム人は必須科目である。2週間の集中コースであり、コース履修中の学生は大学内の寮に寝泊まりし、2週間の間大学の外に出ることができない(祝日は例外あり)。

ある学生によると、この2週間のためには、約4百万 ベトナムドン、日本円にして2万4千円ほどもの出費がかかったという。主な内訳としては、カーキ色の制服、1日3食×2週間分の食費、お菓子、飲み物等々、、、。学生によっては、親には負担をかけまいと、この2週間の出費のために必死にバイトでお金を稼いでいる人もいる。

この2週間の軍事訓練は、学生によって反応は様々である。
「全然実践的じゃない。時代錯誤」
「最終日のキャンプファイヤーは感動的」
「この2週間は貴重な青春の思い出」
「寮にクーラーがないから暑くて死にそう」
「食堂の食事がまず過ぎる」

しかし、近頃は日中は40度近い猛暑である。この猛暑で、野外活動はさすがに学生に堪えているようだ。10㎏から15㎏ほどの銃を抱えて、外を走る訓練中には女子生徒が4,5人倒れ、救急車で搬送されるという事故があった。

また、滞在先の寮では、一部屋8人生活となるが、一人一台扇風機を持参しているそうだ。それでも、部屋の中では暑くて寝れなくて、外の廊下に扇風機を持ってきて、その前に椅子に座りながらなんとか寝ている学生もいるそうだ。私の友人は、「初めの6日間で4㎏やせた」らしい。

日本であれば、保護者からモンスターのようにクレームが来そうだが、私がいる地域では、まだエアコンがどこにでも存在するわけではない。学校、レストラン、カフェ、学生寮はたいてい、クーラーはなく扇風機が回っている。一般家庭でも、クーラーがないところは多い。

男子学生はさらに、大学卒業後に兵役が待っている。友人たちの話によると、もとは24か月だったが最近は18か月でよいということになったらしい。男性は強制であるが、女性は志願制である。兵役法によると、さまざまな免除事項がある。ある友人は、「近視であるため」、兵役に行かなかったという。

そして私は、兵役が義務である国出身の人々に囲まれていることに気づく。ベトナムのほか、アゼルバイジャン、イランにも兵役がある。でも、兵役に参加させられる彼らは誰も戦いなんて望んでいない。「軍事行動」を行うことに縁なく育ったほとんどの日本人は、ぬるま湯につかった井の中の蛙なのだろうか。


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