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30代の医学部生活、1年目を終えて

年1回くらいは再受験生としての医学部生活を発信することが後続の方々への自分の務めかなとも思うので、簡単に1年目を振り返ってnoteを書きます。
まず結論は、トータルとして非常に有意義かつ久々に童心に返れて楽しい1年でした

<受験に関して↓>


授業

大学の授業に意味はあるか

昨今、
"大学の授業に意味なんてない"
"インターネットに無限のコンテンツが広がっているこの時代、自分だけでなんでも勉強できる"
とおっしゃる方もいます。
たしかに理論上はそうですし、医学ですらその例外ではないのかもしれません。解剖すらもVRなどを使えば疑似体験できるでしょう。とすると、医学部の授業には医師免許を取得するプロセス以外の意味はないのでしょうか。
僕の答えはNoです。

まず、"自分で勉強なんていくらでもできる"、と言っている人で本当に毎日熱心に勉強している人を僕はほぼ見たことがありません。こう言っている人の99%がおそらく一番サボっている医学生以下の勉強量しか確保できないと思います。
なぜなら人間というものは(少なくとも僕は)元来怠惰な生き物で、何の制約や縛りもなく自主的に勉強を何年間も続けることは困難だからです。

授業やテストが無ければ、
・ある症例を人にわかりやすく説明できるまで理解したり
・全身の骨を正確に英単語含め覚え切ったり
・化学の細かい計算を間違わずに何度も合わせたり
ということはなかなか自分一人だけではやらないものなのです。

アラフォーにもなってこんなに意志が弱いことは恥ずかしいことなのかもしれませんが、僕は強制的に勉強する仕組みを得られたという点だけでも医学部に入った意味があると既に感じています。

全体的な授業の感想

まず1年目は教養科目が多かったこともあり、授業やテストは想像より大変ではなかったです。ただし教養科目は対面かつ2/3以上の出席を求められるものが多く、その点においては時間を割かれはしました。
もちろん僕の場合は以前の大学で取得した数学や物理の単位が認定され科目負担が減ったことも楽ができた要因ではあります。

授業に関してはコンテンツ自体は素晴らしいこともありましたが、やはりそれらをわかりやすく体系化したり聴衆にデリバリーするという点においては(後述する英語を除き)ビジネスの世界や予備校と比べると大学教育は劣っていると言わざるを得ません。
ただそれでも、
・"心房と心室ってどっちがどっち?"ってレベルから1年間で生物や人体発生を勉強したり
・物理工学専攻だったのにエントロピーすらよく知らなかった過去の自分へのリベンジのように熱力学を学びなおせたり
・昔の自分なら全く興味がなかったであろう難民問題などの授業で一生懸命プレゼンや膨大なレポートを書いたり
と、非常に学びが多く成長できた1年間ではありました。

英語の授業がとても良かった

個人的に最も良かった授業は英語です。
時代が違うことと中高公立だったことも大きいのですが、僕が受けてきた学校の英語の授業は基本的には海外経験すらあるか怪しい先生が完全なジャパニーズイングリッシュで繰り広げ、発音の良い生徒は笑われるという日本の英語教育のダメなところを煮詰めたようなものだったので、今回の大学の英語の授業は非常に良かったです。
通常授業も両面ネイティブの先生に当たりその授業も自分にとってとてもためになったのですが、特にHsLP(Health sciences Leadership Program)と言う課外授業がこの1年間の授業の中で最も素晴らしかったです。
コンテンツはクリティカルシンキング、哲学、医療政策などがあり、正直クリティカルシンキングの授業はこのままコンサルの新人研修に使った方が良いんじゃないかと思えるくらい優れた内容でした。
僕は英語力がお世辞にも高いとは言えずHsLPについていくことがやっとなのですが(というかぶっちゃけ全然付いていけてない笑)、この授業をとったことで逃げ続けてきた英語に向き合う最後のチャンスだと思えたことがとにかくよかったです。2年生以降は英語にどのくらい時間投下できるか怪しいですが、引き続き医学と合わせて力を入れていきたいですね。

プレゼン、プレゼン、プレゼン

また非常に特徴的だと感じたのは、異常にプレゼンの授業が多かったことです。全て合わせるとこの1年間で10回以上プレゼン発表をしました。
僕は戦略コンサル出身なのでスライド作成やプレゼンは苦ではなく上手くでき、そのおかげで1年生の成績がかなり良く出たという旨味を享受できましたが、普通に現役で入ってきた子たちにとってはスライド作成のノウハウすら教えてもらえないままいきなりプレゼンすることは酷だと感じました(大きな声では言えないが、そもそも先生たちの中でもスライド作成の作法を知っている人が少ない)。
アクティブラーニング的な教育なのでしょうがあまりにプレゼン偏重であるので、基本的な型をまず教える必要がありますね。
ただそれでも医学生たちの吸収スピードはすさまじく、1年生の終盤には正直僕よりも優れたスライドを書いている同級生もいたように思います。

ギバーになる

医学部は噂の通り生徒同士の横の繋がりが強く、授業に対しても試験対策委員がしっかり機能していたり、互いに勉強を教え合ったりという文化があります。
自分も、渾身の試験対策プリントを作ったり、補習の勉強会で教えたり、時にはレポートを丸々見せたり(笑)、とそれなりに貢献したかもしれませんが、やはりそれも年齢が上だからこそ積極的にギバーになろうと自然と思えたのだと思います。
そして一般的な真理かもしれませんが常にギバーである姿勢を保つ方が、このような集団では心地良く生きられると再認識しました。
もちろんそのおかげで逆に自分もさまざまな点でクラスの友人からの恩恵を得て、この1年間授業を乗り切れました。

部活

僕はワンダーフォーゲル部というかなり緩いというかフレキシブルに活動できる部活に入っています。山自体には去年5,6回しか行っていないですがそのくらい薄い繋がりも許容してくれる場であります。
始めは仕事や趣味のクライミングのことも考え部活には所属しないでも良いかと思ったのですが、入ったことによって楽しく登山する機会も得ましたし、ここで先輩やOBの方と知り合えたので所属して良かったです。

前述したHsLPもある意味部活みたいなもので、ここから新たな知り合いが出来たりもしたので、再受験生の方などでも何かしら緩く所属しておくと楽しいかもしれません。

仕事、バイト

僕はこの1年間は、
・クライミング関連の仕事(ジムスタッフを月に数回と、実況解説などの単発案件)
・コンサルの業務委託(だいたい稼働は40%以下なので週16時間MAXとか)
を受けていました。
1年生の間は授業やテストが予想以上に緩かったのと、僕はがっつり部活をやっていなかったので、これくらい働いても医学部生活は全然乗り切れました。
周りにはもっと働いている人もいますし、バイトをせずに勉強を頑張っている子もいるのでまちまちですね。
ただ2年生はカリキュラムが結構きつそうなので多少貯金を減らしても仕事とバイトは抑えめで行こうかと考えています(と言いつつワーカホリックなので案件が決まったらがっつり働いてしまいそう、、、)。

友人

接し方/接され方

特に再受験生だと同級生がどう接してくれるのか不安に思っている人もいると思います。
僕も当初は、"年齢も離れているし、仕事やクライミングに時間を割きたいから、同級生達とはある程度ドライな関係でいいや"と考えていましたが、蓋を開けたらむしろ前の大学の時よりも同級生の友達といる時間が長く、仲良く過ごせました。
というのも、少人数で単一クラスである医学部は同級生と色んな場面で関わることが多く、良くも悪くも非常にムラ社会的にならざるを得ないです。イメージとしては医学部の1年生は高校4年生ですね。
ですので、うちみたいに現役割合が80%を超えるような医学部に再受験生が紛れ込んでしまっても、自然と現役生が友人になると思います。
もちろん、全員が超フランクに接してくるというわけではないですが、医学生は精神年齢がなんとなく高い人が多いので、変に当たられたりとか避けられたりとかは普通に接していれば無いとは思います(むしろ僕が一番精神年齢低い説まである笑)。
とにかく僕は編入ではなく1年生から医学部に入ったことで友人面でも大切な繋がりができたので満足しています。

若者文化を学ぶ

それと、シンプルに若者文化に直に触れることは日々勉強になります。例えば彼ら彼女らが日常でよく使う「耐える」や「渋い」などの言葉遣いにしても、おっさん/おばさんの世界だけで暮らしていたら使わないしニュアンスをはき違える気がします。
あとは僕は使っていないですが、「Be Real」などのアプリに若者たちがハマっている現象なども、素朴に彼ら彼女らの感覚を理解する手掛かりになって面白いです(Be Realでは通知が来た瞬間に写真をアップすることを求められる)。
僕が感じとった彼ら彼女らの特性の一つは「主体的に動いて目立つことはいやだけど、促されたら目立つことは厭わない」な気がしていて、この欲求を非常に上手く突いて半強制的に写真をアップさせる仕組みを作ったのがBe Realだと思っています。
社会への洞察という意味でも、この医学部生活では良い経験ができていると思っています。

とは言え、最近は僕がかなり感化されて若者ノリを出し過ぎている気もするので、多少反省しないとだめですね。

趣味

1年生の間は時間が結構あったのでテスト前を除けば週3回以上はボルダリングジムに通え、クライミングの力はだいぶ戻せたかと思います。
ただやはり平日休みが取りづらかったり、長期休暇明けにテストがあったり、長期休暇にそもそも授業が開講したりして、岩やツアーには以前よりは行きづらくなってしまいました。

2年生からもより一層忙しくなりそうですが、まずは日々のベースであるジムで登り込むことの時間を落とさずに、積極的に少しの休みでも岩に出かけたいと考えています。実際今も土日前後を上手く使って九州に岩トリップに来ています。
リードやトラッドも復活したいのですが、パートナー探しやどうしても時間がかかることを考えると学生の間はボルダリング中心になるのかなぁ。

医学部という文化

再受験生などで以前総合大学に通っていた方は、単科大の医学部に来ると大学のシステム、雰囲気、文化に驚くことがあるかもしれません。
・学内システムはとんでもなく使いづらいですし
・あらゆるスケジュールの告知が遅いですし(ちなみに1年生前期の成績が2年生の4月頭に出ていなかった)
・告知文章自体もわかりづらいことが多いですし
・進級システムなどもブラックボックスですし(仮進級とかいまだにどういう仕組みなのかほぼみんなよくわかってないと思う)
いろいろと困惑することは多いと思います。

雰囲気や文化に関しても、
・各テストの合否が全員にばれる仕組みだったり
・連帯責任的な仕組みが授業内で多かったり
いわゆる医学部のやり方というものが存在し、それらが理解できないこともあります。
詳しくは書かないですが、僕もこの医学部の作法をわかっていなくて自分の常識の枠内ではギリOKかなという行為を先生に激しくとがめられたことがあります。ただ今思うとそこはやはり医学部の規範に反していた自分が悪かったと感じています。

もちろん自分の信念は持ち続けるべきですが、郷に入っては郷に従え、つまり医学部に入ったからにはある程度その文化に浸かることが求められているのです(こうやってみんな丸くなっていくんだろうな笑)。
この先、まだ何年も医学部生活が続きますが、医学の勉強が楽しみなのはもちろんのこと、この医学部という伏魔殿の底まで覗いてみようじゃないかという別の楽しみも湧いてきています。

ではまた。


 

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